第7話事件の全容
「折田巡査、あなたは純子さんをゆすっていましたね?」
「……」
仙岩寺は、1つずつ説明していった。
「君は、偶然にも純子さんが、創一郎氏を突き飛ばして、殺害現場を見てしまった。それをネタにゆすっていたのです。50万円の大金を。しかし、欲に駆られた君は、創一郎氏が残した遺書を贋作師に頼み、全財産を純子さんに相続する内容の遺書を作りました。そこで、袖山弁護士に旅館ひなの屋に泊まらせ、毒入りタバコを純子さん経由で渡し袖山弁護士を殺害しました。事件があれば、駐在所のあなたに知らせが届きます。そこで、どさくさに紛れて、遺書をすり替えようとしましたが、私が先に袖山弁護士の部屋に行ってしまいました。あなたは焦ったはずです。藤谷住職を殺害したのは、住職が先に不倫相手の純子さんと一緒なろうと知って、邪魔だったからです。住職さんも、純子さんの金を目当てにしていました。あなたは、この連続殺人事件の真犯人です。いかがです?当たらずとも遠からずではありませんか?」
と、優しい口調で話した。
折田は、
「その通りです」
「動機は、何故あなたのような正義感の溢れる警察官が悪魔になったのか……です。それは、ちょっと桜島警部に調べてもらいました。妹さんは、先月、東京の病院へ行ってますね?」
「……」
「あなたは、妹さんの治療費の為にこのチャンスを掴もうとした。だから、悪魔になったのです」
「……そうです。妹は難病のハンチントン病です」
美加は折田を睨みながら、涙を流していた。身体を宗が支えていた。
「私はたまたま、純子婦人が創一郎氏と言い争いをしている現場にたまたまいました。なだめようとすると、婦人は突き飛ばして、創一郎氏は転落して、即死でした。それから、私はそれをバラさない約束でお金をもらいました。妹の病気は酷くなると普通の生活は送れなくなります。そして、袖山弁護士ですが、あなたのお陰で計画は潰れました。私は焦りました。そして、婦人に相談すると、住職先生も婦人から金をせびってました。そうしたら、私へのお金が尽きてしまいます。ですから殺しました」
折田はうつむきながら話していた。
「なんて、短絡的な」
と、桜島警部はつぶやいた。
「婦人のタバコに毒を仕込んだのも、あなたですね?」
「はい」
「もう、私の計画は破綻しました。婦人は警察に洗いざらい話すと言ったので殺害を思いつきました」
「しかし、純子さんは最後、犯人は自分だと言いましたね?」
「それは、意外でした」
「妹は、もう、助かりません。長くて1年。東京での治療を続ければまだ、寿命は延びますが。コレで終わりです」
と、折田は口から血を流した。
「早く、医者を!」
呼ばれた医者は、動揺していた。
「折田、お前舌噛みやがったな?」
折田はにこりとして、倒れた。
事件の全容が分かり、警察は後日被疑者死亡で処理した。
旅館へ仙岩寺は戻った。
ひなの屋の里美は、仙岩寺が荷造りすると、
「先生、また、来て下さいね」
「うん。君は良いお嫁さんになれるよ」
「あっ、ちょっと待って!蝶ネクタイプレゼントします」
「ありがとう」
と、もらった赤い蝶ネクタイを仙岩寺はした。
その時、来訪者が。
美加と典夫夫妻だった。
「仙岩寺先生、本当にありがとうございました。これが、報酬です」
と、分厚い封筒を渡された。
仙岩寺はありがとうと言って、10万円だけ抜いて、封筒を返した。
「美加ちゃん、宗君とお幸せに。立松夫婦も仲良くね。このお金は、君たちのものだ」
と、仙岩寺は旅館を後にした。
終
悪魔が降りた村 羽弦トリス @September-0919
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