進化の果てにあるものは――
- ★★★ Excellent!!!
『蒼の牢獄』は、近未来SFとダンジョン探索が織りなす物語の中で、「進化」というテーマが絶妙に描かれています。主人公ヴィクターは前世の記憶を持ちながらも、少年としての脆さを感じさせる瞬間があり、その人間味が彼の強さをより引き立てます。特にダンジョンの描写は、ただの危険地帯ではなく、私たち読者を引き込む謎めいた生き物のような存在感を放っており、まるで月面基地が意志を持つかのようです。
研究者・石川直弥との出会いも印象的で、彼の技術とヴィクターの進化能力が融合するシーンは、「未来への可能性」が具現化する瞬間のように胸を打ちました。直弥が作り上げる武器は、単なる装備ではなく、ヴィクターの「意思の延長」として描かれるのも興味深い点です。
全体を通じて、復讐を原動力にしつつも、仲間との絆や希望が物語の奥行きを増していく展開は見事で、読了後も謎めいた月面基地の視線が脳裏に焼き付きます。ヴィクターが何を見つけ、何を選び取るのか、蒼の牢獄の果てが気になる一作です。