ラスト
「はい、あとは部屋に行ってから!」
凌が動き出す。
「聖弥、部屋の場所覚えてる?」
「うん、3階の奥だよ。」
「うーわ、入口遠いしトイレしたいときやべぇな。」
そんなことを凌も思うんだ。こんなイケメンなのに親近感が湧く。
「そんときは猛ダッシュするしかないっしょ。」
「楽しそーだなぁ。」
会話しながらだと部屋までもすぐだ。
「ここが俺と凌の部屋ー。」
「凌鍵無くすなよーって、むしろ俺の方がか。」
「そうだろうな。」
最早俺たちは完全に打ち解けてずっと一緒の友達かのような距離感になっていた。
「凌が開けたら?」
「おしっ、じゃあ開けるぜ?」
ピー
俺たちの部屋はカードキーだ。
「おー、ホテルの部屋に入る時みたいだな。」
凌はテンション上がっている。
「うわー、寮の部屋ってこんな感じなんだな!」
幸司も部屋に興味津々だ。
「さーて、じゃあ色々チェックしないと。」
龍気が楽しそうに部屋を物色し始めた。
「龍気、何探してんのー?」
「そりゃ、聖弥が怪しいもん持ってるかに決まってんじゃん!」
「なんだよ怪しいもんって?」
「エッチなオモチャとか、その、、、コンドームとか?」
「なんだよ聖弥、そんな慌てるなんて怪しいぞ! それに耳まで真っ赤じゃん!」
凌ががっしりと肩を組んでくる。
俺は田舎育ちでバレーだけやってきた。
だから当然色々と未体験? 未経験なわけで・・・。
「何もないからー! ほら龍気、動画撮るぞー。」
さっきまでの悪戯っ子だった顔が嘘のように、龍気はカメラに向かって笑いかける。
ふと幸司にカメラを向けると、俺のベッドにダイブしてポーズと笑顔をくれる。
画面越しでもイケメンの破壊力は半端ない。
俺は一瞬見惚れて、直ぐに恥ずかしくなり凌にカメラを向ける。
「凌君、今のお気持ちは?」
「サイコー! お前らこれからよろしくなー!」
ドアップで笑顔をくれた凌がそのまま俺に近付きカメラを取る。
「最後は聖弥な! それではこれから始まる高校生活の意気込みをどうぞ!」
「うわー、急な無茶ぶりじゃん! えー、幸司、凌、龍気、こんな俺ですがこれから末永くよろしくお願いします。楽しい3年間にするぞー!」
「あはは、聖弥からプロポーズされた気分!」
幸司がそんなことを言うから恥ずかしさマックスだ。
「恥ずかしいから終わりー!」
「照れんなよー! こちらこそこれからも末永くよろしくなー!」
「聖弥大好きー!」
「聖弥、離さねーからなー!」
ピッ。
あれから3年、俺たちは卒業を迎えた。
「この動画懐かしいなぁ。」
「入学式だもん。」
「そうだよな。そしたら俺から改めて、こんな俺ですが、これからも末永くよろしくお願いします。」
俺は卒業式のときからずっと泣かないように我慢してたのに、幸司からの言葉で一気に涙腺が緩んでしまう・・・
「あー、泣かないって決めてたのに!」
涙が止まらなくて幸司の顔がまともに見れない。
「動画の最期で離さねーって俺言ってたじゃん? 嘘じゃないから。」
うん、うん、
俺は頷きながら声にならない声を出して返事をした。
「それで、聖弥の口からちゃんと返事を聞かせて?」
「こちらこそ、ふつつかものですが、これからもよろしくお願いします。」
俺の涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔でもちゃんと正面から目を合わせてくれている幸司を見つめておでこをぶつける。
幸司、大好きだよ。
入学式の朝声を掛けてくれたときからずっと。
そしてこれから先も大好きだよ。
俺たちは大学生になる。そこでも高校の時とは違ったいろんなことがきっとあるだろう。
でも2人でならきっと乗り越えられる。
「あー、ここにいたんだー! なんで泣いてるの? 聖弥どうしたー?」
「お前ら探したんだぞ、帰ろーぜ! 2人の時間はこれからいくらでも作れるだろ!」
「よし、それじゃ帰りますか。」
「3年間ありがとね。そしてみんなこれからもよろしく。」
みんなで携帯で写真を撮り合うこんな時間さえも愛おしい。
俺たち4人はいつも一緒だった。
それは環境が変わってもきっと変わらないし、友情も変わらないと信じている。
幸司がそっと俺に手を伸ばしてくれた指先を握り返す。
この学校に入って、幸司と出会って、みんなと出会って俺は幸せです。
そしてこんな俺だけど、改めてこれからもよろしくね!
淡くて甘い俺の初恋 ちびジュニア @chibi_jr
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