ソシャゲ世界のガチャ管理人に転生した俺〜主人公に腐ったポーションやら錆びた剣を引かせ続けて弱体化させていき、取り巻きヒロインにだけ忖度する話〜

微風

第1話 異世界転生


日本で一大ブームを巻き起こしていたスマホ専用のソーシャルゲーム『七賢人セブンソーサリー


『七賢人』がどういったゲームかを簡単に噛み砕いて説明すると、主人公であるミツルギ・・・・が剣や魔術、そしてアイテムなどを駆使しながらラスボスである魔術王の討伐に向かうストーリーとなっており、道中で仲間にできる個性的なヒロイン達と切磋琢磨しながら己の力を磨きつつ冒険を進めていくといった、ファンタジーとハクスラ要素を取り入れたオープンワールド風のゲームである。


CランクからSSSランクまで冒険者ランクが存在しており一定の戦闘力を超えることでランクが上昇していく。ランクを上げることで、より高難易度のフィールドへと向かうことができたり、受注できる依頼が増えたりと、攻略が有利になるのだ。


反面、その逆もまた然りで戦闘力の低下やゲームオーバーとなることでランクが低下することもある。準備をしっかり整えてから出発することが重要なのだ。


かくいう俺もこのゲームを極めているとは言い難いが、それなりにプレイ時間も長くベテラン冒険者と言えるだろう。しかしながら七賢人のトップに君臨するラスボスの魔術王は討伐していないし、それどころか姿形すら見たこともない。まあ運営の更新待ちである。


よくあるソシャゲあるあるだが、既にインフレが進みすぎていて着いていけないユーザーが数多く存在している。ソシャゲである以上、ガチャ課金をしたプレイヤーには爽快感がないと人気が出ないのは分かるが、金を積みさえすれば現時点での最強クラスの主人公が作れてしまう、言わば札束の殴り合いと化している現状であることは否めないのだ。


基本ソロゲーでPvP要素は今の所存在しないのでそこまで炎上することはないが、掲示板や攻略サイト、動画投稿サイトのコメントを見るに、重課金連中からの煽りは日に日に増すばかりでソシャゲ内での格差社会は広がる一方だった。



「運営ちゃんと調整しろよな」



不平不満が募りつつあるセブンソーサリーだが、このゲームにはちゃんと無課金でも遊べるようなシステムになっている。どういうことかと言うと、やった分だけ強くなる。つまりは廃人プレイをすることで、二十四時間寝る間も惜しんで画面と睨めっこしていれば無料ガチャ・・・・・だけで廃課金プレイヤーに追いつける可能性があるのだ。



「まあそんなことが可能なのはニートだけだがな」



その無料ガチャは一日一回、ログインする度に強制的に無料ガチャ画面へと移行して、冒険に必要になってくる様々なアイテムや武器がランダムで手に入る、よくあるソシャゲのシステムだ。かなり低確率ではあるものの、最高ランクのUR武具なんかも手に入ったりするわけで、入手の確率を少しでも高めるために毎日ログインすることが重要になってくる。


ちなみに俺は重課金、いや廃課金といっても過言ではない程度には金を費やしている側の人間だ。半端じゃないくらい運営に貢いできたって自負すらあるから感謝してほしいくらいだ。


……なのに、そりゃねーだろ運営ちゃん



「転生したのが主人公のミツルギじゃなくて、管理人・・・なんて酷いだろ、金返せよマジで。たぶん運営関係ないけど!」



そう、現実世界の俺は死んだのだ。


俺はしがないサラリーマンの男で、大企業とまではいかないが知名度も高めな企業に勤めていた。毎月の給料は生活費、そして余った分をほぼソシャゲに注ぎ込んできたおかげで貯金はゼロ、気付いた時にはもう年齢は三十路のおっさん、結婚歴なし。



「この年で独身だとあまり物って言われるんだぜ。悲しすぎるだろ」



そんで死んだ理由がこれまた下らなくもありふれた交通事故死。残業で夜遅くに帰り道を歩いていたら後ろから大型トラックに追突されて即死、痛みすら感じなかったし、一瞬で目の前真っ白になったからな。多分ぐちゃぐちゃのぐちゃだったんだろうよ……おふくろの悲しんでる顔が目に浮かぶぜ。トラック運転手を呪い殺してやる、なんて思う暇すら与えてもらえなかった、残念である。


でも何故か知らないけど意識が徐々に覚醒してきた。最初は音が聞こえた。機械音みたいなガチャガチャした音で工場かなんかにいるんじゃないかって思いながら、次は目をゆっくりと開いてみた。訳のわからない広い部屋の中にいて、見たこともない機械だらけの謎のワンルーム個室の中にいた。コンピュータが目の前にたくさんあって上の方には巨大なモニターが複数ある。



「何この異様な状況。てか、どこなのここ」



しばらく静かに考えていた。


念のため記憶を無理矢理ほじくり返して見たんだけどさ、やっぱりトラックに轢き殺された記憶はしっかりと残っていて生きていることが不思議でならなかったわけだ。それにもし辛うじて生きているなら間違いなく病院のベッドに横たわっているはずだし、無傷で済んでるはずがない。



「傷一つない上にツルッツルなんだが。なんなら前より肌綺麗だし若返ってない? むしろ完全に別人だろこれ」



俺は小説とかもたまに読んでいたから本当は薄々気付いてしまっていた。鏡で自分の姿を確認するまでもない。ここは間違いなく現実世界ではないどこか別の世界、異世界に転生してきたのだと……。

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