歪なワルツ

朱田空央

歪なワルツ

 ある日のことだ。

 俺は趣味の登山をしていたんだ。今回の山はジャングルだった。

 中腹ぐらいに差し掛かった頃かな。洋館が現れたんだ。

「こんな山奥に洋館……?」

 不気味に思いつつも、中に入ろうと思った。ノックをする。

「ごめんください!」

 返事はない。玄関のドアノブを引くと、開いていた。

「お邪魔しますよっと」

 興味本位だった。人がいる気配はない。奥へと進むと、大広間だろう。広い部屋が現れた。

 肖像画には女の子の絵が描かれていた。黒髪の東洋美人の出で立ち。しばし感心して、それを見ていると。

「うふふふふ」

「うわあ!?」

 笑った。肖像画が。肖像画が!?

 俺は尻もちをついた。すると、隣の部屋からピアノのワルツが聞こえ始めた。

 不協和音。そして隣の部屋には……誰もいない。

 俺は耳を抑えながら洋館を後にした。

 あのワルツの意味が何だったのか、もうわからない。ただ、肖像画に描かれた女の子の絵が、終始不気味な笑いを浮かべていたのは印象深かった。

 リック・エンダルソン・著

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歪なワルツ 朱田空央 @sorao_akada

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