第2話


 ――次の日の放課後――


 朝から委員長に声をかけても素っ気ない反応しかしてくれない。しかも図鑑のことを切り出そうとしても、はぐらかしてすぐどこかに行ってしまう。


 あれ、高かったんだから、返してくれよ。


 諦めかけていた放課後、俺が帰ろうとしていたところに……


「ねぇ、ちょっと来てくれるかしら?」

「え?」


 いつものように不機嫌そうな委員長が、わざわざ俺のところまでやって来た?


 呼び出された俺は、わけの分からないまま、委員長の後を追う。


「いったいどこまで行くんだよ?」

「いいから来なさい」


 いったい何をしようというのか?

 疑問に思いながら、委員長の後ろを付いていく。


 そして辿り着いた先は……


 資料準備室?


 委員長は手際よく鍵を開けると、資料室の中へと入って行く。

 俺もそれに続く。


 資料室の中は様々な資料やプリントなどで埋め尽くされていた。

 普段人の出入りは少ないようで、ホコリが積もり、古い紙の匂いで充満していた。


「いったい何の用事だよ、こんなところに呼び出しておいて」


「これ、返すわ」

「おお、俺の宝物!」


 俺の図鑑!

 やっと返してくれた。


「それと、これ……」


 と言って、歯切れの悪い委員長が、何かを取り出した?


 これって……


「スカート? もしかしてスカート……なのか!?」


「そうよ、かつて女子の制服だったものよ」

「すげー! 本物だー!」


 青いチェック柄のプリーツスカート。

 図鑑に載ってたのと同じ!


 触ってみると……

 生地の質感、作りもしっかりしている。

 布が筒状になって、向こう側が覗ける。

 コスプレ用の衣装ではなく、間違いなく本物だ!!


「よくこんなの付けてたよな。油断したら見えちゃうじゃねえか」


 当時の女子ってヤバかったんだな。


「委員長、これどうしたんだ?」

「母親が学生の時に使ってたものよ。たまたま家にあったから」


「現物! 使用済み!」

「やめなさい、その言い方!」


「こんなの腰に巻いて歩いてたなんて、ヤベーな」

「あんまり母親を、変人みたいに言わないでくれる?」


「昔はこれが普通だったんだろ? 日常的にこれで通学して、授業受けてたんだよな?」

「そうね」


 平成の時代は良かったんだなー

 そんな学生時代、俺も過ごしたかったぜ。


 それはそうと……


「きっと委員長のお母さんなら、美少女だったんだろ?」

「はあ?」


 委員長の眉間のシワが、さらに1本増える。


「見てみたかったな〜 当時の美少女女子高生……」

「……」


「見たいな〜 これを実際に穿いてるところ」

「なによあんた! その目は!?」


「せっかくだから着てみてよ」

「嫌よ! なんで私が!」


「俺はスカートが見たいんじゃなくて、スカートをはいた可愛い女の子が見たいんだよ」

「さっきから、可愛いだとか美少女とか思ってもないことを言って。知らないわよそんなこと!」


「お願いします。一度でいいんで!」

「なんでそんなことしなくちゃ、いけないのよ!」


「そのために俺をここまで呼んだんじゃないのか?」

「勘違いしないでよ! これを見せるかわりに頼みごとが……」


「後生です! お願いします! ここまできて、本物が見れないなんて!」


 俺は必死で土下座して、委員長に切願した。

 この機会を逃したら、おそらく俺は一生女子高生のスカート姿を見ることができなくなってしまう。

 このチャンス、逃がすわけには……


「そんなことしたって、私は……」

「スカート穿けば可愛いよっ!」


「男女差別よ!」

「なんでだよ。女の子らしさって大事だと思うけど? 男は男らしさ、女は女らしさってのがあると思うけど!?」


「なによ……らしさって!?」

「女の子の足ってキレイなんだよ。それを周りに見せて何が悪いんだよ」


 委員長の顔が困惑で歪んできているのが分かった。

 もしかて委員長、悩んでいるのか?

