つ、強い!剣と魔法の世界を、1人で生きるコツを知る男

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 ハイレベルの冒険者とは、こういう男のことをいうんだろうな。異世界を1人の力でも生きていくコツは、どこにある?

 剣と魔法の世界は、きびしい。

 冒険者たちは、モンスターたちとのバトルをくり返すたびに不安。

 「…きつい。この世界、 1人で生きていけるのか?」

 彼も悩んだ。

 「俺のレベルを、もっと上げる必要があるかも!」

 強い意思がなければ、 1人では生きていけない世界。

 剣と魔法「じゃない」世界の人たちはどうなのかは、知らないが。

 そんなとき、町中で興味深いうわさを耳にした彼。

 「知っているか?」

 「何を?」

 「この世界を 1人でも生きのびる力を与えてくれる男の、伝説さ!」

 「何、何?教えてくれ」

 これは良いことを聞いたと、彼は、うわさの男がいるという海辺の洞くつに足を運ぶ。

 「伝説の男って、戦士系?それとも、魔導士系?」

 やや、わくわく。

 が、期待外れ。

 「フツーのおじさん」

 それが、うわさの男の第 1印象だった。

 男の性格は、悪くない。

 「良く、俺を頼りにきたな」

 彼を受け入れる言葉も、悪くない。

 「何?この世界で、 1人でも生きていける力を授けてくれ?それなら、一緒に住もう」

 なかなか、面倒見の良い人。

 「ただしな」

 男からは 1つだけ注意を受けたことがあった。

 これが、妙。

 「おい、若造?」

 「はい」

 「部屋の奥に、金庫があるだろ?」

 「はい」

 「兵法書や魔法系の本が、横に積まれているわけだが…」

 「はい」

 「金庫の壁に立てかけてある本だけは、読んではならん」

 「?」

 「わかったか?」

 「わ、わかりました」

 一応、そう答えたものの…。

 金庫の中の、見てはならないという本のことが気になってならない。

 約 3ヶ月後。

 「今だ、やるしかない!」

 彼が、男が外出したときに動く。

 男にはないしょの通信教育でマスターしていた金庫破りを、試みる。

 「やった!」

 見事に成功。

 「中身は、何?」

 震える手で開けた、「見るな」という金庫の中の本は…。

 何と、「日記」!

 こっそり読んで、がっくり。

 「○月×日、アホ面をしたがきんちょがたずねてきた。一緒に、住むことにしたよ」

 …。

 見るんじゃ、なかったか。

 「今まで、お世話になりました!」

 男が帰ってきて、すぐに出ていく彼。

 「…あ!」

 そこで、彼は気付いた。

 「俺、 1人でも生きていこうと思えるようになっているぞ!」

 良かったね。

ふり返ると、伝説の男が笑っていましたとさ。

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