異世界恋愛クリニックへようこそ!~AとBどっちにする?~

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 「先生!どうやって相手をさそったら良いか、わかりません!」異世界の恋の悩みに、プロの恋愛カウンセラーが答えたら…?

異世界恋愛クリニックへ、ようこそ!

 「恋のカウンセラー」

 それが、この男につけられたあだ名。

 仲間で開いた平屋のクリニックで、働いている。

 「あのう…」

 今日ここにやってきたのは、男性。

 「男性とは、珍しいな…」

 と軽く思いかけて、ストップ。

 相談しにきた方は、だれであっても真剣に受け止めるべき。

 「先生!相手を、どこかにさそいたいんですが…上手くいかないんです」

 この悩みも、多い。

 「まあ…。いきなり、映画を見にいきましょうかと相手をさそってもですね」

 「何でしょう、先生?」

 「相手は、簡単にOKを出してくれません」

 「…」

 「そういうときは、映画と海とどっちが良い?と聞いてみるのです」

 「…え?」

 「これしませんかあれしませんかと急に言われたら、フツーはさけてしまいがちです」

 「…でしょうね」

 「でも、映画と海のどちらが良い?のように Aか Bかで選ばせると、断りにくくなるものなんです」

 「?」

 「映画か海…。じゃあどっちにしようかな~って、思わせることになります」

 「なるほど」

 「このとき人は、どこにも一緒にいきたくないではなく、あなたとどちらかには一緒にいこうと考えるようになっているのですね」

 「おお…」

 「どうですか?」

 「でも、先生?そのテクニックは、相手へのだましになりませんか?」

 「なりません!相手の迷いを消して、押してあげただけ…悪いはずありません」

 「良かった!」

 相談にきた男性は、元気に帰っていった。

 が…。

 教わったさそい方は、役に立たず。

 男性の相手は、ネコが転生した少女。

 小柄な身体に大きな獣耳がゆれるその少女は、転生前の性質の継承で水が苦手。

 海にさそっても、こない。

 映画にさそっても、入場が断られ。

 「動物の同伴は、ダメです」

 そこで男性は、気持ちの切り替え。

 「山と遊園地、どちらにいく?」

 でも、またダメ。

 山に入った彼女は、野生化して山奥に逃げていこうとしはじめた。

 「待って!それなら…」

 遊園地なら良いかと、おさそい直し。

 なのに、やっぱりダメ。

 ネコ少女の動きは、早い。

 せっかくいった遊園地のアトラクションのすきまから、すっとどこかに抜けて走っていったら…。

 もう、どこにいったのかわからない。

 恋のスピードが、早すぎましたね。

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