ボクはカンジをカけない

金沢出流

ボクはカンジをカけない

 ボクはカン字がカけない。

 正カクにはカクスウの少ないカン字であればカくことができるけれどそのカズはけしてオオくはない。

 タトえばカンスウ字であればナンなくカくことが出キる。

 みんなのカンカクに合わせてカンガえるならこれは多分、カタカナやひらがなをカくようにカくことができる。

 また、女というカン字のように、くの一、とエカきウタのようにオボえやすいカンジであればカ不ソクなくカくことができる。

 カ不ソクというのはボクがカン字をカこうとするといかんせん、センが一本や、二本、少なかったりあるいはオオかったりするのである。


 ハハにススめられてイゼン、カンジケンテイをウけさせられたことがある。

 そのテストでボクは一マイ目のトウアン用シを全てウめることが出キた。けれど二マイ目は全くダメだった。

 どうしてそうなったのかというと、一マイ目はヨみや、同音イ語、同音イギなど、そういう問ダイで、カン字を用いる必ようのないモンダイだけであり、タイして二マイ目のテスト用シは全てカキトり問ダイであったからである。

 テストのケッカはたしか50点だったとオモう。一マイ目の問ダイはマン点をトれたというのに、二マイ目はレイ点だった。

 だからもちろんカンジケンテイにオちた。


 ボクはたくさん、カン字のカきトりレンシュウをしてきた。

 人一バイのド力をしてきたと自負してもいる。

 ナンサツものカンジレンシュチョウのクウランをウめたし、ノートは、十サツイ上はカきツブした。

 けれどどうにもならなかった。


 ひとつ、リ不ジンにオモったことがある。

 一昨年の、小学三年のジュギョウ中のそれはタシかリカのジ間である。テストのカエしがあった。ボクはある問ダイで正トウをカいていたのだけれど、カン字ではなくひらがなでコタえをカいていた。というのにその問ダイにはバツがなされていた。

 ボクは当ゼン、タン任キョウシにコウギした。するとタン任は「もうナラったカン字なのだからカン字でカかないとダメだよ、ツギからはキをツけなさい」とそう言った。

 そのトキのボクはオソらく、苦虫をカみツブしたようなカオをしていたとオモう。クヤしくて、クチビルをカみしめて、何を云うことも出キなかったのである。


 そうしてまた何サツものカン字レンシュウチョウとノートをムダにして、今この文ショウをカいている。

 ボクはカン字をカけるようになりたい。でも、もう、そのタメに、何をすればいいのかわからない。

 昨日、ボクはノートとカン字レンシュウチョウをニワへもっていって、クスねたライターを用いて火を付けた。

 コウコウとモゆる火とタギるようにクウカンをウめてゆくケムリをみてボクはなんだかほっとした。

 しばらくそうしてぼんやり立ちツくし、オちツいたキモちになったところにショウボウ車のサイレンがナりヒビいた。その音は、ボクをタスけるためにオトずれたフクインのようにカンぜられ、音のする方を見やった。ケムリに当てられ、右目からナミダが流れた。

 やがて見知らぬ男のコエがして、シゼンとホホはユルみ、そのヒョウジョウはワラっているように見えただろう。

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