第62話 もっと自信を持て
ユウゴのDランク昇格試験が終わってから数日後、元々の目的であったコボルトの群れの討伐に向かう二人。
「今回の群れにはコボルトジェネラルと、コボルトマーサーがいるらしい」
「コボルトマーサー、ですか?」
この異世界のモンスターに関しては、まだまだ知識が足りていないユウゴ。
ただ、マーサーの存在はこの世界に者であっても……同じ冒険者でも知らない者がちょくちょくいる。
「簡単に言えば、傭兵だ」
「よ、傭兵……モンスターにも、そういう文化があるんですね」
コボルトマーサーは一つの土地に長い間居座らず、各地を転々。
そして同族であるコボルトたちから何かを頼まれれば、報酬を受け取ってその頼み事を果たす。
まさに傭兵と言える生き方。
「ちなみに、その……やっぱり強いんですよね」
「強いだろうな。そもそも強くなれる素質がなければ、マーサーまで進化することはない」
「ということは、ウルさんがマーサーの相手をするんですね」
「あぁ、そうしようと思っているが……ユウゴ、もしかして戦いたいのか? そうであれば、限界まで頑張った後、私と交代するか?」
「いえ、遠慮させてもらいます」
この世界に来たばかりの時と比べて、強くなったという自覚はある。
FPSなどのゲームをやっていたお陰か、乱戦の状況でも一応対応出来るようになった。
とはいえ、実際に見てはいないが、とても一人で戦えるとは思えない。
「はは、清々しい断りの速さだ」
「だって……多分、そのマーサーってBランクですよね」
「Bランクの中でも、上の方に位置する実力はあるだろう」
「やっぱり。なら、どんなにズルいスキルを持っていても、今の俺では戦力になりませんよ」
挑戦は大事。それは理解している。
だが、さすがに現時点でコボルトマーサーに挑戦するのは無謀過ぎる。
ユウゴの判断は間違っていない。
「自己評価が低いな……まぁ、その分コボルトジェネラルの相手は任せた」
「はい! ……え?」
思わずノリで……流れではいと答えてしまったが、それはそれで予想外の役割だった。
「俺が、コボルトジェネラルの相手をするんですか」
「その通りだ。必然的にそうなるだろう。勿論、その間にある程度数は減らすがな」
「で、ですよね……でも、コボルトジェネラルって、かなりレベル高いですよね」
一般的な上級種の、更にその上に君臨するジェネラル。
その強さに辿り着くのは、そう簡単ではない。
「ユウゴ、この前グレートウルフを倒しただろ」
「はい。確かに倒しましたけど……いや、俺まだレベル十九ですよ。コボルトジェネラルって、レベル三十ぐらいはありますよね」
「……報告では、確かレベル三十二だった筈だ」
現在のユウゴと比べて、レベルは十三も上。
(えっ…………いやいやいや、無理でしょ)
即座にそう思った。
まだ自分の力だけで倒せるような相手ではない。
ユウゴ自身は、今の自分ではまだ無理だと思っているが……昇格試験を終えてからユウゴの体験を聞いたウルからすれば、決してスキルなどでカバーできない実力差ではないと思っている。
「ユウゴ、君の特別なスキルを使えば、たとえレベル三十二のコボルトジェネラルが相手だったとしても、勝つことは出来る筈だ」
「いや、俺の力を信用してくれてるのは素直に嬉しいですけど。レベル差が十三もあるんですよ」
「確かにそうだな。しかしユウゴ、お前はこの前の昇格試験でレベル二十一の盗賊を一人で倒したんだろう。しかも、その時のレベル差は五」
確かに昇格試験時、ユウゴは相手の方がレベル、身体能力に関しては上だと自覚しながらも、冷静に勝負に挑んだ。
そして見事に勝利を収めた。
「その勝負は勝てましたけど、相手が怒りに身を任せて動いていたこともあって、戦いやすかったんですよ」
「それでもレベルが五も上の相手に余裕で勝利を収めた。それは紛れもない実績だ。安心しろ。ぶつかる前に周りのコボルトたちは一掃する」
「……分かりました。なんとかやってみます。でも、危なくなったら助けてくださいよ」
「ふふ、分かってるさ」
ウルはヴァイスタイガーにギリギリとはいえ、ソロで勝利をもぎ取ったことで自分の実力に自信が付いており、Bランクのコボルトマーサーを相手している時でも、ユウゴの援護は出来ると思っている。
(油断している訳ではないが、一つでも援護を入れれば、ユウゴの力でなんとか出来るだろう)
ユウゴの実力、スキル、努力を信用しているからこそ、ウルはユウゴがコボルトジェネラルに負けるとは全く考えていない。
「……ユウゴ、そろそろ足音を消すんだ」
「はい」
コボルトの群れがあるという場所までかなり近づき、それでもまだ距離はあるが……上位種の聴力や嗅覚を警戒して足音を消してゆっくりと近づいていく。
「ユウゴ、見えるか」
「はい、見えます…………情報通り、大体五十体ぐらいですね」
視界の先には、多数のコボルトやその上位種が拠点を作り、生活していた。
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