新将軍との御茶会

家定の死後は忙しく、篤姫には、夫と父の死を悲しむ暇も無かった。

家定の代わりに、新しく将軍になったのは徳川慶福とくがわよしとみ、改め家茂いえもちだった。

彼女の父の一人であった島津しまづ斉彬なりあきらは慶福とは敵対していた一橋ひとつばし家の慶喜よしのぶを次期将軍に推していたが、決まってしまったからにはしょうがない。

それに、その父・斉彬も亡くなってしまったのだから。


早速、家茂は正式に将軍となり、篤姫は家茂の義母となった。

家茂は積極的に篤姫のもとに訪れた。

「義母上ー」

「どうしたの?家茂、いらっしゃい」

「失礼します」

篤姫の部屋には特に何も変わったところは無かったが、日差しが入って温かかった。

すると、家茂は篤姫の持っていた盆に気がついた。

「義母上、それは…?」

「これはね、『かすていら』っていう菓子なの。甘くって、ふわっふわだから、ひとくちいかが?」

「では…頂きます」

家茂は口に入れると、しばらく固まってしまった。

(家茂様って、こういう甘い物嫌いだったかしら…)

そんな心配もいらなかった。

篤姫が次に聞いた音は、家茂の興奮した声だったからだ。

「何この甘さ!?甘すぎる!!美味しい!!!しかもふっわふわ!!美味しい!!!」

数日後、篤姫の作ったカステラは将軍だけでなく大奥にも大人気となった。

また、この件がきっかけで家茂は大の甘党になったとか。

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篤姫のカステラ 額田兼続@みんなでカクコン頑張ろう @Nekofuwa-jarashi

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