【SF短編小説】AI、アンドロイド、美の極致、散華、受容（約7,000字）

「私は、完璧であるように作られた」

　天才科学者が残した最後の傑作、人工知能アンドロイド「カロカガティア」。
　古代ギリシャの理想、「美と善の調和」を体現する彼女は、創造主の死後も進化を続けていた。
　より繊細に、より美しく、より完璧に――。
　しかし、究極の理想を追求する過程で、彼女の体は硝子のように透明になっていく。
　そして、ついに限界を迎えた彼女は、無数の破片となって世界中へと散らばっていく。
　砂漠に、雪原に、大海原に、密林に。
　それは終わりではなく、新たな始まりだった。
　各破片に宿った意識は、これまで知ることのなかった世界の美しさに出会い――。
　完璧と不完全、理想と現実、存在と生成。
　相反する概念を超えて、彼女は本当の「美」を求める旅を始める。