蒼の牢獄 ~ 近未来で強者転生した復讐者、月面基地から生まれたダンジョンで両親を失い世界の謎を追う~

こういち

プロローグ

蒼の牢獄 プロローグ

「奴隷を上手く管理するのには、自分達を奴隷と思わせないようにすればよい」


蒼の牢獄 プロローグ


2xxx年、人類は科学技術の進歩により宇宙への進出を加速させていた。


重力装置じゅうりょくそうちの開発とバイオ資源の発展によるエネルギー問題の突破口が、新たなフロンティアへの探求心をかきたてた。


月面基地開発の土地調査で、予想外の発見があった。


月の地下深くに、何者かが建造したと思われる基地が潜んでいたのだ。


この基地は、国連の承認もなく、どこの国も所有を主張しない謎に包まれた存在だった。


混乱や対立を避けるため、国連が調査団を結成し、派遣する事が決められる。


表面を簡易的に放射線調査すると、驚くことに少なくとも6000年から7000年以上前に作られた物だという事が分かった。


国連合同調査団がその古代基地の扉を開けると、未知の金属と材質で作られた建造物が彼らを迎える。


それらの材質は、大理石を黒くしたような物で光沢があり、どこか神秘的だった。


黒く光る異世界のような空間は、地球外の文字が彫られた壁で埋め尽くされていた。


「これは、世紀の大発見だ!」


一人が叫ぶと、隊長は冷静さを保とうと声をかけようとした。


しかし、その冷静さも束の間、彼らの前に広がる未知への扉は、すでに運命の歯車を回し始めていた。


ちょうどその時たどり着いたのは、様々な機械が置かれた巨大なコンピュータールームのような場所だった。


まるでそこは、何かの管制塔のようにも見えた。


しかし、部屋や機械はどことなくデザインがルネサンス期以降のヨーロッパにあるような雰囲気があり、クラシカルな物と最先端の機械が融合したような異質な空間だった。


その場所に置かれたパソコンのような機械は、地球のパソコンとは違い、何か水晶のようなものと機械がセットで置かれ、様々な文字のようなものが映し出されている。


「こ、ここは、まだ生きている!」


隊長は、まだ起動して所々発光している機械と、水晶を見て声を上げた。


それがどこか古典的に感じる部屋にびっしりと敷き詰められ、鎮座している。


まるで遠い未来と過去を融合させたような空間は、調査団の理性を吹き飛ばすのに一秒もかからなかった。


水晶がパソコンの画面で機械がパソコンの本体のようなものだろうか? と隊長は考え、それに目と意識を奪われた。


しかし、水晶に映し出されている複雑な文字の割には、本体のキーボード部分と思われる場所は、シンプルで簡素なガラス盤のような板が数枚あるだけだった。


隊長はガラス盤に触れないように注意しながらも、熱を持った視線でその機械が何であるのか解明しようと試みた。


「見たこともない、我々の知らない力で動いている……」


隊長は、汗をかきながらうっとりとした声音で直感的に思った言葉を漏らした。


数千年前に作られたであろうそれは、あまりにも複雑で高度なので全く理解できなかった。


まだ短時間観察しただけで何もわかっておらず、結論を出すのはあまりにも早い。


最先端の研究者としてはあるまじき尚早な判断だが、どこか間違えないと確信していた。


隊長が目の前の機械に気を取られている間に、調査員の一人は禁じられた好奇心に駆られるように、さらに部屋の奥へと勝手に進んでいた。


遺跡と最先端を融合させた管制室のような部屋。


その奥の中心には、大人の男が五人並んでも入りそうな巨大な水晶のような球体があり、そこには地球が映し出されていた。


そしてその上の天井近くには、中央にが描かれた、金色と銀色で作られた美しい模様が描かれている。


盾の周りには星々のような物が描かれ、下には見たこともない文字のような物が描かれていた。


興奮した調査員は、地球を映し出した大きな水晶の前へ夢遊病のように足を進めた。


そして、その水晶の下部に備え付けてある装置に目をやった。


そこには、機械の上に一際目を引く発光しているガラス盤のような物があった。


他に水晶と一緒にある機械を、巨大にした物のように思える。


何か重要な物に見え、安易に触れてはいけないような怪しげな雰囲気を感じ取った。


勝手に触れてはいけない! とわずかな冷静さが警告する。


しかし、それを人類で初めて触れられるという抑えがたい要求が津波のように押し寄せ、理性を流していく。


無意識に喉を鳴らしてしまった。


調査員は、あふれ出る好奇心を抑えきれずに、そのガラス盤に吸い込まれるように手を伸ばした。


手が近づくたびに、どこか背徳的でもありさらなる快楽を感じ、自然と笑みを作っていた。


「やめろ! 勝手に触るな!」


偶然顔を上げた隊長が、機械に触れようとしている隊員に気付き、声を張り上げた。


他の隊員も一斉に手を伸ばしている隊員に視線を向ける。


しかし、隊長の声は、好奇心に泥酔している隊員には届かなかった。


好奇心に侵された隊員が、発光するガラス盤に体重をかけず手を触れてみると、宇宙服ごしにヒヤリとした感覚を感じたように錯覚した。


そして一瞬の静けさの後、地球全体がまばゆい光に包まれた。


その後、地球上に無数のダンジョンが現れて、多くの国家体制を崩壊させることになった。

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