山賊王に俺はなる!
藍染 迅@「🍚🥢飯屋」コミカライズ進行中
山賊王に俺はなる!
俺の名はダフィー。山賊王になる男だ。
ガキの頃に出会った山賊は、男の中の男だった。俺もあの人のようないかした山賊になる!
おさなごころにそう決めて、今日まで体を鍛えてきた。
そして、あの日――。偶然手にした「悪霊の実」。それを食べれば、不思議な能力を身につけることができると言い伝えられていた。
何も知らず実を食べてしまった俺が得たのは、「ガムガム」の能力だ。
俺は全身ガム人間となり、手足を自由に伸縮させることができるようになった。
何だ、この能力?
「ま、いっか」
食っちまったもんは仕方ねえ。俺はガムガムの能力を使いこなすため、体を鍛え、格闘術を磨き上げた。
「受けてみろ! ガムガムの鉄砲!」
俺は腕を伸ばしてパンチを飛ばせる。当たれば岩を砕く威力があるんだぜ!
「当たるか、そんなもの!」
よく考えてみると、投げた石よりも早いパンチなどあるわけがない。つまり、俺のパンチは飛んでくる石よりも簡単に避けられるのだ。
「うわっ! いてててて……」
俺のパンチは剣や盾で叩き落とされた。酷い時には腕を斬り落とされそうになった。
「だ、ダメだ! こんな戦い方じゃ、山賊王になんかなれねえ!」
俺は体中包帯だらけになりながら、どうしたらガムガムの能力を使いこなせるかを考え抜いた。
「心臓をポンプみたいに動かして、血を高速で流してみたらどうだろう?」
超人的スピードで動き回れるようになるんじゃないか?
「ダメだ! ただの高血圧だった!」
俺は次の案を考えた。
「体に空気を取り込んで、巨大なパンチで敵をなぐったら?」
巨人のような威力を得られるのじゃないか?
「ダメだ! ただの風船だ!」
クッションみたいに柔らかいパンチだった。
「くそうっ! ダメだ、ダメだ! はじめからやり直しだ!」
毎日毎日、俺は「ガムガム」の能力について考え抜いた。そしてついに、俺だけの必殺技を開発したのだ。
この技は無敵だ。明日こそ俺のライバル、タイムズ・スクエアを倒して見せる!
◆◆◆
「グハハハ! よく来たな、ガムくそのダフィー」
「ぐぬぬ。タイムズ・スクエア、今日こそおまえを倒す!」
「貴様のくそ能力で俺が倒せるものか!」
「馬鹿にするな! 俺の能力は無敵だ! 行くぞ、『ガムガムの鼻くそ』!」
俺はタイムズ・スクエアと決闘していた。
「グハハハ! 何だその技は! 笑わせるつもりか!」
「何とでも言え! お前はすでに死んでいる!」
「ふざけるな! ダメージなど何も――うぅっ!」
タイムズ・スクエアは顔をしかめると、胸を抑えて倒れ込んだ。
「親分! どうしたんですか?」
「親分たらっ! うわっ、死んでる!」
子分どもがタイムズ・スクエアを取り囲むが、すでに手遅れだ。そいつは動かぬ死体だぜ。
「どうだ、わかったか? 俺の能力は無敵だ! 山賊王に俺はなるっ!」
慌てふためくスクエア一味に向かって、俺は大見えを切った。
「うるせえっ! 親分が発作で倒れたのをいいことに、勝手なことをほざくな!」
「そうだ、そうだ! てめえなんかただの雑魚じゃねえか!」
「とっとと失せやがれ、葬式の邪魔だ!」
子分たちはスクエアの死体を戸板に乗せ、アジトへ運んで行った。
「おかしい。なぜ俺を恐れない? 俺の即死能力『ガムガムの鼻くそ』が怖くないのか?」
「ガムガムの鼻くそ」とは、敵の心臓に鼻くそを送り込む能力だ。
鼻の先っぽを糸のように細くして相手まで伸ばす。蜘蛛の糸よりも細い糸は肉眼では視認できない。
極細の糸の先端は、気づかないうちに相手の胸に刺さり、心臓に達するのだ。
それから俺は糸を通して、敵の心臓に鼻くそを送り込む。
鼻くそは動脈をふさぎ、心筋梗塞を引き起こして敵を倒す。
回避不能の必殺技、それが「ガムガムの鼻くそ」だ!
◆◆◆
「けっ! 鼻くそダフィーが来やがった」
「縁起が悪い! さっさとここから離れるぜ!」
「くわばら、くわばら!」
俺は敵対する勢力を「ガムガムの鼻くそ」で倒してきた。だが、世間の連中は俺を「不運を呼ぶ死神」として扱いやがった。
「ちきしょう! 誰も俺について来てくれねえ!」
「ガムガムの鼻くそ」は仕組みを見破られたらお終いだ。心臓をガードした相手に技は効かない。
「俺の能力で倒しているのに、誰も信じてくれねえじゃないか!」
「こうなったら、また新能力を開発するしかないか」
俺はまた部屋に籠って、「ガムガムの実」の新しい能力を生み出そうと考え続けた。
そしてついに――。
「今度こそどうだ! 脳梗塞を引き起こす能力、『ガムガムの目くそ』!」
目くそ鼻くそだった。
(完)
山賊王に俺はなる! 藍染 迅@「🍚🥢飯屋」コミカライズ進行中 @hyper_space_lab
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