楽しいね

本話はちょっとこれまでよりも表現が厳しめです、覚悟がある方のみお読みください。


















劈くような悲鳴が響き渡る。

全員が恐怖に震え逃げ出そうと扉まで走るが肝心の扉は固く閉ざされており、誰も出ることはできない。

三月はそんな彼らにゆっくりと近づきナイフを振り下ろし、一人、また一人と殺していく。

ある者は顔を両断され、ある者は首と胴が離れ、ある者はいくつもの刺し傷と切り傷からとめどなく血が流れ続ける。

全体の1/5ほど殺し終えたところで手をとめ教室の隅に寄って震えている生徒たちに呼びかける。


「ねぇ、君たち。取引をしないかい?」

当然、誰も何も答えない。


「……これから僕が5人の名前を言うからそいつらを差し出すんだ、そうしたら残ったみんなは殺さずに解放してあげるよ。


言葉を上げての反応はないが全員がバッと顔を上げる。

それを見た三月は愉快そうに口元を歪る。


「じゃあまず一人目だ、寒沢を連れて来い……勿論、全員揃って殺されたくなければそのままでも良いんだぞ?」


その瞬間数名の男女が寒沢に飛びつく、寒沢は泣きながら「やめて、やめて」と暴れながら懇願するがそんな抵抗も虚しく無理やり三月の前に連れてこられるとポイっと投げ捨てるように置かれた後連れてきた者達は走って元いた場所に戻り、息を潜め始める。



「ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返し呟いていたが途中で無駄だと気付いたのか両手で顔を覆い指の隙間から溢れる涙など気にもせずに「いやだ、いやだ、いやだ、いやだ」と呟き始める。


三月は寒沢の腕をしっかりと固定すると、ナイフをその柔らかな指の皮膚に押し当てた。刃がゆっくりと皮膚を裂き、薄い膜が剥がれ落ちる感触を楽しむかのように、彼は丁寧に刃を引いていく。

途中で寒沢が抵抗する様に暴れようとしたが数発顔を殴って気絶させて黙らせる。

剥がされた皮膚の下から覗く赤黒い筋肉が、じわりと血を滲ませながら震えていた。その様子に満足げな微笑みを浮かべた彼は、指で新鮮な肉をつまみ、まるで果実の皮をむくかのように慎重に引き裂いた。

その瞬間、身を引きさす痛みに寒沢は目を覚まし「キャァァァァァァ」と大きな悲鳴をあげる。

三月はそれを面白そうに眺めた後に次の指も同じように切り裂き、肉を摘み上げる。

寒沢は何度その身を削られただろうか。両手の指の肉が削ぎ落とされ、顔、胴と同じことを繰り返していたところで突然寒沢がばたりと倒れ動かなくなる。


(死んではいない様だが気を失ったのかな?……ほっといても失血で死ぬだろうけど。まぁ寒沢はこのくらいでいいかな。それじゃあ次は……)


三月はおもむろに立ち上がると生徒達に向けて次の名を呼ぶ


「長篠を連れてこい」


三月がそう言うと先ほどと同じように抵抗する長篠は他生徒によって無理やり三月の前に連れてこられる。

虚な目をした長篠はフラフラとした足で三月の前を逃げだし閉ざされた扉の前まで歩き扉を叩き、助けを求める。

「誰か、誰かぁ、助けてくれよぉ」

そう叫ぶ長篠の顔は涙で濡れ、息は浅く途切れ途切れになり、時折大きくしゃくり上げては、喉がひゅうひゅうと苦しげな音を立てる。

そんな長篠の前までゆっくりと歩いた三月は全力で長篠を殴る。

その衝撃でよろめき倒れた長篠に馬乗りになるとその拳で何度も何度も、執拗に顔だけを殴りつける。血が飛び散り、顔が歪んでいく。

三月は無言で抵抗しなくなった長篠の指を一本ずつ掴み、ゆっくりと力を加えた。小さな関節が砕ける乾いた音が部屋に響く。

初めこそ長篠は悲鳴をあげていたが途中から掠れた叫び声を上げるだけとなり、折れ曲がった指は不自然な角度でぶら下がり、肉の中から尖った骨が顔を覗かせた。みつきはその骨を見つめ、興味深そうに指で触れ、さらに深く押し込み破片が肉の中へ沈んでいく感触を楽しむ。

