第8話 恋人

七美は少年院に送られることになった。それから一カ月経つ頃、恋煩いと偏食のせいで食が細くなった七美は、インフルエンザにかかって、十六歳で儚くこの世を去ることとなった。


母親は娘の恋人に娘の死を知らせようとしたが、連絡しても繋がらず成すすべもなかった。


その時を同じくして、薫も病気にかかり入院していたが、何とか命を取りとめて、回復へと向かっていた。元気になったら、七美に一番に会おうと心に決めていた。


でも、あの雨の日に部屋で七美の背後に見えた、焼きただれた女性の幽霊はなんだったのだろう?ずっと、不思議に思っていたが、恐ろしさのあまり七美に尋ねることもできなかった。薫はあの薄気味悪いロッジのことを思い浮かべた。


ある日、ふと新聞を見ていたら、小さい記事でつい最近若くして亡くなった元芸能人というコラムがあった。その記事は七美が亡くなったとの知らせだった。


薫はひどく驚いて、ぽっかりと心に穴が空いたような喪失感があり、自分も死のうとまで思いつめたが、勇気がなかった。七美の死は霊感体質と関わりがあるのだろうか?今更、考えても仕方のないことだったが・・・。


もっと、七美に寄り添っていられたらと後悔はつきない。

何だかこれ以上芸能界で仕事を続けるのは、虚しく思えるようになった。


そのことをマネージャーに伝えると、君は子役から仕事をしているし、社長に直接相談してみなさいと言われた。


薫は恋する人が亡くなって、仕事に魅力を感じなくなったと正直に社長に伝えた。社長は戸惑っていた様子だったが、君はまだ十六歳だから、学業に専念しなさいと言ってくれた。


普通の学生に戻って、先のことを考えよう。そして、恋人を弔おう。

まるでまだ七美が近くにいるように感じる。そうして、薫は芸能界を去った。

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洋館から始まる怪奇の行方は・・・ 子狸たぬたぬ @tora5

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