第3話

 ――次の日の放課後――


「じゃあさ、委員長。その格好で椅子に座ってみて」

「椅子に? こう?」


 おおー!


 スカートで座ると、足を綺麗に並べないと股が見えてしまう。

 育ちのいい委員長、足がぴちっと閉じて鉄壁の防御を誇っている。

 仮に足を組んだりした時には……

 それはそれで見てみたい!


 当時、教室の女子ってみんなこんな感じで座ってたんだよな。

 白い肌の足がチラチラ目に入って授業どころじゃない。


 これで、もし床に消しゴムでも落として拾おうとしたら……


「ああ、しまったー 消しゴム、落ちてしまったあー」


 と、拾うふりをして、委員長の足を至近距離で!


 いやー 実にいい眺めだ。


「なにしてんのよ!!」


 痛てっ!

 おもいっきり顔を蹴ってきた!



 ――ある日の放課後――


「委員長! 今日は体育座りしてみてよ」

「はあ? なんでよ?」


「だって集会とか体育館で座ったりするだろ? 昔の子はスカートでやってたんだろ?」

「……しょうがないわね」


 委員長はゆっくりしゃがんで、床にお尻を付け足を伸ばそうとするも……


「あれ? ちょっ、これ?」


 座ったまま放っておくと極限までスカートがずれ落ちるので、ほとんど丸見えになってしまう。

 ので、必死に抑える委員長。


 いい!!


 すごくいい!!


 その必死さ!

 付け根まで見えそうになる太もも!


 そして、その様子を正面から見れば……


「正面に回るな!」

「だって朝礼とかだと、校長とか前に立つだろ?」


「あなたは先生じゃないでしょうが!!」



 ――別の日の放課後――


「委員長、靴下、履き替えない?」

「はあ? なんでよ?」


「白のソックスもいいんだけどさー 紺も似合うと思うんだよなー」

「はぁ……」


「それとさ、ニーハイソックスっての? この図鑑の写真の子が履いてるの? これも可愛いと思うんだよなー」

「私は着せ替え人形じゃないんですけど?」


「とりあえず今日は俺が用意した、紺のソックスで」

「この変態がっ!」


 履き替えるために委員長が左足を上げる。それにともない、太ももも持ち上がり……

 スカートがずれる。


 うん。いい眺めだ!


 そして靴下を脱ぎ取ると、ちっちゃくかわいいらしい5本の指が並んだ足があらわとなる。


「へー 可愛い子って、足先も可愛いんだな」

「うるさい! 黙れ!」


 しかしこれ……

 下から見上げる光景は、絶景だよな?


「なにしゃがんでんのよ!」


 いてぇー!

 そのまま持ち上げた足で、思いっきり顔を踏まれた!



 ――他の日の放課後――


「委員長、今日は走ってみてよ」

「はあ?」


「遅刻ギリギリで廊下を走ってるって設定で」

「廊下は走ってはいけないの! っていうか、こんな格好で廊下に出れるわけないでしょうが!」


「でもさー 昔はこれで普通に登下校してたんだろ? もちろん遅刻しそうなときは走って」

「知らないわよ、昔のことなんか!」


「じゃあさ、その場でいいから、走ってるふりしてみてよ」

「はあ?」


 しぶしぶ、その場でゆっくりと足を動かし走るふりをする委員長。


「これ、ちょっと、難しくない?」


 足を持ち上げるたびに、ふわりと舞い上がるスカート。

 これがまた重力の悪戯なのか、中身が見えそうで見えない。


 すごいな!

 こんな姿が街中で見えてたんだろ?

 これじゃあ、女子は遅刻できないな!


 これ、向かって来る人から、どういうふうに見えるんだ?

 しかも走ってるんだろ?  風でスカートがめくられたり……


「ねえ、なに持ってんの?」

「え? 下敷き」


「それは見れば分かるのよ」

「これで風を……」


「そこまでしなくてもいいのよ!」

「ここはリアルに……」


「なんであなたは! いちいち正面に回るのよ!」


 グフッ!


 持ち上げた足で、そのまま腹に蹴りを入れられてしまう……



 ――またある日の放課後――


「委員長、今日は階段に上ってよ」

「そんなところ行かないわよ!」


「昔は……」

「今は違う! 知らない!」


「じゃあ、いいよ。かわりに、あの本棚の一番上の資料取ってみてよ」

「……とどかないんですけど?」


「この椅子に乗れば?」

「……」


「どうした、委員長?」

「こんな格好で、登れるわけないでしょ!」


「なんで?」

「なんで……って、スカートの……中が……」


「昔の人は……」

「あ――!! うるさいわね!! 登ればいいんでしょ、登れば!!」


 怒鳴りながらも椅子に上ってくれる委員長。

 お尻のスカートを両手で押さえながら……


 うお――!!


 この位置から、中身が見えそうで見えない絶妙な領域!!

 ちょっとでも油断すれば、お尻が見えてしまう!

 必死に手で押さえる委員長だが……


 動きが止まってしまう。


 そう。両手で押さえていると、本棚の資料が取れないのだ。

 それを取るには両手を使う必要がある。


 ……ということは、お尻を隠す布切れを放棄しなくてはいけない。


「委員長、どうしたんだ?」

「……」


「手、とどくだろ?」

「…………」


「ほら、早く!」

「うっさいわね!!」


 うわぁ! 危なっ!!

 本、ぶん投げてきた!!



 ――とある日の放課後――


「委員長って、自転車通学?」

「違うわよ、電車よ」


「そっか。じゃあ、俺のチャリでいいから乗ってくれよ」

「なんでよ?」


「だって昔はスカートで乗ってたんだぜ? 委員長もさ……」

「こ、こんな格好で乗れるわけないでしょ!」


「じゃあどうやって通学してたんだよ?」

「知らないわよ! そもそもこんな格好で自転車はおろか、外にすら出れないわよ!」


「しょうがねーな。今からサドル持ってくるから、ここで乗ってみて……」

「うるさい! そのまま乗って帰れ! この馬鹿!!」


「じゃあ、俺をサドルだと思っ……」


 グフオッ!!


 い、委員長の……

 右ストレートが……

 俺の、みぞおちにぃ……

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