共感性の高いテーマ、からの強烈な印象を残すラスト

 非常に完成度が高く、テーマ性、文学性、そして共感性、様々なベクトルでのクオリティを感じさせられる作品でした。

 主人公はコンビニ店員として生計を立てつつ、「自分だけは幸せになる資格がない」と常に感じさせられて生きている。
 なんとなく、要領よく生きている人間が目に付き、そういう人間はどんどん幸せになっていく。人生のステージを次に進めていく。その一方で自分だけは前に進めず、取り残されて行く感がある。

 この心情、とても胸を打たれました。うまくいく人間はどんどんうまくいき、自分と何が違うのだろうと悩まされる。こういうことに悩んだ経験のある方は、きっと少なくはないと思われます。

 そうして葛藤する日々を送る中、主人公の日常にはとある変化が……。


 夢と現実。その境界の曖昧さを描くことで、主人公の人生に救済があるのか、それとも破滅が訪れるのか。どのようにも取ることができる、とても深いラストが描かれていました。
 考察しがいのあるテーマ性や構成。そして共感性の高い心情。
 文学性の高さも評価したくなる、まさに名品でした。

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