サンタのトナカイ屋
沼モナカ
第1話
窓の外には雪がしんしんと降っている。地面に積み重なっては真白い絨毯を広げてやがる。
そんな様子をオイラは暖かい部屋の中で温かい紅茶を飲みながら眺めている。体をぽっかぽかなのに、窓の外を見るとつい寒い、寒いと口走りたくなるのはなんでだろうな。
今日はクリスマス、そんでもって雪が降り積もるホワイトクリスマスの夜ときたもんだ。もう成人してるけども、思わずうきうきしちまう。
今頃は、世界中のサンタクロースが子供達のためにあっちへ行き、こっちへ行きと元気に活動してるだろうさ。おいらは応援してるぜい。
ん?なんでおいらがサンタ達の事を応援しているかって?そうさな、オイラはサンタクロースとは切っても切れない関係なのさ。
おっと、オイラの仕事を紹介するのを忘れていたぜ。何を隠そう、オイラの仕事はズバリ、トナカイのレンタル業さ。
最近は都市の整備やら何やらで現代のサンタクロース達はトナカイを飼育する場所がなかなかなくてねえ。そこで、オイラの様なレンタル屋が誕生したわけさ。
クリスマスになるとプレゼントを持って専用の服に着替えてオイラの所にやって来る。そしてオイラはこの時を待ちわびていた元気なトナカイを渡して、クリスマスの夜空に旅立たせる、てわけ。
今頃は、この雪の降る夜空を元気に駆け回っていることだろうさ。
おや?誰かが家の扉を叩いているな。はて、こんな夜更けに誰だろう。
暖かい部屋を出て、寒い廊下を渡って、扉を開けた。
そこには・・・プレゼントが入った袋を担いだ恰幅の良い絵に描いたようなサンタクロースの姿。
「あれえ?旦那じゃないですかい。どうしたんですかい?まだお仕事終わっていないでしょう?」
旦那は、オイラの客の中でも一番ひいきにしてくださっているお人だ。仕事のみならず、オフの時でも家族ぐるみで付き合ってくれるんだ。
そんな旦那が服装によく似合う、見ていてとても気持ちの良い笑顔で答える。
「いやはや、私としたことがうっかりしていたよ。君にプレゼントを渡すのを忘れていた。」
「へ?オイラにですかい?オイラはもうプレゼントを貰うような歳でもないんですがねえ。」
「私の娘からだよ。君に是非渡してくれとさ。」
「あ。」
なんと。旦那のお嬢さんからですかい。旦那の家族のなかでも特にオイラによくしてくださる。独り身のオイラにゃ本当にありがたいお人さ。
「・・・えへへ。」
おや。
「えへへへへ。」
何故か笑みがこぼれちまう。
「ふふ。君の様子を伝えれば娘も喜ぶだろうよ。」
「そりゃあ、旦那。これに喜ばなきゃ罰が当たりまさあ。」
旦那は踵を返して次の家へと向かう。その先にはオイラが世話しているトナカイが待っている。
オイラも扉を閉めて、部屋に戻る。さあて、これから頑張らなきゃな。旦那達と仕事を終えて帰ってきたトナカイ達を労ってやらないとな。
今日はとっても幸せだあ。メリークリスマス!
サンタのトナカイ屋 沼モナカ @monacaoh
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