第4話
――恒例の放課後――
「委員長――!!」
「今日はなんなのよ!」
「これ穿いてくれ!」
「これ……って、タイツじゃない?」
「そっ! ミニスカに黒タイツ。昔は寒い日はこれ着てたらしいじゃん」
「バカみたい! ならスカートやめてスラックスでもジャージでも着ればいいのに」
「分かってないなー 委員長は。ミニスカタイツが萌えるんじゃないか」
「はあ? キモいんですけど?」
「じゃあさ、今は夏だから下に水着、着てくれよ?」
「はぁ?」
「昔は着替えるのが面倒だから、家から水着を着てその上に制服を着てきたって、どこかで聞いたぞ?」
「初耳なんてすけど?」
「下が水着ならさっ、スカートから見えても気にならないじゃん!」
「あんた、なに考えてんの!?」
「いくら見えても大丈夫。見放題!!」
「バカ! しね!」
「しかも水着はスクール水着な!」
「この変態野郎!!」
そして……
「委員長――!!」
「もういい加減にしなさいよ! いつまで続けるのよ!」
「え? 卒業するまでじゃ?」
「そんなわけないでしょ!!」
「今日はさ……」
「いい加減にしなさいよ! 毎回毎回! あなたのお願いばっか聞かされて!」
「悪い! でも今回だけは! 絶対頼む! このとおり!」
「なんなのよ!」
いつも以上にご立腹の委員長。
まあ、それもしょうがない。
俺ばっか、エッチなお願いをしてきたんだから。
今までだいぶ堪能したから、たまには委員長の話も聞いてやらないとな。
だが、その前にどうしても、やって欲しいことがあってだな……
「ちょっと、正座してくれる?」
「正座? それくらいなら、かまわないけど?」
姿勢よく、ちょこんと座る委員長。
「一度でいいから、ミニスカで……
膝枕!!
してもらいたかったんだよな〜」
「はあ!?」
委員長の顔が一気に険しくなる。
「そんなの無理に決まってるでしょうが! 触れるのは禁止!」
「そこをなんとか! 今までもこうして……」
「無理に決まってるでしょ!」
「膝の上に頭のせるだけじゃん?」
「それがキモいって言ってるの!」
「仰向けじゃなくて、うつ伏せでも横向きでもいいから」
「この馬鹿! 変態! もう帰る!」
顔を怒りで真っ赤にした委員長は、勢いよく立ち上がる。
「委員長――! 待ってくれ!」
「うるさい!」
「……いいのか? その格好で帰るのか?」
「ぁっ!」
と、我に返った委員長は、そのはずみで床に置いてあったカバンに足をつまずいて……
「きゃぁっ!!」
可愛らしい声と共に、盛大に前のめりに倒れ込んでしまった!!
「委員長! 大丈夫……か……あ?」
床にうつ伏せ状態で倒れ込んでしまった委員長。
そのはずみで……
スカートが捲れ上がってしまい……
白い布で覆われた……
肉付きの良い……
まんまるのお尻が……
「痛たたた……」
体勢を立て直す委員長。
そして俺もあわてて視線を外し、散乱した委員長のカバンの中身を拾い集める。
いいもの見れた……
写真撮っておけばよかった。
ばれたら確実に殴られるので、見てないふりして飛び散った教科書や文房具を回収する。
かわいかったな――
倒れた姿も、痛がる素振りも。
なによりスカートの中身が……
……ん?
拾い集めた本の中の一冊。
明らかに教科書と違う?
雑誌か何か?
それに違和感を覚えた俺は、その本の表紙を確認する。
そこには……
黒光りした全身ムキムキの筋肉に包まれた、笑顔のゴッツイ男が表紙を飾る雑誌?
その表紙のタイトルが、
『月刊 ザ・キング・オブ・
……え?
なにこれ?
しかも似たような表紙の雑誌が、こっちにも?
『別冊 筋肉戦士 ビルダム
……
…………
ん~~~~っとこれは…………
ハッ!?
俺を突き刺すような、鋭い視線!?
見上げると、俺の前に仁王立ちの委員長が、
まるで本物の鬼が俺を見下ろしているかのように!
ものすごい形相で俺を睨みつけている!
「え〜っと、そのぉ〜 委員長?」
「あ な た。 見 た わ ね!!」
「あ~~すみません、見えてますよ、パンツ」
「そんなものは、どうでもいいのよ!!」
「そ、そんなものって……」
「どうやらあなたは、私の趣味を覗いてしまったようね」
「えーっと、なんのことやら?」
「そうよ! 私は男性の筋肉に、異常なまでに性的な執着を持っているのよ!」
「そ、そうですか。俺には関係ないんで、じゃあ、お先に失礼します」
「ちょっと待ちなさい!」
危険を察知し、この場から逃げ出そうとした俺の肩を……
くっ、痛、なんて力だ!
ものすごい力で腕を掴まれる!?
「あなた、実は着痩せするタイプでしょ?」
「さ、さあ?」
「本当はいい体、してるわよねぇ」
不気味な笑みを浮かべながら、顔を近づけてくる委員長。
さっきまでの顔つきと全然違う。
大好物の獲物を目の前にした肉食獣のような!
こんな委員長、今まで見たことない!!
「そんなことないっす。俺、ガリガリのヒョロヒョロです」
「実はねぇ、前から気になっていたのよ、あなたの体。ずーっと目を付けてたのよ」
「嘘だろ、おい!」
「さあ、早く脱ぎなさい!」
「な、なに言い出してんだよ? 委員長、落ちつけって。俺が悪かったって!」
「これを着なさい!」
興奮する委員長が取り出した物?
黒いハンカチ?
……よりも布の面積の少ない?
「水着!?」
しかも競泳選手が穿くようなブーメランパンツ!
「違うわよ、ビルドパンツよ。ボディビルダーが穿くものよ」
「こんな恥ずかしいもん、穿けるわけないだろ!」
こんなもの!
面積が狭すぎて、色々とはみ出てしまうわ!
「私にさんざん恥ずかしい思いをさせておいて、自分は着ないですって! どういうことよ!」
「そ、それは……」
「スカートを穿くかわりに、私の言うこと聞くって言ったでしょうが!!」
「あ〜っと」
「私はね、ぶ厚い胸板の大胸筋と、極太の上腕二頭筋の腕に挟まれて腕枕してもらうのが夢なのよ!」
「へーそーですかあ――」
「ほら! このミニスカで膝枕してあげるから、あんたは今から体を鍛えなさい!」
「え、遠慮しておきます……」
「とりあえず上着を脱ぎなさい! 早く!」
「い、委員長! や、やめてくれー! 脱がさないでくれー!」
あぁ……
どうやら、俺と委員長の秘密の放課後は、
もうしばらく、続くのかもしれない。
制服でスカートを穿く文化が廃れたこの国で、もしも委員長がスカートに着替えたら ~俺と委員長の秘密の放課後~ 夜狩仁志 @yokari-hitosi
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