第22話 再来
「
裴泉
「はい」
「私達は
裴通は
裴泉にとっては
「そりゃあいつかは
左の
裴通が玉英
「そうか、わかった。感謝する」
「なら、その分は
交易で、ということだ。
「裴通の働き次第、としておこうか」
「ありがてぇ。そういうことだ、裴通、しっかりやれよ」
「はい!」
幼い裴通は新たな責務に
十年後、二十年後を
三日後に華津を
那耶の
馬津は、北西へ突き出た
馬津を出た
百漁半島を含む
年明けまでには
到着したのが
翌朝、
趙敞は表向き「
「昨夜も申し上げました通り、『三つ子半島』全体と
だからこそ、
玉英が
「青東半島と
屯田とは、駐
玉英はこの屯田と他の
しかしながら、趙敞も
「想定通りか」
「ハッ。少々上回ってはおりますが、
趙敞が頭を下げる。
「良くやってくれた。引き続き頼む」
「ハッ!
更に深く頭を下げた趙敞を見て、玉英は頷き、
「うむ。では次、竜爪族領域……兄上については?」
趙敞は一度上げた頭を再び下げて答えた。
「ハッ。
麩椀は青山の戦いで青東連合軍の指揮を
とは言え、各都市や邑との
「内容は?」
「ハッ。例の『教え』――
龍天教。
対して
存在としての
「今すぐ
「
言い
「
暗殺である。
「ハッ」
顔を伏せる趙敞。
――
少なくとも、竜爪族単独で麒角へ
「仮にそうした狙いがあるとして、
「
知らせを受けた周華の王――玉英の先祖からすれば
そうした事情を
「ふむ。……最大限に警戒しつつ、調査を継続。
「ハッ!」
備えるべきことは、多い。
「そなたも、
「ハッ! 有難き
趙敞の下げた頭に、黒いものが増している気がした。
その後、
「裴通の様子を見に行かぬかや?」
そう誘われて、玉英は琥珀、
蓬莱からやって来た者達のうち、裴通は言葉こそ
青陰北側から北西側――青水
事実、それに近いことをしていたのかもしれない。玉英
「何が見える、裴通」
背後まで近付いてから声を掛けると、
「殿下! 琥珀様に、子祐殿も!」
振り向いた裴通が
蓬莱に居た頃と異なり、
「あの舟の荷……あれは、那耶からのものですよね?」
小さな左手の指す先へ改めて目を
「ようわかったのう」
琥珀が顔を
「あの箱には
基礎を固めた荷下ろし場へ積み上げられた箱は、
「そうして学べるものを学ぶと良い」
見えるもの全てが……
玉英が
「はい!」
裴通は、琥珀に撫でられ続けながら、満面の笑みで
しばらく
玉英の背丈より
他の荷の中身は何か、
交易関係の地名は教えてあるが、裴通にとっては行ったことのない場所が殆どである。本当にただの
琥珀は見た目こそ幼い頃とさほど変わらないが、実のところ
と、琥珀達が五丈(約九メートル)
「子祐っ!」
多くの荷に
――間に合ったはずだ。
――琥珀の『力』もこの地では……。
――間に合っていてくれ。
――裴通は……。
――間に合っただろう?
――子祐。
「――ッ!」
背後に気配を感じたら、急所を守りつつ、可能な限り一撃入れながら距離を取ること。
西王母の教えが無ければ、あるいはそれを守れていなければ、死んでいた。
「おやおや、
命を
忘れもしない、子祐に
「ど、ッ!」
どこから入り込んだ、
夕日を半ば背にして、遠い間合いから
如何なる
――
――否、疾い上に
全身の連動があまりにも
結果的に、一つの動作で
とは言え、幼かった頃とは違う。見える。
五つ数える程の間に十五
「どこから入り込んだ、強き
「
問いには答えず、
見た目には四十まであと三、四年というところだが、強さに
「そなたには、私に
「ならば、死んでくれるなよ、
口角を上げる男。
――よく言う。
言葉にはせず、玉英も口角を上げて見せた。
だが、こうして玉英へ数呼吸を与えたのは、確かに――
「
直後、再開された男の攻撃は
――まだ
長尺刀が
右へ左へ、右へ左へ上へ下へ、右へ左へ右へ下へ上へ。
左へ右へ、左へ右へ下へ上へ、
――死ぬ。
はっきりとわかった。『理』の境地からは既に遠い。
対して男は、こちらの実力を
男の
「
声が耳に残る中、
――――
――
覚悟した
「無事か、玉英」
袁泥が、剣を構えてそこに居た。
男は目を見開き、一歩
「クックッ、
袁泥の右手には長尺刀に
「……」
「おや、
両の
「……」
問い掛けに応えていなかった、と気付く。
「っはい、無事です。ありがとうございます袁泥殿」
「気にするな」
「クックックッ、良き
男は
袁泥の動きは、対面する男の流麗な動きとは
ある状況における、おそらくは最適な動き……それが
五十合は重ねただろうか。
「はっはっはっ、これは、お強い」
男が大きく
「……」
袁泥は玉英の前から離れない。
「さて、
男は
「さらばだ
袁泥がそれ
「ありがとうございます、袁泥殿。おかげさまで助かりました」
「無事ならそれで良い」
袁泥は
「玉英! 大丈夫かや」
背後からの声。
「琥珀!」
「ああ、大丈夫だ。琥珀も――」
「妾は大丈夫じゃが――」
「良かった」
「すまぬ、玉英――」「裴通も無事か」
姿を確認し、息を
「子祐?」
裴通の向こう側、地に寝かされている、鬼族女性としては極めて恵まれた身体。
「子祐!」
琥珀から離れ、足を
「子祐……」
「デンカ、――――、――――、――――!」
子祐へと伸ばした手を、いつの間にか右へ来ていた迅に止められる。――デンカ、というのは迅が覚えた数少ない周華の言葉だった。あとは、わからない。
「殿下、お手を触れぬようお願い申し上げます。頭を打っており、動かさぬことが
正面で片膝を突いた梁水が――蓬莱の言葉をいくらか覚えている――迅の意を伝える。『すまひ』では稀に起こる事故だ、とも。
「わかった。……良くぞ止めてくれた。……どうすれば良い?」
自力では何も
九つ違う。玉英が
玉英の生は、子祐と共にあった。子祐の居ない状況
「デンカ、ヨベ」
梁水の横――玉英から見れば向かって左側へ座り込んだ広常が言った。
「デンカ、ヨベ。シユウ、ヨベ。テ――――――」
「手なら……手を触ると良い、とのこと」
「わかった」
子祐の左手を両手で握り、
「子祐……子祐、すまぬ、無理をさせた」
一切の
「子祐、目覚めよ子祐! まだ
手に
「子祐、子祐! 私が死ぬまで
玉英の
「
「ッ――」
子祐の目元が微かに動いた。
「子祐!」
「――ぁ、でん、か……」
「子祐! 大丈夫か、動くな、しばらく横になっていろ!」
「……はい、殿下」
微笑む子祐に、玉英も微笑み返す。
「幼い頃のようだな」
最初は、今のように「はい」と返事をしていた。
「軍……「答えずとも良い。いや、今は休んでおけ。命令だ」
最大限、
鬼種百合譚~周華国戦記~ 源なゆた @minamotonayuta
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