我慢しないとバーバ◯パになっちゃうよ

Taike

我慢しないとバーバパ◯になっちゃうよ

 ──papavid-1919。


 それは突如として僕の村で猛威を奮いはじめた、女性にのみ感染するウイルスである。


 症状は至って単純であり──


「ほらほらっ、我慢しないとぉ……パパになっちゃうよ?」


 例えば、現在。僕の眼前で繰り広げられているアグレッシブ騎乗位は、papavid-1919の感染者(通称:パパビアン)による、一般男性への逆レ〇プである。


 すなわち。papavid-1919の症状とは、

①感染者は性欲が発情期のウサギ並みになる

②一度パパビアンになると「ほらほらっ、我慢しないとぉ……パパになっちゃうよ?」しか言えなくなる

③パパビアンは男を見つけ次第、手当たり次第捕食する


 以上である。


 なお、ウイルスに感染していないはずの逆レ被害者もなぜか一定の症状を示すことが判明しており、


「トレビアあああン!! トレビアあああン!!!」


 一度パパビアンに挿入した男は、どういうわけか『トレビアン』という喘ぎ声しか出せなくなる。


「パパになっちゃうよ?」


「トレビアあああン!!」


「パパになっちゃうよ? パパになっちゃうよ?」


「トレビアあああン!! トレビあああン!!!」


 いずれパパビアンの餌食になってしまうのではないか。物陰に潜み、そう考えて独り震える僕の前でも、パパビアンとトレビアンのパンパンアンアンは止まらない。ちなみに僕は、レズビアン容認派である。


 ここ数週間、僕はずっとパパビアンから逃げ回ってきた。最初は僕と共に行動していた友人も、気づけば皆トレビアンして精を枯らし、場合によっては不本意にパパとなってしまった。この村でトレビアンしていないのも、僕含め、残り数人だ。


「み、みんな気をつけろー! 変異種が出たぞーー!!!」


 突如。彼方で、男の声が木霊する。村長(非トレビアン)の声である。


「へ、変異種だって……!!」


 ゴクリと生唾を飲み込む。噂には聞いていたが、まさか本当に、変異種が出ていたとは……


 変異種。またの名を、変異パパビアン。突如として蔓延し始めたpapavid-1919の変異株の感染者である。


 基本的に、変異パパビアンの症状は通常パパビアンと変わらない。ウサギのように腰を振り、バキュームのように精を吸い出すのは一貫している。


 しかしただ一点、変異種には独自の性質が存在し──


「うわああああ! やめろ!! やめろ!!! はなしてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


「村長おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 逃走虚しく、こちらの物陰に駆けてきた村長が眼前で変異種に捕らえられる。


「いやだ! いやだ!! はなせ!!! ……ヤるならせめてもっと美形のパパビアンがいいっっっっ!!」


「ツッコむとこソコかよ!!!」


 いや確かにそのパパビアン、ハズレのガールズバーに居そうなゴリラ女だけども。


「ほらほらっ、我慢しないとぉ……パパになっちゃうよ?」


 もはやソレしか口に出来なくなったゴリラが、村長のson《ムスコ》を口に含むべく、ズボンに手をかける。


 あまりにアレだったもので、吐き気を催した僕は数秒の間、目を逸らした。


「やめっ、おまっ、やめっ…………トレビアああああああああああああああン!!」


 ──気づけば、始まっていた。


「パパになっちゃうよ?」


「トレビアあああン!!」


「パパになっちゃうよ? パパになっちゃうよ?」


「トレビアあああン!! トレビあああン!!!」


 見慣れてはいけない、しかし何度も目にしてきた光景が眼前で繰り広げられる。


 だが、今回のson長の相手は変異種。精を搾り取られるだけでは終わらない。


 ──フィニッシュ寸前。そこに、変異種の真骨頂が現れるのだ。


「トレビ……トレっ……くうっ……」


「だ、ダメだ村長!  イっちゃいけない!! そっち側に行ったら、もう戻ってこられなくなるぞ!!!」


 恍惚として、しかし苦しそうに顔を歪める村長に向けて、僕は必死に呼びかける。


 通常のパパビアンなら、ナカに発射しても問題は無い。運が悪くても、パパになるだけで済む。


 だが、変異種はそうはいかない。変異パパビアンだけは……ダメ、なんだ。絶対に、我慢しないといけない。


 なぜなら──


「ほらほらっ、我慢しないとぉ……」


 我慢しないと──


「我慢しないとぉ」


 我慢しないと──





「ト、トレビ…………バーバ〇パァぁッッッ!!!!!!」


 ──ピンクの化け物に、なってしまう。


「────」


 かつて村長だったモノが、無言で立ち上がる。


 どこかアンバランスな丸みをおびた、桃のボディ。

 やたらと短い手。

 そして驚くことに、なんと足が無い。


 その様相にはどこか違和感を覚えるものの、同時に名状しがたい親近感も孕んでいるように思えた。


 ──そう。変異パパビアン独自の生態とは『自分に中〇しした男をバーバ〇パに変質させる』というものだったのだ。


「は、はは……」


 一瞬、この地獄から逃げ出そうと試みた。

 だが周囲を見回すと、その意志も失せた。


「─────」


「─────」


「─────」


「─────」


 見渡す限り、バーバパパバーバパパ……気づけばピンクの怪物たちが、僕を無言で取り囲んでいた。


「■■■■!」


「◆◆◆◆!!」


「▶▶▶▶!!!」


「◀◀◀◀!!!!」


 理解不明の言語を叫びながら、デカブツたちが僕の身体を取り押さえる。

 視界が、ピンクに染まった。


「我慢しないとぉ……」


 間髪を入れず、桃色の塊を掻き分けて変異種が現れた。

 僕も村長と同じ運命を辿るんだろうな、なんて絶望を抱きながら、変異パパビアンを見上げる。



「……え?」


 ──だがそんな僕の諦観は、パパビアンが手に持つ注射器を目にした瞬間、驚嘆へと変わっていた。


「我慢しないとぉ……」


「お、おい、待て! その注射器の効果は、まさか……!」


 物騒なモノを片手に僕のズボンを降ろそうとする怪物に、待ったをかける。


「お前、僕から精を絞りとった後、それを打つ気じゃ──」


 しかし、最後。そんな僕を無視して、変異パパビアンは告げた。






「──我慢しないと、ママになっちゃうよ」


 変異種が持つ注射器には、ただ二文字。

 『TS』という文言が刻まれていた。

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