 これを着たいけど、恥ずかしい、みたいな。


「もうちょっと委員長は、可愛らしい格好したらいいんだよ」

「どういうことよ!」


「これは差別じゃない。優れたものを褒めて、なにが悪いんだよ。男だって上半身脱いだりするだろ?」

「…………」


 反論してこない。

 そしてなにかの葛藤と戦いながら、その小さな唇から1つの答えを解き放つ。


「……確かに、それは一理あるかも」

「だろ?  委員長は自信もって、こういった格好しなきゃいけないんだよ」


 必死に抵抗を見せていた委員長が、俺の懸命の説得により心が揺らいできたのか、大人しくなってきた。


 もう一息、もう一押し!

 これはいける!!

 委員長を褒め殺せば、落とせる!


 きっと日頃から委員長という役割を演じていて、本当は年相応に可愛いいものが好きな女の子なのだ。

 お洒落すれば綺麗になる素質はあるのに。実にもったいない。スカートをはけるなんて、それこそ若いうちの学生時代くらいだ。


 これはもう、委員長のミニスカ姿を拝むまでは帰れない。二度とこんな機会はこない。


「なんか、いいように言われてるように感じるんですけど?」

「そんなことないって!」

「まあ……いいわ。その代わりにあなたにも……」



「よっしゃ―――!!」



 思わずガッツポーズし、喜びの雄叫び!



「ちょっと静かにしなさいって!」


「早く早く!」

「落ち着きなさい! 着替えるから、いったん外に出てなさい!」


 俺は高鳴る胸を抑えながら外に出る。


 いや〜

 まさか委員長のスカート姿を見れるなんて!

 俺はなんて幸運なんだ!

 生きててよかった!


 俺は込み上げてくる興奮を抑えつつ、廊下で待つ。


 そして待つこと数分……


「いいわよ、入って来て」


 中から委員長の声がして、俺は勢いよくドアを開く。


 そこには……


 うお――――!!


 スカート姿の委員長だ――――!!


 あの勝ち気な委員長が、少し恥ずかしそうに体をくねらせて立っている!!


 スカートの裾からスラッと伸びた生足!

 薄いピンク色の、張りのある艶々な肌が露呈された!


 今までベールに包まれていた未知の領域を、俺はついに目にしたのだ!


 女の子の足って、こんなに綺麗だったなんて!

 グラビア写真とかで見るよりも、実物はもっといい!


 というよりも、委員長のスタイルが良すぎるのだ。日頃、長ズボンに隠された足だが、こんなに綺麗だったなんて。


 長さも太さも理想的!

 ふくらはぎの柔らかい膨らみが美味しそう!

 腰からお尻、太ももへと流れるような曲線が美しすぎる!


 男の俺とはまったく違う体に、驚きと感動を感じてしまう!


 あぁ……

 今日はなんて素晴らしい日なんだ……


 そして、いつも真面目で勝気な委員長が、少し恥ずかし気にうつむき加減で肩をすぼめている様子が……


 これがまた、とてもいい!!


 スカートの裾を必死に抑えて、足を隠そうとしている仕草が……


 たまらなく、かわいい!!


「そ、そんなに見るんじゃないわよ!」

「かわいい! 似合ってるよ、委員長!」

「う、うるさい!!」


 う~~ん、でも、ちょっと物足りないというのか、なにかが違うんだよな……


「すごくいい! いいんだけど……」

「な、なによ!」


「図鑑の写真と違うっていうか……」

「はあ? 同じでしょ? このスカートだって本物の……」


「そう!  そのスカート!  もっと短い!」

「はあ!?」


「もっと短く!」

「これ以上、できるわけないでしょ!」


「膝上……」

「こら!  触るんじゃないわよ! 触るのは禁止!」


「じゃあ写真を撮って検証を……」

「写真もNG!

 そんなジロジロ見るんじゃないわよ!

 もう終わり!!」


「えー もう終わりなのかよ~」

「今日は終わり! 今度はあなたも、私の言う事、聞きなさいよ!?」

「へいへい」


 そっか、またやってくれるんだー


 こうして俺は定期的に放課後、ミニスカを楽しむのだった。


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