触49・触手さん寿司三昧

崩れた瓦礫の下敷きになるキマイラ、見ていても動く様子はない。

事切れただろうか。

こんなもんまで居るとはね、まさかとは思うが、こいつここで生産なんぞしとらんよな?

いや、可能性は充分あるか、何作ってんのか分からんし。


あらかた片付いたのか、追加で兵士が出てくる様子も無く、周囲を見るとかなり延焼が広がっている。

ここまでくればもういいか、後は勝手に燃え尽きるでしょ。


待っていると工場の中から皆がぞろぞろと出てきた、全員居るようだ。

だいぶ黒く汚れてるけど。


【一通り終わりました】


「兵士並びにゴーレムは全て片付けておきました」


メアリーとビノセが報告を上げる。


「こっちもだ、後、気になる資料とかがあったから持ってきたよ」


クオが麻袋を担いでいる、何を見つけたのだろうか?


「とりあえず撤収しようか、そろそろだからね、外に出よう」


クオに促されて皆が門から出ていく。

全員外に出ると、大きな振動がし始める、そして……


工場から盛大に火柱が吹き上がった!!

あちこちから爆発音が響き渡る。


「うん、いい感じだ。仕掛けてきた爆弾はちゃんと作動したな」


ウンウンとクオが頷いている、どんだけ仕掛けてきたんだ、まあいいか。

工場が次々に崩壊していく、完全に崩れさるまで然程時間はかからなかった。


よ~っし帰るか~

瓦礫の山を後にして海岸を歩いて行くと、移動用の球体の横でクラーケンが待っていた、復旧作業終わったんかな?


全員が球体に乗り込むと、海底へと降りて行った。


……


…………


「…………ふん、あそこが落とされたか」


執務室で椅子に座り報告書を見ていた大神官長は吐き捨てるように呟くと、それを暖炉に投げ捨てた。

報告書は一気に燃え上がる。


「まあいい、工場等まだ幾らでもある。それよりも……」


大神官長が立ち上がり近くの窓から外を眺めると、空は雲で多い尽くされている。


「アレの効果はあるようだな…………くっくっく、堕とし仔め、そう簡単にはいかぬぞ…………」


雨粒がポタポタと地表へと降り始めた。


……


…………


「よくぞご無事で!!」


城に戻ると入口でイーメが出迎えてくれた、街もだいぶ復旧が進んだようで、瓦礫はすっかり片付けられていた。


「どうやら成功したようですね、先程、水の大精霊様もお目覚めになられました。中にてお待ちしておりますので、参りましょう」


イーメに促されて一緒に城内を通り玉座がある間へと向かう、中では全身が青い女性が佇んでいた。これが水の大精霊か、透け透けのロングスカートを身に纏っている。


『おお御子よ、此度の一件誠に感謝致します』


大精霊が深々とお辞儀をしてくる。

いやいや、大したことないって。


『お礼といっては何ですが、宴を用意させて頂きました、存分にお寛ぎ下さい。ささ、こちらへ』


右手にある一室へと案内され中に入ると、

…………んん~?何か見覚えのあるもんが……


目の前には楕円形に配置されてるベルトコンベアとカウンターと多数の椅子、カウンターの中ではマーマンが数人作業をしていて、ベルトコンベアに何かを乗せて……


あ、寿司が流れ…………


か、回転寿司だコレー!!?


皿に乗った寿司が流れていく、間違いない!!回転寿司だ!!!

街中に回転寿司屋あったけどさ、城内にも回転寿司あんのかよ!!!


『さあ皆さま、どうぞお座り下さい』


言われて各々座席に座っていく、身体がでかい私用に特別席も用意してあったので私はそこに座る。

そしてイーメと大精霊も着席した、大精霊も結構でかいのでこちらも特別席。


『お箸に慣れていない方にはフォークもご用意していますのでお申し付け下さい、それでは各々ご自由にお召し上がり下さい』


私は問題ないので箸で(特注サイズ)クオも箸だ、流石元日本人である。

メアリーとスケルトン達はフォーク、予想外だったのはビノセとパディカで箸だった。


う~っし食うぞ~!!

