第64話 優位でも削られてる

ユウゴとコボルトジェネラルの勝負……両者が高速で移動しているので攻防の繰り返し数は並ではない。


ただ、実際の戦闘時間は数分程度だった。


戦況はぱっと見、ユウゴが優勢である状況が続いていた。

しかし、それはユウゴが未来予知のスキルを持っているお陰。


仮にそのスキルがなければ、サイキックをフルに活用してなんとか抵抗しようとするが……数分間も戦っていれば、必ずどこかでやらかしてしまう。


なので、未来予知のスキルはコボルトジェネラルと命懸けのバトルをするユウゴにとって、間違いなくピンチを切り抜ける切り札だった。


ユウゴはコボルトジェネラルが攻撃しようとするたびに未来予知を使い、どんな攻撃が飛んでくるのか確認してから回避し、カウンターを決める。


疾風による斬撃攻撃や、ボールやアローにランス系の攻撃を使い、なんとかダメージを積み重ねていく。


致命傷にはなりえない攻撃だが、それでも攻撃数を重ねれば、動きが鈍くなるのが普通なのだが……コボルトジェネラルに限ってはそんな素振り、一切なかった。


(なんでスピードが一切落ちないんだよ!!! アドレナリンがドバドバだからってことか!!??)


声に出して文句を言いたいところだが、コボルトジェネラルからの攻撃は一撃でも当たれば、ユウゴにとって致命傷となる。


途中から大剣に火まで纏い始め、いよいよ斬られたらお終い……と、本能が頭に警告して来る。


死合を優位に進めているユウゴも、何度も未来予知を使っていれば魔力がどんどん無くなっていく。

常人より魔力量がかなり多いユウゴだが、それだけはどうしようも出来ない。


なので、何度かは未来予知で動きを読んだ後に遠く離れ、マジックポーションを飲みながら突っ込んでくるジェネラルの脚に限定してサイキックを発動。


脚だけが急に動かなくなれば、当然体は勢い良く前に倒れる。

その隙に魔力をがっつり回復し、再び攻撃を避けながらカウンターを決めていく。


(この調子なら、多分いけるよな)


まだマジックポーションには余裕がある。

メンタルやスタミナ的には少し危ないが、それでも今までの流れを繰り返していけば、確実に倒せる。


実際にユウゴの斬撃は一応コボルトジェネラルの体を斬り裂き、攻撃魔法は内部にダメージを与えている。


ただ……このフラグ的な考えが頭に浮かんでしまった瞬間に、ユウゴにとって予想外なことが起きた。


「なんだそれ!?」


そろそろ残りの魔力量がヤバそうだと思い、破壊力抜群の攻撃を躱しながら思いっきり離れ、マジックポーションを飲みながらサイキックでジェネラルの脚を止めようとした。


だが、ここにきてジェネラルは再び駆け出してユウゴを潰そうとするのではなく、体を反転させて大剣を振り上げ、上段の構えを取った。


つまり、脚にサイキックを使ったところでなんの意味もない。


ユウゴがマジックポーションの苦い味に耐えてると、コボルトジェネラルは火を纏った大剣を全力で振り下ろした。


「でかっ!?」


すると、ユウゴの体を飲み込むような炎の特大斬撃が放たれた。


ユウゴのスタミナとメンタルを徐々に削り、ある意味思い詰めていたコボルトジェネラルだが、もうかなり魔力量が限界に近づいてきていた。


なので、時折相手が自分の脚を止めてくるというパターンは学習したので、最後の賭けに出た。


放たれた炎の斬撃は上級魔法並みの威力があり、躱そうとしても……余波でやられる可能性がある。


ここでユウゴは……チートスキルの一つを使い、賭けに出た。

選んだスキルが、サイキックではおそらく止められないだろうと思い、吸収を選択。


「うぉぉおおおおおおっ!!」


文字通り、吸収するスキルであり……ユウゴはまだ本当の有能性に気付いていない。

ただ、目の前の攻撃に対して吸収は使えると判断。


直ぐにマジックポーションが入った瓶を投げ捨て、空いている左手で吸収を行う。


ユウゴが想像していた以上に威力が高く、数メートルほど後ろに押されたが、四分の一ほどを吸収することに成功。


(よし!!!)


そこまで威力、規模が下がれば十分にサイキックで止められる。


「おらっ!!!」


四分の一まで縮んだ炎刃を躱し、残りの少しだけ縮んだ特大炎刃をコボルトジェネラル目掛けてぶっ放した。


「グアっ!!??」


完全にこれで終わらせたと油断していたジェネラルは猛烈に焦り、なんとか大剣で弾き飛ばそうとするが……もう魔力が本当にない。


先程まで使っていた身体強化、剛腕などのスキルが使えない状態となると、いくら四分の三に縮んだとはいえ、自身が放った特大炎刃を掻き消すのは困難。


だが……最後の力を振り絞り、今日一番の雄叫びを上げながら吹き飛ばした。

まさに根性による奇跡のパワーを見せた瞬間。


しかし、当然吸収した炎刃で倒せるとユウゴは思っておらず、速攻でコボルトジェネラルの背後に回っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2025年1月11日 18:00
2025年1月12日 18:00
2025年1月13日 18:00

チートはズルくて卑怯? バカ野郎、だから使うのが楽しいんだろう!!! ゲームのやり過ぎで死んだ大学生のセカンドライフ Gai @shunsuke3144132000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画