第6話第四の殺人
「この中に犯人はいます」
と、仙岩寺は言い放ち、言葉を続けた。
「この殺人事件は、特徴があります。仮に犯人をXとしましょう。さて、Xに近い人物と言えば、立松典夫さん。あなたです」
と、仙岩寺は震える立松典夫の前に立つ。
「あなたは、亡くなった宮部創一郎氏の腹違いの子供ですね。長年行方知れずのあなたを使用人にしてそばに置いたのです」
「聞いてないわよ!そんな事」
と、いきなり宮部純子が口を挟む。
「……そ、その通りです。し、しかし、探偵さん私は人は殺していません」
と、典夫は妻の春子に支えられながら答えた。
「仮に、典夫さんが犯人だとしたら、創一郎氏が事故死に見せかけられて殺す事は不可能です。典夫さんはXではありません。では、次に怪しいのはあなたです」
と、仙岩寺は宗健太郎の隣に立つ。
「あなた、相当、お付き合いしている宮部美加さんから援助を受けていらっしゃる。そうですね?」
「はい」
「お金は人間の理性を奪います。もっとお金が欲しいんじゃありませんか?美加さんと結婚すれば遺産が入る。そこの目を付けていたのでは?」
「ち、違います。仙岩寺先生。僕は心から美加を愛しています」
「そうです、先生、私からも言わせて下さい。確かに多少の援助はしました。しかし彼は毎月、お給料日に返済しています。本当です。信じて下さい!」
と、美加は必死に宗の無罪を主張した。
「ここでも、Xを宗君とするには心苦しいです」
宮部純子はタバコに火をつけた。
「やはり、創一郎氏を殺害したのは、宮部純子さん。あなたです」
「何の事かしら?」
「あなたは、偶然か細工をしたかで橋の柵が外れる様にしました。そこで、創一郎氏を突き飛ばし、殺害したのです。しかし、このXには……」
「ゴホッ!ゴボッ!」
「お母様!」
宮部純子は吐血した。
「毒だ!誰か医者をっ!」
と、桜島警部が叫び典夫が自転車を用意して近くの診療所に走った。
「じ、純子さん、純子さん」
桜島警部は必死に声掛けした。
仙岩寺はじっと見つめていた。
「わ、私が全てやりました……み、美加。ゴメンね……」
「お母様、お母様」
宮部純子は絶命した。
医者が到着したが、毒物の染み込んだタバコを吸ったのが原因でての施し用が無かった。
「仙岩寺さん、Xの正体はやはり純子さんでしたか?」
「いいえ、真犯人は純子さんではありません。彼女は事件の半分は手伝い程度でしたが、藤谷住職の殺害に至っては無理です」
「じゃあ、誰が?」
「殺人があって、誰よりも早く駆け付け、証拠を消して、その場にいつもいても怪しまれない人物がこの中にいます」
「一体誰なんです。Xの正体は?」
と、怒りの表情で桜島警部は尋ねた。
「この連続殺人事件の真犯人、Xの正体は折田拓郎巡査!君だね」
と、仙岩寺は指さした。
一同は一斉に折田巡査を見た。
折田巡査は、きょとんとしていた。折田は、持っていた拳銃を持ち、自分のこめかみに当てたが、他の刑事が後ろから羽交い締めにして、拳銃を奪われた。
パンッ!
弾は天井に当たった。
折田は、腰が抜けた様子でへたり込んだ。
悪魔が降りた村 羽弦トリス @September-0919
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