断章 数年前のある男の断片①
玉座に座るは我が王、エミール王。
エミール王から命じられしはある地域の平定。
以前、ポポロマーラ大戦の折、魔王城へ行く道中の森と砂漠が広がっていた地域だった。
現状、我が国は隣国のカラマールと戦をしており、その対策が急務であることは何よりもエミール王は知っているはず。ただ、一介の騎士が王の命令に不遜にも疑惑を持つことは許されないため命を請けた。
しかし、どうしても今回のエミール王の命令は不可思議だった。その土地は少なくともすぐに平定しろと言うわけでなく他国と同様に十分に偵察をした上で事を起こせということらしい。少なくとも数年単位かけてもいいと言うことだ。王からはくれぐれも気をつけて平定を行うことと失敗は許されないと言う厳命だけを仰せつかった。そのため、部下も実行に移る至るまでは10名のみの少数精鋭で行うことを前提に任に就いた。
そして、その土地を数ヶ月偵察したことで分かったことは未だに他国からも手をつけられていない未開に近い土地。周りの害獣が強いため魔王城進行時以降は害獣退治に時間がかかると判断して後回しにされていた。そのため土地は平定するというよりは害獣討伐の遠征となるだろうと。しかし、偵察をしてる中で魔術の後と人の死体を見たとの報告が来た。これは放浪者ないしは冒険者たちが害獣と戦って起きた跡ではないので問題ないと。私も当初はそう思った。ただ、嫌な予感がした。これは数十年、私を騎士長の地位として確固たるものとしたスキルの一つでもある第六感だ。人の中にはこれを慎重がすぎると嘲笑する者もいるがこれのおかげで救われた回数は数えきれない。
そのため、現地に行かないと分からないこともあると判断し、数日をかけて彼の地に赴き、改めてこのスキルに助けられた。
その跡地にあったそれは魔術としては人間の範囲を越え、害獣を殺すにも放浪者を殺すにも十分すぎる魔法というものを行使した残滓だった。
偵察兵の質を上げなければな。と兵士の質の低さに辟易するのも一瞬に私は彼の地を数名の部下と一緒に周ることを決めたのだった。
その結果、分かったことは魔法の系統はそこまで多くはなく、基本的な火、土、水、雷だけで構成されていること。また、それを扱える人物もそこまで多くなく、5〜8名ほど。人数がわかるのは魔法の残滓には人の香りと同じようなものがあるからである。ただ、似たものもあるため推察としてこの程度だと絞った。
そして、魔法を扱える種族も限られる。
これは王が私に命じられたのも分かる。
そして、慎重に対応しなければいけないことも。
その中の1人は圧倒的に我が国でも対処できるものが少ない。
せめてこの1人の情報は兵を動かす前に知っておきたい。
騎士でありながら傭兵に頼むのは憚れるが王の兵を無駄に死地に追い込むのも嫌なため、暗殺者を5人雇った。
偵察を依頼してから数日後、帰ってきたのは1人だけだった。依頼内容としては情報収集のみで良いと言ったのだが。更に帰ってきた1人も両腕は既に使えず、足も燃え滓に近い状態だった。
そして、生き絶えた。
せめてもの感謝として依頼料は元々より高くし残された家族に渡せるよう部下に頼んだ。
死にながらも持ってきた情報は有益だった。今回の地域にいた要注意人物は元々認識していた魔法使い数名に加えて剣士が10名いた。そして最も警戒しなければいけない1人が元魔王城の役職付きだったと。そして、死にかけていると言うことも。
あと数年の命ということだった。これはアサシンの中に特殊な目を保つものが1人いたので間違いない。
余命が少ないと聞いた私は感知系の魔術に長けたものを王都より呼び、その土地で異変があれば王都まで伝来を寄越すように伝えた。
そして、呼び寄せた魔術師をそこに置いて一度王都へ戻った。この数年後に起こるであろう平定の準備のため軍備を整えるため、また自分自身の成長を必要とするためである。
中間報告を何度か王に行ったがどの情報を伝えてもエミール王は其方に全てを任せると言うのみだった。
まあ、仕方がないラオコーンとの戦も長引いており精神をすり減らしておられるのだと考えていた。
そこからは害獣討伐のプロである冒険者も雇い兵の育成に努めた。全てはあの魔法使いたちを制して土地を平定するためだ。優秀な部下は簡単には育たない。信頼する部下も。そのために研鑽を積ませる。
それからあっという間に3年が経ち、そろそろかとスキルが警鐘を鳴らした時に彼の地から伝令が届いたのだ。
ごまんとある物語の中で最も普遍的でハッピーエンドに至りたい物語 空想類 @ShiranuiGin79
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ごまんとある物語の中で最も普遍的でハッピーエンドに至りたい物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます