第7話:面倒くさい洗濯機

 二層式の洗濯機を御存知だろうか?

 衣類を洗浄する「洗濯槽」と、洗い終えた衣類の水分を遠心力で飛ばす「脱水槽」の2つに分かれた洗濯機。

 洗濯をする際はホースで接続した水道の蛇口を捻って水を注ぎ入れる。

 水は蛇口を閉めないと出しっぱなしになるので、洗濯槽に水を貯めている間は近くで見ているか、貯まった頃に戻ってくるかして止水しないといけない。

 貯めた水は「排水」しないと洗濯槽に残ったままになる。

 洗い終わった衣類を洗濯槽から脱水槽へ移し替えるという手間もあり、全自動慣れした人には面倒くさい家電である。

 母校の学生寮にある洗濯機は、そんな二層式を更に面倒くさくしたモノだった。


「え?! 水が減ってる?!」


 初めてその洗濯機を使った日、途中で洗濯物を追加しに来た僕は困惑した。

 洗濯槽の一番上の目盛りまで貯めた筈の水が、半分くらいに減っている。

 止水切り替えを「洗う」に合わせてなかったかな?

 確認してみたけど切り替えスイッチは「排水」にはなっていない。


「あ~それ、ボロいから水が勝手に流れ出ちゃうんだよね~」


 洗濯に来た先輩寮生が教えてくれた。

 その洗濯機は老朽化のため貯水機能が弱くなっていて、排水にしていなくても少しずつ水が流れ出てしまうらしい。


「水を追加しながら洗うしかないよ」


 って教えられ、ちょこちょこ戻ってきて水を足してっていう面倒な作業が追加。

 手抜き寮生の中には「流水すすぎ」に切り替えて、途中脱水せずに洗いからすすぎまで1回で済ませちゃう人もいるという。


 水道代もったいない。

 でも、ボロ洗濯機は僕が知る限り、ず~っと修理も交換もされなかった。

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