夜更かし
月白
第1話 夜更かし
静かな時間が流れている。
今は深夜1時30分。
「遅くなっちゃったな……」
誰もいない部屋で、そんなひと言をつぶやく。
もちろん返ってくる言葉などない。
この静かな時間が、私は好きなのだ。
多くの人が寝静まっているであろう、この静かな時間を独り占めするかのように、好きな飲み物とおつまみと1冊の本があれば、至福の時間だ。
明日は休みだ。
ゆっくりと自分の時間を過ごせる。
早く寝てしまうのは勿体ない。
休日を思う存分に楽しまなくては…
こんな静かな夜に読む本は、怪談小説。
ゾクゾクッと来る感覚が、静かな夜の時間と相まって面白さも倍増で、なかなか止められない。
カタン―――――
何だろうと思って部屋を見渡すと、立て掛けておいた掃除道具が倒れた音だった。
こんな些細な音も、大きく響くように感じる夜の静けさの中で、よせばいいのに少しの刺激を求めて読んでしまう。
ちょっと怖い感覚に襲われつつ、静かな深夜の時間を堪能する。
どうせなら、もっと色っぽい感じにと思わなくもないけど、これが私らしくて楽しいから仕方がない。
無理もしていないし、一番自分らしくいられる時間。
誰かとこの楽しみを、共有したい感覚に襲われることもなくはないけれど、じっくりと一人で楽しむのもそれほど悪くはない。
それでもフッと思う。
この時間に起きている人たちは仕事している以外に、どう過ごしているのだろう。
テレビを観ている?
それとも、私のように本を読んでいる?
映画を観るのも悪くない。
思い思いの時間の過ごし方がある。
よく子供のころは「夜更かししてないで、早く寝なさい」なんて言われたっけ……
それも遠い昔の話。
ただリラックスして夢中になって過ごす、この静かな時間が必要で、たまに昔のことを思い出したりしながら、自分の心を癒すんだ。
なんて色々思っていても……
「ただ、楽しいだけだけど」
かっこつけて物思いにふける自分に笑ってしまう。
静かで楽しい時間はまだ始まったばかりだ。
夜更かし 月白 @ren_tsukishiro
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