第5話遺言書の開封

その日は、前日に宮部創一郎の四十九日法要が終わり、創一郎氏の遺言書の開封が行われる日であった。

念の為、屋敷には警察が待機して、桜島警部が保管していた遺言書を開封する役だった。


屋敷の中には、宮部純子未亡人、その娘の美加、美加の彼氏宗健太郎、使用人の立松夫妻、そして、桜島警部と仙岩寺、念の為、折田巡査が待機していた。

まだ、藤谷住職の捜査の途中だが遺言書がカギを握っていると思い、桜島警部は遺言書の開封を優先したのだ。


「皆さん、お集まりですね。今から創一郎氏の遺言書を読み上げます。……遺言、私の所有する全財産は……立松典夫に相続する」

一同は静まり返った。

まず声を上げたのは、

「どういう事!何故、私は妻なのに全て典夫なの?何かの間違いよ!あぁ〜」

そのまま、宮部純子はソファーに倒れ込んだ。

「お母様、お母様」

美加は母親の容体を心配したが、純子は意識ははっきりしていた。

驚いたのは、立松夫妻だった。

桜島警部は遺言書を読み上げると、それを再びバッグにしまった。


仙岩寺は全員の表情を観察していた。

何故立松夫妻が選ばれたのか?その時には誰も分からなかった。

旅館に戻ると、一筋の仮定を組み上げた。


創一郎氏の事故死は2つの殺人と繋がりがあると。

仙岩寺はある事を桜島警部に頼んでいた。

夜、旅館に桜島警部が現れた。


「宮部純子未亡人は、この1カ月間で50万円銀行から引き下ろしています」 

「そんな大金を……」

と仙岩寺はタバコに火をつけてやはり、推理通りだと思った。

仙岩寺はある仮説を立てていた。それを桜島警部に耳打ちした。

「……ま、まさか」

「そう、そのまさかなんです」

「明日、再びあの事件の関係者を集めてもらえませんか?後、護衛の為に折田巡査も」


翌日。

屋敷に桜島警部と仙岩寺は向かった。

昨日と同じメンバーが集まっていた。

宮部純子は、タバコを吸っていた。喫煙者であったのだ。

「探偵さん。今さらこの家族に何の御用で?」

と、純子は不貞腐れて言った。

立松夫妻は、恐縮していた。


「この鬼切村での殺人事件の犯人が昨日分かりました」

「ほ、ホントですか?仙岩寺さん」

と、娘の美加言った。

「はい。本当です。先ずはこの事件を整理しましょう。約1カ月半前、ここの当主宮部創一郎氏の事故死でした。

これは、私の想像ですが事故死ではないと踏んでいます」


「仙岩寺先生、まさかこのメンバーの中に犯人がいるとでも?」

「はい。その通りです。折田君」 


「では、犯人はこの屋敷にいますっ」

と、仙岩寺は言い放った!

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