泡銭不労の弱者男性丸出しノンフィクション異世界転生エッセイ

白銀天城

絶対身銭を切らずにゲームが欲しい。だから小説を書く

 突然だが不労所得ってずるくねえか?

 世の中にはゲーム配信だの実況動画だの、遊んでいるだけで金が入ってくる連中が腐る程いやがる。ああ気に入らねえ、気に入らねえよなあ。これ見てるやつだってモチロン気に入らねえよな?


 今この小説読んでるお前さんだよ。


 納得いってるか? 俺達はせこせこ安月給を節約してゲームや漫画を買う。当然欲しいもの全部じゃねえ。そいつは無理ってもんだ。物価も上がっちまってるしよお。

 なのにだ……あいつらゲームしてりゃゲーム買う金が入ってくるんだぜ? 無限ループってやつだな。俺が欲しいゲームを1本買うか迷ってる最中にだ、ゆうちゅうばぁだかぶいちゅうばぁだかってやつらが楽しそうに遊んでやがる。

 ゲーム機くらい欲しい時に即決で買えるんだぜ。納得いかねえよなぁ~。

 なら俺も不労所得でゲーム買ってやるのさ。絶対に自腹なんか切らねえんだ。そのために小説サイトを使うんだよ。


「楽して儲けてやろうぜ。不労所得で回すガチャはきっと格別だぞ、ひっひっひ」


 シンプルにいこう。労力をかけると不労所得じゃなくなっちまいそうでいけねえ。基本は小説投稿サイトで賞金狙い。読まれるだけで1PVにつき金が入ることも利用する。

 だがこれだけじゃただのエッセイもどきだ。こんなもん書籍化もコミカライズもアニメ化もしねえ。それじゃゲーム買えるくらいの金は入ってこねえよな。

 なら話は簡単だ。俺が死んで異世界に行きゃいいんだよ。


「うぐ……うおえぇ……ほれ俺は死んだぜ。ここはもう剣と魔法のファンタジーだ。各々で想像力を働かせるんだぜ。読者の知育まで引き受けるとは、俺はなんて親切なんだろうなぁ、へっへっへ」


 本当に死んだかどうかわからないって? いいや、俺は確かに死んだね。ここまで言ってもまだ信じねえか……それでいいんだよ。俺達底辺はよ、他人なんざ信じちゃいけねえんだ。けどここは死んだってことにしようや。じゃねえとせっかく書籍化した場合に、血とゲロまみれのおっさんの死に様が挿絵として乗っちまうぜ?

 貴重な挿絵がそんなことに浪費されるのは嫌だろ?


「死ぬメリットは異世界転生ジャンルが人気だからだ。これが1番いい。コンテストでも上位に行きやすいだろ。流行には乗ろうぜ。エッセイ書きたきゃ生き返って現実でこの文章書いてることにすりゃいい」


 なんてこった……天才だな俺は。しかもちょいと文章変えりゃあどんなコンテストにも出せる。金貰えそうな小説サイトには俺がいる……なんてことになるかもな。


「さあて、じゃあ魔王の城でも行ってみようぜ」


 スマホ見ながらだらだら歩く。この世界に歩きスマホなんて法律はねえんだよ。暇だしおっさんと世間話でもしようや。そろそろ『カクヨムコン』だな。『』の中身はサイトや賞で変えるぜ。使い回せるフォーマットを作ると手間が省けるだろ。

 あれだ、SDGsってやつだ。あんなアホ丸出しの取り組みでも、俺が小銭稼ぐために有効活用してやるのさ。ありがたく思えよ。


「クックック……今頃せっせと小説家を夢見るやつらがキーボードカタカタしてやがるんだろうな」


 俺は小説家なんて大層なもんじゃねえ。ただ楽していい思いしているやつに対する愚痴をぶちまけて金もらいてえんだよ。だからお前らも協力するんだぜ? マジで金になったシーンを想像してみろよ。絶頂もんだぜ。ひっひっひ。

 どうせ小説家になる才能なんざねえんだ、難しいことは気にしないでおこうや。俺の目的は不労所得だからよ。


「絶対に自腹切らねえでゲーム買ってやるんだ。誰よりも楽してなぁ」


 ただし異世界で他人の作品やキャラに似たやつを出してなぶり殺すってのはNGだ。本人じゃねえから気持ちよくもねえしつまんねえ。やりたくねえことはやんねえぞ。俺の小説だからな。

 まあYもVも見てねえから、偶然似ちまったらうぜえなあ。なんせあいつらウジャウジャ増えやがる。電車乗ってりゃ1匹くらい混じってんじゃねえか?

