第10話

 「終わったね……」


 誰が言ったのか?

 私は俯き、控室の椅子に座っていた。


 ここまでやってこれた事を喜べば良いのか――

 涙を流して惜しめば良いのか――

 続けたいと嘆願すれば良いのか――

 憤りを露わにすれば良いのか――

 しみじみと終わりを受け止めれば良いのか――


 そのどれもが間違いで、正解な気もしていた。


 「皆は、どう思ってる?」


 だから示して欲しかった。


 「どうって?」


 ほのちゃんは私に問い返してくる。


 「今は笑えばいいの?悲しめばいいの?」

 「……そうねぇ。少なくとも笑える気分じゃないかな?私が言えた事じゃないけど……」


 ほのちゃんは苦笑いを浮かべた。


 「ってか。バンドが無くなっちゃったら友達じゃなくなるの?言い方は悪いけど、遊びみたいなもんだったでしょ?考えすぎてこうなった気はするけど、だからここで清算しとかないと意味なくない?」


 ゆかちゃんは言った。


 「寂しいけど~。ギクシャクしてたのは確かだし~。それ結構嫌だったし」


 このちゃんは核心を突く発言をする。

 分かってはいた。

 でも、目を背けていた。


 「やっぱり……皆とバンドしたいよ……。でも……友達でもいたくて……」


 私は涙を流した。


 その後、泣き崩れてしまった。

 皆は驚き、私を宥める。


 それが余計に拍車を掛けた。



  ◇  ◇  ◇



 私が醜態を晒した事により「名前を変えて、またバンドを始めようか?」などという話も出た。

 だが結局、解散が取り消される事は無かった。

 皆、それは違うと理解していたから……。


 『終わらせない為の終焉』なんて表現をすれば格好が付きそうだけど、単に藪をつつく勇気を誰も持ってなかったのだ。

 それは嬉しく、そして切なかった……。

 それ以上の熱意を示せなかったのは私も同じだし、誰かを責めるつもりもない。

 だから、心に決めた。


 「もう、バンドはやらない!!」と……。



  ◇  ◇  ◇



 その日は岡村さん達のバンドのスタジオ練習に呼ばれていた。

 だけど、私はバンドに入るつもりなど無く、ただ誠意を持って断る為に足を運んだ。


 岡村さんは多分良い人で、この先も私の友人であってくれると信じている。

 だからこそ”分かってくれる!”と、考えていた。



  ◇  ◇  ◇



 そう思っていた頃が、私にもありました……。


      完 

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アドバンッ!!~Bloom story~【超圧縮版】 麻田 雄 @mada000

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