第5話

「パーティーメンバー変更後のランク昇格は、新体制で依頼を最低でも5つ達成した後となるルールがあります」

 まじか!

 知らなかったが、ここで知らないといえばさらに馬鹿にしたような顔になるのだろう。

「し、知ってるさ。5つ依頼を達成するなんて、俺達には造作もないことだ。早ければ1か月で達成できるさ。ほら、俺は何でも知ってるんだからさっさと処理しろよ」

 ユリがまた小さくため息をつく。

「本当に、知ってるんですね?後で知らなかったとは言いませんね?」

「知ってるって言ってるだろ!」

「査定は後でいいんですね?メンバー変更が先で」

「そうだ」

 なんだユリのやつは。しつこいな。ッシュに金が渡るように必死か?

「では、パーティーからナッシュさんを外しますので、冒険者カードをかざしてください」

 やっとかよ。

 と、冒険者カードを魔道具に近づける。

 すると、すぐにカードのパーティー構成の部分が書き換わった。

「では、次にこちら、討伐証明の提出をお願いします」

 間髪入れずにユリがアースドラゴン討伐依頼書をカウンターの上に載せた。

「だから、それはリュックの中に……」

 あれ?リュックがない。

「リュックはどこだ?」

 カウンターの上に置いたリュックが消えていた。

「当然、ナッシュさんの手元に戻ったのでしょう」

「はぁ?」

「知っているかと尋ねましたよね?後で知らなかったと言わないと」

「なんのことだよっ!」

 ユリは表情を変えずに続けた。

「リュックには盗難防止機能が付いていましたから、パーティーメンバーは持ち主登録がされていたのでしょう。パーティーを外されたことで、元パーティーメンバーは持ち主から外れたため、ナッシュさんの元に戻ったということでしょう。ナッシュさんが貸しているとう認識であれば、盗難防止機能は働かなかったと思うのですけれどね……」

 ユリは冷たい目をする。

「だから、借りたのか尋ねたのですが。やはり、ナッシュさんの了承なしに取り上げたんですね」

「は?魔物の素材が入ってたんだ、取り上げるもなにも……中身は俺たちのもんだろう?それを運ぶために鞄が必要なのは当たり前のことで」

 ユリが首を横に振る。

「だから、素材を出すのが先かナッシュさんをパーティーから外すのが先かも確認いたしましたよね?」

 ……そういう理由だったのか!

「し、知らなかったんだ」

「知らなかったと言わないと言いましたよね?」

 ぐっ。くそっ!!

「知っていて、あえてリュックが手元から消えるように仕組んだ可能性もあると思い確認したのですよ?」

「はぁ?何が言いたい!」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

荷物運搬スキル持ち追放される~成長したら空輸もできるのに~ とまと @ftoma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画