流れて来る皿を取り上げる、まずはイカから。

透き通ったそれは新鮮な物だと伺える、口に運び噛むと……うぉぉ甘い!!イカの甘味が感じられ、歯応えもよい、後、シャリが絶妙!!

寿司握ってるマーマン達、職人だな?それもかなりの。


よし次は……海老!!

赤く茹であげられ、身も肉厚、プリっプリである。

噛むとプチプチとした食感と溢れる旨味!!


くぅ~…………こんなに旨い、しかも寿司を食えるなんて…………あの洞窟生活が嘘みたいだよ…………涙出てきた…………サビのせいで。


お茶を啜って口をリフレッシュ、つかこの湯飲み、まんま日本の湯飲みなんだよなぁ…………ここが日本と錯覚するわ。


続いてサバ、カツオ、ハマチ、サーモン、タコ、イクラの軍艦、エンガワにヒラメ。

や~どれも美味!!手が止まらぬ。

そして…………君だ!!!マグロ!!!

まずは赤身を、うん、マジマグロ、寿司界のキング。程よい赤身特有の酸味が良い。


さてそれでは…………いよいよ頂こうか…………


トロ!!しかもコレは…………大トロだあぁぁぁぁ!!!


正直、日本でも滅多に口に出来ぬであろう、あの大トロである!!

ぶっちゃけ食った事など一度たりてない、そんな大トロが今目の前にある。


…………生きてて良かった…………


細かいサシがビッシリ、思わず喉が鳴る。

で、では頂こう。


……………………意識が持っていかれた。

感無量、何だ、何なのだコレは…………

口に入れた瞬間脂が溶けて口の中に染み渡る、決してクドくなく上品な甘味。

スーッとまるで淡雪のように消えていった。

これが大トロ…………感服致しました、こんなにも旨い物がこの世に存在しようとは…………


………………ふう。

思わずトリップしてしまった。

我に帰って寿司の再開、流れてくる寿司を平らげていく。

締めに玉子寿司、やはり最後はこの出汁の効いた甘い玉子に限る。

お茶を啜って…………フィニッシュ。


気が付けば目の前は皿がバベルの塔になっていた。や~食ったな~


あ、そうだ、聞きたいことがあったんだ。

皆が食べ終わり一息ついてるところで、私は大精霊に質問をぶつけた。


【私の恐怖って何で人種限定の効果なの?】


『そうですね……私も詳しいことは存じ上げないのですが、人種は創造神が創りあげたものでは無い為と言われています』


…………創造神が創ったものじゃない?

どういうことだ?


『その辺についてはドラゴンの最長老が知っているかもしれません。彼はエシータスク山脈に住んでいます、そこへ訪れてみると良いでしょう』


エシータスク山脈、次の目的地だったよな。


食事も終わり、今日は泊まっていって欲しいとのことで宿泊していくことになった。

観光がてら都市内を見て回ったんだが、魚の養殖場や農園があり、なんと稲も育てていた。

水質汚染されてる割には魚取れるんだなと思っていたがそういうことのようだ。

稲は魔法で疑似太陽みたいなのを作ってそれで育成してるらしい、そういやLEDライトで植物育てるとかあったなぁ、あんな感じか。


次の日、地上へ戻る際に大量の折り詰めと、球を貰った。

他の大精霊から受け取ったのと同じタイプの物だ、これで水の魔法が使えるらしい。

球体に乗り込むと、大精霊達に見送られ、私達は地上へ帰還した。


落ち着いたらまたそのうち寿司食いにくるかなぁ。

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2024年12月12日 18:00

触手さんは今日も這いずる トイレの花子 @toiko290141

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