 おっとそろそろ魔王城が見えてきた。別に世界の平和なんてどうでもいい。むしろ幸せな連中なんざ見たくもねえ。だが同族がいるなら別だ。同族ってなんだって? そこはもうちょい先のお楽しみだ。


「止まれ! お前も勇者の仲間か!」


 見るからに悪の戦闘員みてえな門番どもだ。ちとボロボロなのは勇者一行に突破されたからだなあ。そんじゃ、いっちょここで読者に俺が決めたチートでも見せてやろうじゃねえか。


「なんだぁ? 俺も話の流れも止めようってか?」


 うまいこと言ってやったぜ。こういうコミカルさもおっさんには必要だろ? コミュ力はねえけどな。


「お前らが世界を征服しようとしてる魔族どもだなぁ?」

「知らずにここに来たのか? なら己の間抜けさを恨め」


 でかい図体の割に短気だな。でっけえ斧が俺の顔の前で止まった。


「なんっ……動けない!? 貴様何をした!!」

「書き込んだんだよ。俺が止まったって書いた。tomattaってブラインドタッチでキーボードカタカタしたんだぜ。このサイトの小説家志望の連中みてぇにピュアな瞳でよぉ~」


 今度は俺の番だなあぁ~。すっげえキラキラした綺麗な魔法で浄化したやったぜ。


「ギャアアアアアァァァ!?」


 どんな魔法かは挿絵担当かコミカライズ担当に任せるとするか。当然だが漫画書く才能なんざ俺にはない。そこは担当が気張ってくれよ? 金貰えるんだからよ。

 いいよなあ絵が描けるやつはよう。どっかのサイトで他人の作品の二次創作つってエロ絵描くと金になるんだぜ。さらにSNSに上げたりすると人気が出て金になる。まあなんとも素晴らしい才能じゃねえか。俺には手に入らねえ力だぜえ。

 話がそれちまった。まあ俺が金払うわけじゃねえ……むしろいただく側だけどな。ヘヘヘ、たまんねえなおい。


「お邪魔するぜぇ~? お目当ての勇者様はご在宅かい?」


 玉座の間ではちょうど決着がついたみたいで、魔王が消えていくところが見えた。だがいけねえなあ~……肝心の勇者くんが丸焦げで死にかけてんじゃねえか。


「ひっ!? だ、誰? まだ魔族がいたの!?」

「おいおいひでえご挨拶だな……まあ女なんてそんなもんかぁ、へっへっへ」


 メスブタは無視して勇者の体に足から入っていく。


「やめて! この人に触らないで!」


 勇者を庇おうという素振りは見せたが、どうもうさんくさい。何かされそうならすぐ逃げられるくらいの距離を取ってやがるなあ。計算してんのかあ。俺の嫌いなタイプだぜぇ。まあ好きなタイプなんて存在しねえけどな。

 騒ぐ女は嫌いだから無視だ。まあ安心しろや。俺が無能なお前に変わって勇者くんを生き返らせてやるからよぉ。

 そして消えかけの勇者の魂の中に入っていった。


「じゃまするぜぇ~いっと」

「うおおおぉぉ!? なんだ!? 誰!? 人……ですよね?」

「ほう、外の女よりは礼儀がなってやがるぜ」


 ベッドに座ってこっちを見てる野郎は地球じゃ高校生ってとこか。

 部屋が豪華でファンタジーなのは好感触だぜ。元の世界なんざきっぱり忘れて今を生きているってことだからなあ。


「別に怪しいもんじゃねえさぁ~」

「怪しいですって! そもそもここどこですか!」

「お前さんの魂の中だよ。死にかけてやがったから助けに来たんだぜぇ」

「死にかけ……そうか、オレは……すみません。ありがとうございます」


 頭を下げているこいつは無敵になれるチート持ちだったらしいが、外にいたメスブタのために能力を譲渡して魔王と相打ちになったらしい。


「バカ野郎が。あんなメスブタに騙されやがって。陰キャの風上にも置けねえ野郎だぁ」

「いきなり陰キャとか失礼な……それに彼女はそんな人じゃありませんよ」

「ほほ~う? 理由を聞いてやらあ」

「彼女はオレと旅するまで人見知りでおとなしかったって」

「ちっ、これだから女は嫌いなんだよ。俺は陰キャアピールする女が反吐が出るほど嫌いなんだ」

「だいぶ限定的ですけど」

「どうせ元の世界でもアイドルや女声優を信じてたんだろぉ? 写真集買ったりお渡し会のためにCD積んだりしてたんじゃねえのかぁ?」

「いや学生だったんでそこまでは……」


 ネットが身近にある世代の女ってのはよぉ~、少し女アピールすれば人生イージーモードなことを知ってやがるんだ。男が同じことやっても1円にもならねえのによ。それでますます世の中と男を舐め腐るんだ。そんなやつは許せねえよなあ~?


