第7話


 あのあと勧められるがままに呑んでいると、強烈な眠気に襲われた。眠気に身を任せ、微睡みの世界へ旅立つ。


 きゃらきゃらと子供たちの笑い声。

 洗濯の音、料理の音、大工の音。

 川のせせらぎ、森のざわめき。

 

 あぁ、心地が良い。これが俺が求めたものだ。

 これが、いつまでも、続いてくれたらなぁ。


 きゃらきゃら、あはは、うふふ。あっちいったよ!

 こっちこっち! 〜〜様も遊ぼ! 早く早く!


 この閂を抜いちゃダメなんだって!

 あそこの松の木の下にはガラスが埋まってるんだよ!

 ……〜〜様の後ろは真っ赤だね?

 ふふっ! 伽藍堂みたいね!


 ―――――――――――――――――――――――――


 パチリと目が覚めた。よく分からない夢を見ていた気がする。閂?伽藍堂?どこかで聞いたような……。はて、どこで聞いたのだろうか。


 目が覚めた時には宴は終わっており、酒の回った村人たちが、地面に伸びていた。風邪をひかぬよう敷物をかけてやる。


 地面で寝ていたからか、体がバキバキと痛む。軽くストレッチをして、片付けをする。社ということは、俺はあそこに住んでもいいのだろうか。もし、もしもいいのなら荷物をまとめて引っ越さなくてなぁ。


 嬉しそうに微笑みながら、手際よく片付けを進める。


「ねぇねぇ、閂、抜いちゃダメだよ」


 ふとどこかから聞こえた。女の子の声だ。

 振り向いても誰もいない。気のせいか……?


「知ってる?桜の樹の下には死体が埋まってるんだって」


 周囲には誰もいない。タチの悪いイタズラか?

 だが、村人はみな眠っている。ならば、一体誰が?


「ねぇねぇ、知ってる?みんなを騙す悪ぅ〜い狐がいるんだよ」


「だから、ねぇ?危ないよねぇ〜 」

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狐の手で織る物語 緑町坂白 @ynanknyn0718

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