第23話:ニュウナイス基地攻略戦(2)
レインと共にイーグルは空を舞う。
カタストロ、アクディオン、そして背部と脚部に装備したミサイルポッドを身に着けて。
「地上部隊を援護しながらか……!」
レインは戦場を見渡し、顔を歪めた。
既に地上も空中も狭い。それ程の戦闘が繰り広げられていた。
「イーグル2! イーグル3! いるか!」
「います隊長!」
「ここにいますよ!」
レインの応答にカレンとクロックの駆る、エクリプスとアリエスが近付いて来る。
両機もカタストロを装備し、地上掩護用にミサイルポッドも装着していた。
そんな両機を見てレインは頷いた。
「すまないが、俺は地上の援護もしなければならない! イーグル2は何機か連れて遊撃! イーグル3は残った部隊を指揮してセルバンテスの護衛だ! 頼むぞ!」
「了解! イーグル4! イーグル5! イーグル6! 着いてきなさい!」
「任せてください! ご武運を!」
そう言うと同時に、レインを筆頭にそれぞれが動き出す。
レインはレーダーを見て、通信を聞きながら単機で迎撃、友軍を援護。
その為に、戦場の黒煙浮かぶ空を駆け抜けていく。
カレンも指示を聞き、最初期から共に生き残り、改修機であるイーグルヘッドⅢを駆るメンバーと共に空へと消えていく。
クロックは残ったメンバーを新型機アリエスで指揮し、近付いて来る敵機を空と地上の両方へ迎撃を始めた。
味方も多い今回の戦場。しかし同時に敵も多い。
空から迫る敵機に意識を向ければ、地上からミサイルや対空砲が放たれてくる。
「何という戦場……! 流石はニュウナイス基地。敵も必死な訳だ」
クロックは一瞬も気が抜けない状況に、呼吸も忘れてビームや機銃を撃っていく。
敵機――アウェス、イーグルヘッドⅡ(クレセント連合機)、ブラッドイーグル、ヒガラ改、シジュラ二式等々。
まるで三大国家の主力機の見本市。
裏切り、敵機に渡った機体やクレセント連合が独自に作った新型機が、セルバンテスへ群がってくる。
「セルバンテスを墜とさせる訳にはいかん! 私はあのレイン・アライトに頼まれた男だ!――うおぉぉ!!」
クロックはアリエスを駆り、敵機へ不慣れなカタストロを放っていく。
敵機はそれを回避するか、カスって損傷か撃墜されるのどちらかだ。
そこへセルバンテスからの援護砲撃や、味方機の一斉射撃により何とかやり合って行く。
そんなまだ前線ではないセルバンテス周辺でそれなのだ。
カレン達が向かった最前線は、AS同士のドッグファイトが繰り広げられていた。
「邪魔なのよぉぉぉ!!」
そんな戦場でカレンの駆るエクリプスは、カタストロを担ぎながら敵機のアウェスへと突っ込んでいく。
アウェスはマシンガンやビームガンで反撃するが、そこはレインに付いて行っているカレンだ。
エクリプスは螺旋を描きながら接近し、ビームブレードで敵機の腕や脚部を切り落とす。
そこへ随伴機のイーグル4~6が三機の連携を見せ、敵機にトドメを刺していく。
確実に、そう確実にカレンは落としていく方法を取っていた。
そして落とされた敵機は、爆発しながら地上へと落ちていく。
だが代わりと言わんばかりにエクリプス達のアラートが鳴り響いた。
ミサイル、対空砲・機銃。それらが一気にカレン達を狙う。
しかしカレンも負けてはいない。
大型のビームガン――カタストロを敵地上部隊へと向けた。
「舐めんじゃないわよ!!」
放たれる大出力のビームが、敵地上部隊を呑み込んだ。
そして地上の味方が全身するのを確認しながら、カレン達は次の獲物を探しながら空を舞って行く。
そんな戦場でカレン達は戦う中、レインも最前線で戦っていた。
『貰ったぜ!! 蒼十字!!』
「――遅い!」
掛かってきたアウェス。そのコックピットを確実にビームブレードで切り裂いた。
そして地上の敵へミサイルポッドを発射し、一気に蹂躙していく。
空へ君臨する、そんなイーグルの姿は敵からすれば悪夢であった。
『こ、こちら第11部隊!! あの蒼十字を何とかしてくれ!!』
『AS部隊は何をしているんだ!!』
『間違いない! アイツだ……! エース狩りの渡り鳥だ!?』
パニック状態に陥る敵部隊。そこへ地上部隊が攻撃し、ゆっくりとだが確実な前進を始める。
「凄いパイロットが、まだ連邦に残っていたとは!」
「まさか、噂は……本当にレイン・アライトなのか!?」
「あれが勝利の蒼い渡り鳥か!」
地上の味方、周囲の空中部隊。
そのどれもがレインの――蒼い渡り鳥のマークがあるイーグルを見て、喜びの声をあげた。
だが敵も負けは許されない。
必死の覚悟でイーグルへと迫った。
『怯むな! 所詮は旧式だ! 伝説は死んだんだ!』
『エース等必要ない! 所詮は一兵卒だろ!!』
『囲め!! ここを奴の――渡り鳥の終着点だ!!』
アウェスやイーグルヘッドⅡのパイロットは、恐怖と戦いながら叫び、引き金を引いた。
ビーム、実弾、そのどれもがレインを狙う。
薬莢が地上へと降り注がれていっても関係ない。
パイロット達は必死――命を賭けてレインへ迫る。
相手がレイン・アライト本人かどうかは関係ないのだ。
所詮は伝説頼りの一兵卒。
そう自身に思い込ませる事で、彼等も戦場の空を舞う。
だがレインも同じだった。
負けられないと、確実に、そして非情にイーグルへ引き金を引かせる。
「出過ぎたな!」
離れている敵にはビームでコックピットを貫く。
接近戦を挑んだ相手には、旋回性能で背後を取って両断する。
そして力量差が激しい相手には、バックパックの翼を破壊し、そのまま地上へと落下させた。
『誰か! アイツを止めろ!!』
『渡り鳥をここに留まらせるな!!』
地上の敵は叫んだ。恐怖で、怒りで、どうにかしろと他力本願。
手も足も出ない相手へと、どうにかしてくれと味方へと懇願する。
けれど近付く敵をイーグルは許さない。
ビームブレードで斬りつけ、機銃でトドメを刺す。
そして再び空へと翼を広げて飛んでいく。
「こちら第081地上部隊――リザード! 囲まれた! 周囲の戦車隊とASを何とかしてくれ!」
「あそこか――!」
味方からの通信を拾えば、一気にスラスターを吹かし戦場を飛んでいく。
そして味方と見つけ、目標を捉えるとミサイルポッドからミサイルを戦車へ向けて発射する。
爆発によって敵戦車隊は吹き飛び、誘爆や原形を留めずに消えていく。
更に敵地上ASにはカタストロを放ち、一気に殲滅した。
「助かったぞ! 空のエースに感謝だと伝えてくれ!」
「このまま東は突破できそうだ!」
味方の喜ぶ声が、レインには僅かに聞こえた。
それだけ回線が入り乱れている。
何とかセルバンテス経由で聞き取れているが、まだ戦いは始まったばかりだ。
自分達が敵を墜とした様に、味方も敵に墜とされている。
そう、本当にまだ戦いは始まったばかりだった。
蒼天のイーグル 四季山 紅葉 @zero4649
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