第四話

 カシャ



「良いの撮れたー!」

「うわー、不意打ち! ぜってー今の俺ヤバいっしょ! 見せてー!」



 龍気が携帯で撮った写真。

 そこには笑顔の凌とちょっと照れたような自分の姿だ。



「げー、マジ良い感じの写真じゃん! お前らずりー! 俺も聖弥と写真撮る! 凌とも撮る!」

「別にみんなで撮ったら良くねーか?」

「それはそれ! 入学式の寮でなんてもう二度と無いんだから、記念に撮っときたいじゃん!」

「あー、こうなったら幸司はもう無理だよ。」

「なんだよチビ龍。」

「あぁ? なんだバカ司。」


 俺は凌に後ろからハグされたままだったので顔をずらして見上げた。

 凌は優しい顔で2人を見ていたが俺と目が合うとお互いに笑いが溢れる。


「お前らガキかよー? 早く撮ろうぜ! そして早く部屋に行きたい俺は。」

「いつまで2人は抱き合ってんだよ? 次は俺の番な!」

「やっぱガキか。」


 龍気がそう言ってまたみんなで笑い合う。


 最高の入学式。

 地元の友達とも離れて昨日は一人で正直寂しかった。

 部屋は静かすぎたし色んなことを考えた。


 だけど考えたこと全部無意味なくらいに楽しいと今思える。



 ずっとこのメンバーと一緒なら、ずっと幸司と一緒なら。


 そう切に願う。



「聖弥、何ボーッとしてんの?」


 耳元で声がして俺は慌てて横を向くと、至近距離に幸司の顔がある。



 ドキッ、ドキッ



 鼓動が早くなる。


 顔が近過ぎて見られるのが気恥ずかしい。



「幸司顔近いよー!」

「そうかー? この高さ丁度良くない?」



 幸司は後ろから抱きしめる感じで俺の肩に手を回し、そこに顎を乗せていた。


 改めて綺麗な顔だなぁ。



 カシャ



「おーマジ良い!」


 今度は凌が撮ったらしい。


「あー俺も撮りたいからもっかい!」

「もっかいってなんだよ?」

「聖弥が幸司を見つめてるとこ!」

「え? 見つめてた? 恥ずかしい!」

「俺も恥ずかしいと思ってたけど、これも記念! もっかい!」

「聖弥ー、何でお前が照れんだよー? 顔真っ赤だぞー!」



 あはは


 みんなで笑い合う最高の瞬間。



「撮るよー!」


 俺は幸司を見たいが恥ずかしくてまともに見れない。

 そのとき幸司が小声で



「聖弥、こっち見て。」



 耳元で俺だけに聞こえる囁きのような声。



 トゥクン



 幸司の目に俺の視線も心も吸い寄せられたような気がした。


「うぇーい、ベストショットいただきましたー! ありがとうございます!」



 龍気の声で我に帰る。

 龍気って良いキャラだなぁ。

 そして凌は相変わらずニコニコと優しい笑顔で学校にいる時とは大違いだ。


 それからしばらく各々写真を撮り、最後に四人で撮ることに。



「チビ龍は凌に抱っこしてもらうかー?」

「はぁ? ふざけんなよバカ司!」

「じゃあ抱っこバージョンと2枚撮れば良くね?」


 凌もなんだかんだノリ気で楽しそうだ。


「凌が撮るのが良いよね? 1番手長いし。それか幸司が撮る?」

「じゃあ俺撮る。」


 そう言って幸司はスマホを掲げて撮り始めた。


 何枚か撮ったところで結局、凌も龍気も撮ることになる。


「俺だけ撮ってないからみんな送ってねー!」

「おっけー! てかグループ作ろうぜ。」


 そう言ってちゃきちゃき動くのは龍気。


 リベロってポジションもそうだけど、全体の把握とか見極めとか上手いからこそ犬学のレギュラーでしかも推薦で高校も入れたんだろうなぁ。

 龍気って小さいけどなんか凄いな。


「今グループ作ったー!」

「サンキュー!」


 グループ名

 イケメンオールスターズ



「なんだよ龍センスねーなー!」


 凌が茶化してまたみんなで笑う。


「じゃあ凌が考えろよー!」


 龍気は拗ねているがそれも可愛らしい。

 つい頭ポンポンしたくなって龍気にやってみると、


「おー、聖弥は優しい!」


 そう言って嫌がる素振りもなくポンポンされ続けていた。

 俺は実家で犬を飼っていることもあってわしゃわしゃするのには日常茶飯事だ。


「龍気ー、拗ねるなー。かわいーなー。」


 そう言って髪をわしゃわしゃしてると幸司の視線を感じた。


「なんか、凌も龍も聖弥と仲良くてズリィ。」

「あはは! イケメン幸司様が俺に嫉妬かー? 聖弥ー、もっとやってー。」


 幸司が嫉妬? なんで?

 龍気は悪戯っ子のように頭を擦り寄せてくるので俺も調子に乗って


「龍気はかーわいーなぁ。龍気は俺のことがほんとに好きだなぁ。」


 俺は実家の犬と遊ぶんでいるときのような感じで龍気と戯れていると



「バカ龍、そんなに髪ボサボサにされたいならしてやるよ!」


 そう言って幸司も入り込んできた。

 凌はずっと笑いながら写真を撮っている。


「凌ー、後で全部送っといてよー!」

「同じ部屋なんだし、めんどいから欲しいのだけ選んでくれ。」

「あー凌はそうやって聖弥を独り占めか? いーなぁ。俺ぜってー泊まりに来る!」

「バカ司は聖弥に負けてからずっと聖弥のことお気に入りだからなー! 同じ学校で、しかも同じ仲間で良かったじゃん。」

「ばかっ! お気に入りとか言うなよ!」


 そう言って照れてる幸司は可愛い。

 そして色んな表情が見れて嬉しいと思っている自分がいる。

 もっともっとと欲張りたくなってしまう。

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