波という限界の白と青
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夏休みが終わると、学校の空気は少しだけ変わった。
まだ暑さの残る九月の廊下を、何人もの生徒が行き交っている。掲示板には、生徒会長選挙の日程と候補者の名前が並んでいた。
青波さんは、その前で足を止めていた。
何度も見ているはずなのに、今日はなぜか立ち去る気になれなかった。
「もう、次の人たちの名前が並んでるね」
隣で白水さんが言った。
青波は掲示板を見たまま、小さくうなずいた。
「うん」
「寂しい?」
「……少し」
青波さんがそう答えると、白水さんは意外そうに彼女を見た。
「青波さんでも寂しいって思うんだ」
「私って?」
「何でも平気な人」
「そんなことないよ」
青波さんは笑った。
その笑い方はいつもと変わらなかったけれど、白水さんには少しだけ寂しそうに見えた。
放課後、二人は生徒会室へ向かった。
机の上には、次の生徒会長選挙に関する書類が積まれている。
もう自分たちが中心になることはない。
そう思うと、生徒会室が少し広く感じられた。
「明日、選挙だね」
「うん」
「青波さん、何か候補者に言う?」
「私は……言わない方がいいかなと思って」
「どうして?」
「これからは、その人たちの生徒会だから」
白水さんは少し考えた。
「でも、何も言わないのも違うんじゃない?」
青波さんが顔を上げる。
「経験したことなら、伝えてもいいと思う。命令するんじゃなくて、こういうことがあったよって」
窓の外から、運動部の掛け声が聞こえた。
青波さんはしばらく黙っていた。
「……それなら、少しだけ話してみようかな」
「うん」
白水さんが笑う。
青波さんも笑った。
最後の生徒会活動は、いつもと変わらないように始まって、いつもと変わらないように終わろうとしていた。
けれど二人には、その「いつも」がもうすぐ終わることが分かっていた。