メインディッシュ

翌日、帰りのHRにて。


「え〜、最後に、青先から皆んなに話があるようだ、聞いてやってくれ。それじゃ、青先」


「はい」

そういってゆっくりと立ち上がり教卓の前まで歩く。

皆一様に興味なさそうな視線を僕に向ける中、一人だけ攻撃的で挑発するような視線を向けてくる奴がいる、今回のメインディッシュだ。

果たして自分が狩られる番になった時にどんな顔をするのか、想像するだけでも興奮してきた……。


「……皆さんも知っているかとは思いますが私は両親が殺人鬼であるという理由だけで皆さんから虐めを受けていました……苦しかった、とても苦しかった。誰でもいいから話を聞いて欲しかった。助けるなんて大層なことをしなくてもいい。僕の話を聞いてくれる、たったそれだけで僕は救われていたでしょう……しかし、何年待っても僕の話を聞いてくれる人は現れませんでした」


そこで一度言葉を止め、皆んなを見回す。

目があった人はみんな目を逸らす。罪悪感があるのか実際に虐めた人よりも傍観していた人の方が表情が辛そうだ。


「だから……だから僕はもうそんな日々は終わりにしようと決めました、弱者ヅラで泣き続ける日々を終わらせようと。弱者であるということが罪ならば、強者になろうと。だから……だから僕は遙と夏樹、瑞稀を殺しました。自らが強者となる為に……」


そう言ってもう一度皆んなを見回す。反応は三者三様、本当にさまざまだ。

目を見開いて驚く者、嘘だと嘲笑する者……僕がおかしくなったと嘲笑いバカにする者。


「おまえ、なにいってんの?……やっぱり大変だなぁ、殺人鬼の子供ってのは。というか話ってもしかしてそれだけ?流石におもんないって」


「まぁまぁ、そこまでカッカしないでよ、本題はここからだよ、山下君」


「ッチ……じゃあ早く言えよ」


「うん……僕はさ、さっき言った通り殺人鬼になったんだけどさ、殺人鬼って人を殺すことが仕事じゃん?」


みんなの頭の上に?マークの花畑が出来上がるが構わず話を続ける。

(どうせすぐに死ぬんだから理解する必要もないだろう)


「でさ、僕も殺人鬼になった以上人を殺して回るべきだと思うんだ…………だから、さ、みんな僕に殺されてよ」


そう言って前列の席の生徒に近づきポケットから刃渡り10センチほどの折りたたみ式のナイフを取り出す。

生徒は「ヒッ……」と言い逃げようとするが勿論逃げ出す隙など与えない。


生徒の頭にナイフを突き刺し顔を両断するように切り下ろす。

頑丈で、切れ味の良いナイフは生徒の顔を両断する。途中で見えた顔の断面は血と肉と脳と骨、いろんなものが混ざり合って実に潰れたトマトのように醜悪。とても美しかった。


担任は知らぬ顔で止めようともせずに窓の外を見上げている。


そうして僕は大きな声で呼びかける。



「さぁ!楽しい楽しい殺しの始まりだ。みんな僕が殺してあげるよ」

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