第3話 ==蒼鷹リーダーケイン==

ケイン視点


 冒険者ギルドに入ると、皆の視線が俺に注がれる。

 ギルドの中には30人ほどの冒険者がいたが、女性は俺に声をかけて欲しそうな目を向けてくる。

 男どもは、A級パーティーの俺に羨望のまなざしを向ける。

 不快な視線もある。

 同じA級パーティーのやつだ。ライバル心を燃やしてにらみつけるような目で俺を見ている。

 だが、そんな視線を向けられるのも今だけだ。

 俺たちは、もうすぐS級へと上がれるんだからな!

 ふっと鼻をならして無視してやった。

 ニヤつく顔を抑えて、ギルドカウンターへと向かう。

 受付嬢が俺に来てほしそうにしている。

 左端が一番胸の大きなリサ。

 真ん中が唇の下の黒子が色っぽいエリ。

 いつもは二人のどちらかに対応してもらうが、今日は右端のユリだ。眼鏡をかけたクソ真面目なブス。

 俺に相手にされないからか、いつも馬鹿にしたような対応をする腹の立つ女だ。

 ドラゴンを討伐してきたんだ。

 S級になれば、馬鹿になどできなくなるだろう。

 俺を粗雑に扱ってきたことを後悔させてやるさ。

 S級になれば、ギルド職員の一人や二人辞めさせることだってできるんだぜ?

 まずは黙って、依頼書をカウンターの上に出す。

「アースドラゴン討伐依頼ですね」

 淡々とした態度にイラっとする。

「おお、ケインのやつついにドラゴン討伐か?」

「単独パーティーで依頼を受けてたのなら、まさかS級昇格?」

 周りの冒険者たちはよくわかっている。

 俺はすごいことをしてきたんだ。

 リサやエリなら「ケインさんすごいです!アースドラゴンを倒したんですか?」と目を輝かせて対応してくれるはずだ。

 本当にむかつく女だ。

「討伐証明をお願いします」

 カウンターの上にドスンとリュックを載せる。

「この中に入ってる」

 ユリがリュックを一瞥し、俺の顔を見た。

「では確認させていただきますが、素材の買い取りは致しますか?」

 まったく、判を押したように決まった言葉しか言わない。ブスな上に愛想笑いも上手い会話もできない女だ。

「当然だ」

「ここで出しても大丈夫な量でしょうか?」

 分かっていて聞いているんだよな。

「大丈夫だと思うか?ドラゴンも入ってるんだ」

 そんなことも分からないのかという嫌味も含めて言ってやる。

「そうですね。ナッシュさんのリュックでしたら、ドラゴンも入ってしまいますね」

 言うことすべてがイライラする女だ。

 ナッシュのリュックだと?

「素材は裏の解体所で出していただけますか?それから金額を査定いたします。お金はいつも通り冒険者カードへの入金でよろしいですか?」

 いつも通り?

「ナッシュさん1、ケインさん20、ミーシャさん20、マリアさん20、ゴランさん20、パーティーのお金19の割合でよろしかったですか?」

 ユリの顔が一段ときつくなる。

 そういえば、こいつずっと昔にこの割合はおかしいと文句を言ってきたんだよな。

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