第4話

 だったらパーティーのために必要な物はパーティーのお金から出してください。ナッシュさんに負担させるのはおかしいと食い下がれたこともあったか?

 あいつが勝手に買ってる物にどうして金を払わなくちゃならない?

 ……ああ、だが分かったぞ。

 わざわざこいつが「ナッシュのリュック」とナッシュの名前を出した理由が。

 パーティーの金で買ってないことを責めるつもりだったのか?だが、大元となる金の出どころはパーティーで稼いだ金だ。いったんナッシュの手に渡ったってだけだろ。だから、これはパーティーの鞄だ。

「よろしかったですか?」

 返事をしない俺にユリが少し強い口調で確認する。

 本当にむかつく女だ。

「あ、その前に。これ頼むわ」

 ナッシュをパーティーメンバーから外す紙をカウンターに置く。

「え?素材買取の前に、ナッシュさんをパーティーメンバーから外すんですか?」

 ユリが驚いた顔をしている。

「そうだよ、だから、買い取り金額の分配にナッシュの分はいらない。パーティー用の金に20の割合で入れてくれ」

 ユリが驚いた顔のまま俺を見ている。

「いいんですか?本当に、ナッシュさんをパーティーから外して……」

 それからユリがふぅとため息を一つついた。

「せめて、素材を査定してからにしませんか?」

「なぁ、アースドラゴンの査定額っていくらぐらいになる?」

 ユリがおよその金額を告げる。俺たちの20分の1だとしても、ナッシュの手に渡る金額は相当なものだ。

 ナッシュにそんだけの金額を振り込みたいってことかよ?

 冗談じゃないぞ。

 アースドラゴンを倒したのは俺たちだ。ナッシュは道中の魔物をちまちまやっつけてただけだぞ。

 アースドラゴンの戦闘中、ポーションや予備の武器を投げてよこしたくらいしか役に立ってないんだ。

 ナッシュになどそんな大金を渡してたまるもんか。

「おい、さっさと手続きをしろっ!ナッシュは追放だっ!俺たちSランクパーティーに荷物持ち入らない」

 イライラとしてつい本音が漏れる。

「追放?……このリュックはナッシュさんに借りたというわけではなく取り上げたなんてことはないですよね?」

 ユリの言葉にトントントンと指でカウンターを叩く。

「早く、処理をしてくれ」

 ちょっと圧をかけて睨むと、ユリはカウンターの下から魔道具を取り出した。

 冒険者カードをかざせば情報が更新されるものだ。

 今回はパーティーメンバー構成の情報変更に使用する。リーダーが代表で冒険者カードを貸せばメンバー全員の冒険者カードが更新されるという便利なものだ。

「ああ、それから、俺たちSランクパーティーという言葉は訂正してください。ケインさんはAランクパーティーです」

「はっ、悪かった悪かった。すぐにSランクになるAランクパーティーにはナッシュは必要ない!これでいいか!」

 ユリが白い目で見ている。

「なんだよ、アースドラゴンを討伐したんだ。Sランク昇格は目の前だろ」

 馬鹿にしたような目をするのでイライラする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る