10本の指が同じように無惨な姿になった後、三月は長篠に興味をなくしたのか次の玩具の名を呼ぶ。


「……次は濱口」

また同じ様にして濱口が連れてこられる。

残りの玩具二人は濱口が呼ばれたことでこの後に殺されるのが自分だと確信し、なんとか逃げようと無駄な足掻きを始める。

そんな二人に三月は一言。


「君達、先に殺されたいのかい?僕はそれでもいいよ、ほら、死にたいんでしょこっちにおいでよ」

そうすると彼らはぴたりと動きを止めて沈黙した。


「……まぁいいか。それよりも今は、濱口だ」


そういって見下ろした濱口は小さく肩を振るわせ何かをぶつぶつと呟いている。

今度はどうやって遊ぼうかと思った三月の視線の先には今日のためにと家から持ってきた金属のスプーン、まだ使うには少し早いかとも思ったが次に使うときのための実証実験のためと言って手に取る。

濱口の頭を鷲掴みにして髪を引っ張り顔を三月自身の顔の前に引き寄せる。

みつきは無邪気な笑みを浮かべながら、相手の目の縁にスプーンを押し当てる。じわじわと力を込めると、眼球が抵抗するように硬く動いたが、やがて力に屈して滑り出た。血と透明な液体が溢れ出し、彼はそれをまるで宝石を掘り当てたかのように掴み取った。くり抜かれた穴から垂れ落ちる粘ついた液体が濱口の頬を伝う。

上手く取り出せた眼球を興味深そうに見つた後、床に落として踏み潰す。

小さく弾ける様な音共に気持ちの悪い感触が足に伝わる。


(上手くいくかどうか不安だったけど、これはいいな……癖になりそうだ)


泣きながら惨めな命乞いを続ける濱口を力づくで拘束しもう片方の目も同じ様にスプーンでほじくり出す。

今度は踏み潰さずに手で握ってゆっくりと力を加える。

瞬間、握りつぶされた眼球はドロリとした液体に変わる。


のたうちまわりながら絶叫する濱口をナイフで2、3度刺して絶命させ、次の名を呼ぶ。


「野崎」

三月が小さくそう呟くと野崎はゆっくりと自分から三月の元へ歩み寄る。

三月の前でとまった野崎は急にその腕を振り上げ三月に殴りかかる。

恐怖で極限状態まで追い詰められた者の拳を易々と避ける。

野崎の頭を掴んだ三月は教室の石の床にその頭を何度も打ち付けた。

最初は鈍い音だったが、繰り返すうちに音は湿った音に変わり、頭蓋骨が砕ける感触が手に伝わってきた。最後には脳漿が床に飛び散り、髪と混じり合ってドロリとした塊を作っていた。彼はそれを足で踏みつけ、靴の底に付着したものを興味深そうに眺めた後、ため息をつくように「美しいな」と呟く。