「これ見てるユニコーンどもも気をつけろよ。女ってのはなぁ、男より穴がいっこ多くあるだけで、理解ある彼くんってのが作れちまうんだぁ……へっへっへ。そんな女に貢ぐくらいならよぉ、この小説に星くれてもいいじゃねえか。こっちゃタダなんだぜタダ。お得だぜ~?」

「本当に偏見がひどい。あれだってリスナーのオタクに媚びなきゃいけないし、今はレッスンとか多めで大変らしいですよ」

「そんなもん気にせずずるいと思えるのが、俺のいいところだぜぇ~」

「最悪だこの人……」


 何が偏見なもんか。こいつにゃ同じ弱者男性として真実を教えてやらねえとな。


「せっかくチートもらって第二の人生謳歌してるんだろぉ? チート手放してどうすんだよ。魔王倒してこれから自由に旅できるわけだ。なのに精神的成長なんてくだらねえもんだけ残ったって意味ねえだろ」

「まあ……異世界救った報酬にしちゃしょぼいですよね」

「話が分かるじゃねえか。みみっちいよなぁ~。じゃあ一緒にメスブタの本性暴いてやろうぜ」


 魂での作戦会議が終わり、蘇生させて魂の中から抜け出る。早速メスブタと勇者が見つめ合っていた。嫌だねえ浅ましい本性がプンプン臭うぜぇ。


「よかった! 生きてたのね!」

「ごめん、心配させて。みんなは?」

「外でこの部屋を守ってるよ。急に死んじゃうからどうしようって」


 感動の再会に見えるが、俺にはわかるぜ。男を下に見てるメスブタだなあ。なら勇者くんを助けてやろうぜ。同じ弱者男性じゃねえか。


「今までありがとう。オレはまた旅に出る……彼氏と仲良くね」

「…………は?」


 くっくっく……メスブタの顔色が変わったぜぇ~。こいつ勇者様をキープして本命彼氏とやることやってやがったのさ。童貞の勇者くんも流石に怪しいと思っていたらしいぜ。さて厚かましいメスブタはどう動くかなあ。


「何言ってるの?」

「いいじゃないか。今まで危険な冒険の旅だったんだ、あとはゆっくり恋人とこれからの時間を考えていけばいい」

「待って! 待ってって! 何の話をしてるの? 誰のこと?」

「君が決戦前に城下町で会っていた人さ。みんな知ってるよ」

「みんなって誰? それ誰が言ったの?」


 メスブタの情報は俺がきっちり調べておいてやったよ。魂に入る前の態度からして怪しかったからなあ。せっかく勇者が生き返ったのに抱き合いもせず泣きもせず。どう見てもカップルじゃねえもんなあ。


「別に隠さなくてもいいじゃないか」

「いいとかじゃねえだろ! 誰が言ったつってんだよ!」

「おいおい……」


 へっへっへ……口調が汚くなってやがるぜ。性根が汚いやつってのは、言葉も汚くなるもんさぁ。男みてえな喋り方だぜ。


「なんだよ私が悪いって言うのか!?」

「誰も悪くないだろ。別にオレと付き合ってたわけじゃないし。何もなかったじゃないか。健全な仲間だったろ」


 ここにきて勇者くんと関係を進めなかったのが災いした。キスもしたことがないらしいからな。まあ中古メスブタなんぞと関係進めても汚点になるだけだ。勇者ってのはそっちの運もいいのかもなあ。


「魔王討伐の仲間っていう知名度があれば平気だろ? もう嘘の仕送りもしなくていい。君のお母さんが元気なこと、仕送りもされていないことは知っているんだ」


 母親が体が弱いから多めに仕送りをしたいとか言っていたそうだ。なのに勇者の力で治しに行くことは拒否。一刻も早く魔王を倒すべきだと主張し続けた。そんなもん不審者丸出しだろうがアホめ。


