禁域への小旅行
沼モナカ
第1話
日課の散歩をしていた時に目を疑った。
以前は山道に「鳥獣保護区」の看板と立ち入り禁止のロープが張られていたが、痕跡すら無いのである。
化生がここ通って良くなったよー、と言ってくれた。せっかくなので足を踏み入れてみる。
ロープがあった箇所の頭上に大きな蜘蛛の巣が張ってあった。
魔の結界の姿形その物であり、これにより、以前まで私の目は歪められていたそうだ。
何十にも貼られた蜘蛛の巣を潜ると、人の往来の気配が微塵も無い、死んだ道が続いていた。
周りの木々から姿の見えぬ木霊達が、化生の世界へようこそー、今日はその時だね。
クモの巣くぐって クサり道
宮崎駿氏の「となりのトトロ」のOPを木霊達が歌ってくれた。
彼らの話では女の子が化生へ会いに禁足の道を通る歌なのだそうだ。
木々が一部開いた箇所からゴルフ場が見え、客達が遊びに勤しんでいる。
いけない事をしている感覚が全身をわななかせ、心の内でニンマリした。
数歩進めると左側から威圧感を感じた。古ぼけた小さい祠が、緊張の空気を放っていた。
昔の武将が鎮守されてるらしく、何等かの祟りを買った為にこの場所は人が来なくなり、木霊達も住み着いているという。
タタラバ、と彼らは呼んで居る。祟り場を意味し、時代と共に鍛冶場を意味する様になったと聞いた。
鍛冶は加持祈祷から来ている神事であり、現代でも鍛冶屋は少し特別感を感じる事の理由だそう。
タタラバは怖い。しかし、化生達に認められると太古の自然に還ったような清々しさを感じる。
山道を超えて、反対側へと抜けた。町中を回り道し、家路へと赴こう。
※魔の結界は土蜘蛛が張る事が多いそうだ。蜘蛛は益虫というが、易者の虫であり、易虫が正しいそうである。
禁域への小旅行 沼モナカ @monacaoh
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます