第63話 怖さの差はなんだ?
(……だいたい、三十半ばぐらいが通常のコボルト。その他がナイトやメイジ、ファイターやリーダー。それで……あれがジェネラルとマーサー、か)
視線の先には他のコボルトと比べて二倍から三倍はある巨体のコボルト。
悪い顔をしながら、何やらマーサーに向かって話している。
その話をこちらも通常のコボルトより二倍ほどはある大きな体を持つコボルト、マーサーが静かに聞いていた。
(俺の勘違いじゃなければ、何やら悪そうなことを考えてる顔なんだけど……やっぱり勘違いか?)
そんなことを考えていると、既にウルが愛剣である双剣、風葬を取り出していた。
(もう様子見はせずに攻めるってことですね。了解!!!)
ユウゴも覚悟を決め、オートエイムの効果を付与した魔法陣を多数展開。
「行くぞ」
小さな声……しかし絶対に勝利するという強い意志が籠った声と共に、二人は戦場へと駆け出す。
「「「「「「「ッ!!??」」」」」」」
まずはいきなり飛んできた多数のアロー系の攻撃魔法にコボルトたちは驚く。
ウルがギリギリコボルトたちの鼻に感知されない場所を見極めていたため、ユウゴたちの方が一手優勢な状態からスタート。
しかし攻撃魔法が届く前にコボルトたちも自身の武器を手に取り、襲撃に備えて構える。
そして確実に飛んでくる攻撃魔法に対して、タイミング良く武器を振って粉砕しようとした瞬間……攻撃魔法の軌道が変わった。
「グガッ!?」
「ギッ!!!???」
「グォ、ォ……」
これはユウゴがギリギリで軌道を変えたのではなく、予めそういうルートを通る様に設定していた。
なので、何体か運良く顔面や目、首、心臓以外の部分に当って絶命を免れた個体もいたが、多数のコボルトが今の攻撃によって倒された。
「流石ユウゴ、頼もしい限りだ!!!!」
仲間の力強さに感激しながら突撃するウルは、ユウゴが取りこぼした死にぞこないをサクッと斬り殺して、残っているリーダーやファイターが果敢にも襲い掛かるが……近づく前に放たれた風刃によって首を断たれた。
「いやいや、頼もしいのはウルさんの方ですよ」
先陣を切ったウルの後を追う様に走るユウゴは、あまりにも綺麗に……舞う様に敵を仕留めたウルに賞賛を送る。
「ウルさんが不安を全部消してくれたし、きっちり働かないとな」
ユウゴがオートエイム付きの攻撃魔法で減らし、更にウルの斬撃で見事にジェネラルとマーサー以外のコボルトが全滅。
本当に一瞬で起きた出来事に大将でありながら、どうにもすることが出来なかったジェネラルは、目の前で起こった惨劇に激号。
即座に大剣でウルをぶった斬ろうとするが、そうはさせまいとユウゴがサイキックでコボルトジェネラルの動きを止めた。
(うぉっ!!!??? やっぱり力強いな!!!)
完全に動きを止め続けるのは不可能。
それは元々分かっており、瞬時に二本のウィンドランスを放ち、ウルへの攻撃を無理矢理中断させた。
(さて、私も自分の仕事を果たさなければな)
ウルが習うは同族が一斉に殺られても焦らず、表情を変えなかったコボルトマーサーの討伐。
迫りくる狼人族の女が本能的に強いと解り、薄く笑みを浮かべながらロングソードを抜き、ウルとの斬り合いに応じた。
「グルルルゥアアア……」
「うわぁ~~、佇んでるだけで怖すぎるだろ」
同じ大剣を使う相手……だが、ブランとコボルトジェネラルでは感じる恐怖が段違い。
しかしウルにジェネラルの相手を任された以上、当然だが逃げるわけにはいかない。
「ほら、来いよ」
「ッ!!!!????」
指をくいくいっと動かし、分かりやすい挑発ムーブを行うと、あっさりとジェネラルの怒りを買うことに成功。
(同じ怒ってる状態なのに、この差はなんなんだって感じだな!!!)
既に大剣には魔力が纏われており、身体強化のスキルも使用している状態。
目では終えるが、先日の盗賊団との戦いの様に、スピードで上を取って上手く戦える自信がない。
なので、初っ端から切り札を使っていく。
「グルルゥアアアアアッ!!!???」
「うぉ、っと!!!」
そう……ユウゴのチートスキルの中でもチートオブチートな未来予知。
他のチートスキルと比べて消費する魔力の量は多いが、この戦いでは使う価値が大いにある。
そして大地をも割るコボルトジェネラルの斬撃を躱し、ユウゴはすれ違いざまに疾風のスキル技、風刃を使って風の刃を飛ばした。
「……やっぱりそれぐらいのダメージだよな」
体が斬れない訳ではない。
しっかり斬れ、コボルトジェネラルの体から血は流れているが、微々たるもの。
戦況をひっくり返す一撃にはならない。
(でも、ロックランスはそれなりに効いたみたいだな)
躱した方向とは逆の方向からロックランスの魔法陣を展開し、発射。
体を貫きはしなかったが、骨に罅を入れることには成功した。
ただ……コボルトジェネラルの怒りがその程度のダメージで沈むわけがなく、更に吼えながらウルを潰す前にユウゴの討伐に前意識を集中させた。
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