篤姫のカステラ
額田兼続@みんなでカクコン頑張ろう
思い出の味
初夜ですら、まだ迎えていない。
自分は御台所という立場だというのに、家定とは滅多に会わない。
(家定様…きっと、私が嫌いなのね……………)
「篤?居るか?」
突然かけられた声に、びっくりして振り返ると、家定が居た。
「何を、そんなに驚いているんだ?こっちまでびっくりしてしまうではないか」
「…すみませぬ」
「よい、よい!そんな事よりも、篤。この菓子はいかが?」
家定の持っていた菓子は、黄色くて四角い、「かすていら」という食べ物だった。
「……よいのですか…?」
「勿論。よいに決まっているだろう?さあ、遠慮なく」
「で、では……」
ひとくち口に運ぶと、いかにもその美味しさが伝わった。
「味はどうだ?」
「ふわっふわで、甘くって、すっっっごい、美味しかったです!」
「それはよかった…その、篤に喜んでもらえるよう、試行錯誤し、頑張って作ったからな…」
(え…)
見かける事もなくなり、嫌われたのかと思ったのに。
こんな勘違いをしていたなんて、恥ずかしい。
(私なんかの為に…)
「…篤?顔が赤くなっているぞ?」
「あ、いえいえいえいえいえ何でもないんですぅ…!」
「はははっ」
「ちょ、ちょっと家定様、笑わないでくださいよ〜」
-2年後-
突然の訃報だった。
「家定様が…」
この日、篤姫は人生で一番の大泣きをした。
さらに、そのわずか10日後には、父・
篤は落飾し、天璋院殿従三位敬順貞静大姉、通称「天璋院」になった。
これから、篤の忙しい日常が始まるのである。
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