第14話
書き初めを終えた装雁と庭思。部屋には筆と墨の香りが微かに残り、お互いに書いた文字を見比べながら、ふふっと笑い合う。なんとも言えない充実感が、言葉にできないほどの深さで広がっていった。
「どうかな?」と、装雁が書き初めを見つめながら言った。文字が今にも動き出しそうなほど力強く、まるでその年の抱負を全て込めたような印象だった。
「今年の目標を込めた感じ?」と庭思が肩をすくめる。それでもその目は、何かを確信したように輝いていた。
部屋の外の空気は冷たく、寒さが部屋の隅々まで流れ込んでくるけれど、それが不思議と心地よく感じられた。二人はおせちの残りを食べる。その後、テレビをつけて流れる初詣の中継をぼんやりと眺めるのも、また新年の一部のように思えた。
「🐿️は」と言う庭思。
「?」装雁は庭思を見る。
「🐿️は冬にどう暮らしてるのかな?」庭思は言葉を繋げる。
「たぶん冬眠してるか、大木にある🐿️のお家でテレビ見てる」と装雁はのんびり答える。
二人の明るい眼差しが、豊かな睫毛がゆっくりと閉じてゆっくりと開く。
「今年も、よろしくね。」と、装雁がふっと言った。言葉には、今年一年がどんなものになるのか分からないけれど、その時を共に歩んでいこうという約束のようなものが込められているように感じた。
「うん、よろしく。」と庭思が返す、その声も、なんだか穏やかで温かかった。お互いに言葉少なくても、心は通じているような気がしていた。今までの時間も、これから先の時間も、二人にとってはどれも大切であり、何気ない日々の一コマ一コマがかけがえのないものだと感じていた。
窓の外では、雪が静かに降り始め、街の灯りが反射して淡い光を放っていた。装雁と庭思はしばらくの間、無言でその景色を見つめていた。
装雁と庭思。何も特別なことが起こるわけではないけれど、何気ない日常の一部に二人の温かさが広がっていた。彼らの心は静かに通い合い、時間の流れも、ただそのままに感じられた。外の雪が、装雁と庭思の間に降り積もって。そして二人の儚げな溜め息が空間と時間に、
その瞬間、
が
その存在が
二人の
初めてこの世界にたどり着く祝福を
白く
淡く
塗り込めていた。
終
ニューイヤー・イブ 紙の妖精さん @paperfairy
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