そして、そしてメインディッシュの名を呼ぶ。


「山下、こっちにきてくれ。僕と一緒に遊ぼうよ」


そう言って壁際で震える山下に向かって歩み寄り始める。

山下は恐怖に負けて役に立たなくなった足を引き摺る様にして移動するがそれも長くは続かなかった。

ずっと殺したかった相手、何度も何度も殺す想像をしてはその愉しさを実際に感じることができぬことに絶望感を感じた相手。

その相手を今、殺すことができる。

その歓び、幸福感、ただそれだけが三月の心を支配していた。


三月はは冷たく光るナイフの刃を山下の腹部に押し当てると、ゆっくりと力を込めた。皮膚が裂ける音は布を引き裂くような乾いたものではなく、湿った抵抗感を伴いながらじわじわと広がっていく。脂肪の層が薄い膜を引きちぎられ、次に現れる筋肉がナイフの軌跡に合わせて細かく断ち切られていく様を、三月は飽くことなく見つめていた。やがて刃先が腹膜に到達し、それを貫いた瞬間、内部の液体がぶわりと溢れ出し、指を生温かく濡らした。

切り口を強引に広げ手をゆっくりと切り開いた腹の中に差し込むと、湿気を帯びた粘つく感触が指先から腕にかけて伝わってきた。臓器が内部で絡み合い、滑りながらも確かな重量感を持って彼の手の中に収まった。三月は好奇心に満ちた目でその塊を握りしめると、ぬるりとした腸がズルズルと滑り出し、床にたたきつけられた。音は鈍く、まるで湿った泥が地面に落ちるようだったが、同時に腸壁が裂け、中の内容物が飛び散る不快な匂いが一気に鼻腔を満たした。

しかし、三月はそれに眉をひそめるどころか、むしろ歓喜の笑みを浮かべた。

床に散らばった腸を指でつまみ上げ、その表面を丹念に観察しながら、指先に絡みついたぬめりを舐め取る。

その瞬間、彼の表情は陶酔にも似た言い知れぬ喜びで満たされた。

次に手を深く差し込み、肝臓を掴み取ったとき、指先から伝わるその独特の柔らかさと重量に一瞬息を呑んだ。それを力任せに引きずり出すと、血管が一斉にちぎれ、内部から新たな血潮が吹き出した。三月の顔や胸元が赤黒く染まり、その鉄臭さがますます周囲を覆い尽くしていく。

さらに深く手を差し入れ、今度は心臓にたどり着いた。まだ微弱に動いている筋肉を感じ取ると、彼はまるでそれが生きている証であるかのように嬉々として笑みを浮かべた。力強くそれを引き抜いた瞬間、繋がった大動脈がブチンと音を立てて切れ、鮮血が三月の腕を伝いながら滴り落ちた。

三月はそれを誇らしげに掲げ、まるで賞品を手に入れたかのように目を細めて眺めた後、心臓を両手で握り潰す。中から血の塊と液体が噴き出し、三月の顔にまで飛び散ったが、それでも構わずに舌でそれを舐め取り、うっとりとした表情を浮かべた。

腹部はすでに空洞と化し、中に残された臓器の切れ端や液体が、じわじわと漏れ出し続けていた。床に散らばる腸や肝臓、その他得体の知れない臓器の断片が、まるで鮮やかな絵画のように広がり、その中を歩く彼の足跡が赤黒く染まっていく。三月は血に濡れた手を見つめながら、小さく笑い声を漏らした。その笑みはどこか無邪気で、それゆえに底知れない不気味さが漂っていた。





「これで、これで良いんだな?」


安堵を浮かべた遠慮がちに近づいてきた担任は三月にそう問いかける。


「いえ、最後に一つだけ、もう一つだけ、お願いしたいことがあるんです」


「……?」


「先生も、死んでください」


その瞬間、紅い一輪の薔薇が床を染め上げた。



(終)












____________


最後まで見ていただきありがとうございました。

最終話を書くにあたって筆者自身、1話から読んでみたのですが「おもしろくねぇな」って思った部分がかなりあったので近日中に書き直し、又は大規模な修正を行う可能性があります(未定)。

また、星での評価や応援コメント、ハートで応援していただけますと今後の執筆活動の励みとなりますので、この作品を少しでも面白いなと感じてくれた方はポチッと応援の方、よろしくお願い致します。

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【完結済み】いじめっ子、刺してみた。 丸投げ製麺 @takukatsu

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