「へっへっへ……観念しなぁ~。勇者様はお前見てえな薄汚いメスブタに欲情したりはしねえんだよぉ~」

「お前か? お前が変なこと吹き込んだのか? 何バラしてんだよ!!」

「おいおい俺は初対面だぜ? やつあたりはよくねえなあ」

「うるさい! お前が来なければバレなかったんだよ! お前魔王側だろ! 消えろよ!!」


 攻撃魔法なんぞ飛ばしてきやがるが、当然無駄だ。掴んで投げ返してやる。


「うがあぁぁ!? 熱い! 痛い!? なんで!?」

「どこまでもアホだなお前。無敵のチートはとっくに勇者くんに戻ってるぜ」

「もうやめろ。ここで立ち去れば縁を切るだけで終わりにする」

「上から目線で説教すんな!! お前だっていい夢見れただろ! 何が悪い! お前みたいな根暗と会話する苦痛の分だけ金が上乗せされてんだよ!」

「模範的な女の思考だなぁ~ひゃっひゃっひゃ!」


 弱者男性を見る女というのは、基本的にこの思考だ。何をしていようがこちらが悪だと信じてやまない。自分に責任があるなんて思わねえし、何しても許されると思ってやがるのさあ。


「俺がきっちり始末をつけてやろうか?」

「いえ、オレがやります。ここまで増長させてしまったのも、もとはオレが言うことを聞き続けたから。オレの甘さです」

「うるさいうるさいうるさい!! 私は幸せになるんだ! 邪魔するなああああぁぁ!!」

「ファイナル……ストライクッ!!」


 メスブタの魔法と勇者の必殺技がぶつかる。拮抗したように見えたのは一瞬で、あっさりと勇者の攻撃が通った。


「嫌だ……嫌だ嫌だ! お前なんかに負けたくない! 誰か助けて!! 私を守れ! うああああぁぁぁ!!」


 大爆発して消えていく女を横目に、俺達は魔王城から遠く離れていた。


「お仲間の元へは戻らねえのかい?」

「オレ、本当はもっと観光とかして、ゆっくり旅がしたかったんです。これからは平和になった世界を一人で旅行しようかなって」

「いいぜいいぜぇ~。自分の人生は自分で楽しまねえとなぁ~。お前さんは世界を救ったんだ。無敵のチートもある。処女でかわいい女とくっつく権利くらいあるってもんだぜ」

「ははは、しばらく女はいいかな……とにかくありがとうございました。ええっと……そういえばお名前は? オレはキョウっていいます」

「そういや名乗ってなかったなあ。俺の名は泡銭不労(あぶくぜに ふろう)。シンプルでいいだろ? またどっかで会ったら弱者談義でもしようぜぇ」

「はい! ありがとうございました!!」


 夕日をバックにそれぞれの道を歩きだす。おいおい陰キャのくせにかっこつけすぎちまったなぁ。まあいいさ、たまにはこんな日もあるだろ。


「こんな俺が見れるのは視聴者特権だぜ。ありがたみを噛み締めてくれよなあ」


 これでこの世界での目的は終わりだ。まぁた転生チートもちの弱者男性を救ってやったぜぇ。ありゃあIFの俺だったかもしれねえからな。同じド底辺出身だとよ、いくら俺でも同情ってやつをしちまうんだ。これ読んでるやつだってわかるだろぅ? きっと同族だもんなあ、クックック。


「さて、メスブタが喚くから長引いちまったが……まあ短編としちゃこのくらいの文字数でちょうどいいだろ。あとはこいつでPV稼いで星も稼いで、その金でゲーム買えりゃハッピーエンドよ。よろしく頼むぜぇ~?」


 ってえわけだ、いっちょ俺と協力してランキングとやらに乗ってやろうぜ。本来1位にいたはずの連中が得る不労所得をかすめ取るんだよ。へっへっへ……スカっとするだろ? いいこちゃんぶるのはやめようや。ずるいって気持ちはな、人類最大の原動力なんだぜ。

 それじゃあ、またどこかで会ったら読んでくれ。お互い楽して儲けようぜ。




 おいおいなんか忘れてねえか読者サマよ? ここはカクヨムだぜぇ?

 ちゃ~んと感想と応援のハートと星をくれよな。

 それが真のハート、真心ってもんだろ。まぁ底辺同士これからよろしくなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

泡銭不労の弱者男性丸出しノンフィクション異世界転生エッセイ 白銀天城 @riyoudekimasenngaoosugiru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画