第15話 娘ごころ測定猫

「昨日みたいなことが起こらないように、「樹」ちゃんは大学の実験動物にするからね」

 亀田先生は、そう言った後、話を続けた。

「染色体がXXYのオスの三毛猫がオークションサイトで、3000万円で取り引きされているから、化け猫になると、10億円はくだらないでしょうね。それに、「樹」ちゃんがこの先、どう変わっていくか、観察が必要だからね」


 実験動物なら大学で会えるので、私はそれに同意した。


 先ほどプリントアウトしたチャートについて、先生は説明を始めた。

「黒い点が今回の実験に協力してくれた彼女の基礎体温。赤い点が「樹」ちゃんが赤く光った光の強さで、赤いカーブはその近似曲線よ。彼女の排卵日に赤いカーブがピークを迎えているわ」

 

 それは「マナミ」と同じように、「樹」が女性のフェロモンを感知しているということだった。


「でも、水曜日だけ、赤いカーブから測定点が高い方に外れているわ。それも、後になるほど外れが大きくなっている。先週の水曜日なんて、測定点が測定範囲外に飛んでいるわ。これはいったい、どういうこと?」

 

 私の隣に座っていた彼女は、両手で顔を隠して、真っ赤になってうつむいていた。

 彼女が愛しくなった私は、先生が見ているにもかかわらず、彼女の肩を抱き寄せた。


 

  これはフィクションであり、実在する個人や団体とはいっさい関係ありません。

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光る化け猫 マッシー @masayasu-kawahara

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