大学院進学を目指す社会人の笹井さんは、ある朝、捨てられた子猫を見つけます。
そしてそこで出会ったのは……。
私がまず惹かれたのが、登場する人たちすべてが、自らの過去の上にしっかりと立って人生を歩んでいるのがわかる、「人物の立体感」です。
だからどの人の思いもしっかり受け止めたくなるし、現実のすぐ近くで紡がれている物語のようなリアリティがある。
主人公の笹井さんも、完全無欠のヒーローではありません。
だからこそ共感したりコメント欄でツッコミを入れたりして、感情を揺らしながら物語世界にのめり込んでいってしまいます。
そして人々を繋ぐ重要な役割を果たす、猫の幸一郎さんのかわいいことといったらもう!
人生の重大な決断。
時に静かに、時にドラマチックに深まる想い。
じっくりと味わって読んでいきたいと思います。