黒龍忌憚〜咎忍〜

龍月

第1話 黒龍一族

日本が未だ国の名前としてそう呼ばれて居ない程の古代より、その一族はこの国、日本に既に存在していた。

一族の名は黒龍衆、もっともその頃はその名ではでは呼ばれず、カラス、などと云う名で呼ばれて居た。

此処で問題なのがこの一族、少々変わった事を生業とする一族で在った。その生業とは、諸国の大名の依頼により、金品と引き換えに依頼された仕事を請け負う、仕事の内容はと言えば、依頼を受けた大名の政敵や敵国の人間の命を、人知れず頂戴する仕事、つまり、【暗殺】この一族は所謂忍術と云うものを駆使してそれらの仕事を為す者達、平たく言えば忍びの者、然しながら忍者とは呼ばれず、透っ破衆(すっぱしゅう)などと呼ばれた。どの大名とも主従関係を持たず、あくまでも依頼を受けてその仕事を遂行する、のみの関係で、他流派の所謂忍者と違い、お抱えの犬になる事を嫌った。

それが何故黒龍と呼ばれて居るのかと言えば、ちゃんとしかとした由来も有る。

戦国時代、年号だと慶長年間位で在ろうか、その頃一族によく仕事を依頼した大名、筑前田治見守貞信と云う者が雨の夜によく仕事を行うのに龍神に念じて雨乞いをする龍神信仰を行っている一族と云う処からそう呼び始めた。龍神は天候の神でも在る、故に龍神を信仰し、仕事の夜には雨を降らせて欲しいと念じるのだ。

雨の夜の闇から出でる龍神を信仰する者、黒龍一族、まぁ名前の由来なんてものはそんなに複雑なものでは無い。そして付け加えて言えば、この一族、忍びの仕事はするが世にいう忍びの者とは呼ばれず、その名を透破(すっぱ)の者というのが本来の呼び名で在る。

この物語はこの透破衆黒龍一族の里での出来事、そして時代は戦国時代後期、徳川と豊臣との戦いの最中で在る。

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