第14話 光の強度測定装置

 連絡もしていないのに、亀田先生が男子学生と一緒に車で公園に姿を現した。

 

 先生は小さな器具を出して、

「あっ、向こうよ・・・」

 と、学生に何か指示をして、その器具を学生に渡した。


 あたりは暗くなっていたが、男子学生は、すぐに公園の林の中から「樹」を見つけ出し、「樹」を抱いて車に乗った。


 あっけにとられていた私と彼女のそばに亀田先生が来て、

「いいデータが取れたから、調査はこれで終了よ。明日の午後4時に、私の部屋に一緒に来てね」

 と言った。



 次の日、私が亀田先生の部屋に行くと、3年生の彼女はすでに部屋に来ていた。

 先生はロール紙に何かのデータをプリントアウトし、それを切り取って、机の上に置いた。

 

 「樹」は、その机の横のソファで寝ているようであった。


「「樹」ちゃんには、軽い麻酔を嗅がせてあるわ」

 亀田先生はそう言うと、「樹」の右の耳にピンセットを差し入れて、黒い丸い物体を取り出した。

 それは、私たちの研究室でも時々使っている、動物追跡用のGPS発信機であった。


 次に先生は、「樹」の左の耳から小さな筒状の物体を取り出した。

「先生、それは何ですか?」

 私が聞くと、先生は、

「これは光の強度を測定する装置よ。「樹」ちゃんの耳の中から出る赤い光の強さを測って、無線で研究室にデータを送っていたのよ」


「そんなもの、どこで作ったのですか?」

 私が聞くと、

「工学部の鶴田研よ」

 と、先生は答えた。


「それにしても、すごいものを作りますね」

 私が感心してそう言うと、


「この大学で、この頃一番すごいものを作ったのは、あなたじゃない」

 先生は、そう言った。

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