第6話

 ぼくは弁護士が手配して飛行機でまずスイスに行き、そこから鉄道で、グァテコンテルナーゼ王国に向かった。


 駅を出ると、空気が新鮮すぎたのか、冷たい空気を吸い込んだ時みたいに呼吸ができなくなり、頭が痛くなって、しばらくしゃがんでいた。

 でも、それはすぐに治って、うそみたいに気分がよくなった。


 ぼくはUberで町のホテルへ行き、荷物を預けた。そこで自転車をレンタルし、GPSを使って、祖父が描いてくれた地図にあるブロッコリーみたいな木のところにやって来た。2本なのに、1本に見える木。


 おじいちゃん、ぼくは来たよ。

 スマホで、日にちを確認する。 

 8月4日の午後に行ってくれと言われていたからジャストだ。この日に、この場所に来られてよかった。


 ぼくは折り畳みスコップを取り出して、木の間を掘ると、長方形のアルミ缶が出てきた。


 その缶をかちっと開くと、3枚の紙が出てきた。2枚は古く、1枚は新しい。

 これ、見てもいいのかな。

 おじいちゃん、見ますよ。


 古いほうの2枚には、

「Love, Christine」、「Love, Taro」と書かれていた。


新しいほうを開いてみた。

「Are you having a good life? Christine」


ここまで見たら、祖父が残したノートを見ないわけにはいかないじゃないか。

「Did you have a good life? Taro」


ふたりとも同じことを書いている。

こういうの、相思相愛というのだろうとぼくは笑った。

いいね、おじいちゃんには愛すると出会えて。ぼくはそういうのとは無縁だけどね。


道の向うから、ひとりの少女がこちらに向かっているのが見えた。ぼくのほうを見て、さかんに手を振っている。

えっ。あの子は誰なのだろうか。



          了


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不良少年とプリンセス、半日だけの恋 九月ソナタ @sepstar

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