メインディッシュの足音
「1番、青先」
担任が出欠確認を取る声が教室に響く。
「はい」
そう言った後に僕に向けられる視線はいつもよりも厳しいものばかり、昨夜殺した彼女のことはまだ学校には伝わってないだろうから……一昨日の遙と夏樹のことが伝わったのかな、まだ僕が犯人だってわからないはずなのに。
朝のHRが終わり一限目の授業が始まる。科目は世界史、担当は担任だ。
───────────
授業終了後、足早に担任の元に歩み寄り話しかける。
「あの、先生」
「おぉ……青先か、どうかしたか?」
担任は話しかけたのが僕であるとわかった途端露骨に嫌そうな顔をする、コイツはいつだってそうだ。
「すこし聞いてほしいことがあるんですけど、放課後空き教室でも大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、勿論だ。話はそれだけか?先生はもう行かなくちゃなんだが……」
「はい、ありがとうございます」
嬉しそうにそう答え自身の席に戻っていく。
──────────
茜色の夕日が誰もいない空き教室をオレンジ色に染め上げる午後5時。
おもむろに教室の扉が開き息を切らした一人の男性が入ってくる。
「おぉ、青先。遅れてすまんな、少し用事が長引いちゃって……」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
「あぁ、ありがとう。それで、話したいことって?」
「はい……一昨日の夜11時ごろ、どこで何をしていましたか?」
「え?……それは、その、家で家族と過ごしていたが、それがどうかしたのか?」
(何でみんな嘘をつくんだろうな……?こんなガキがそこまで怖いのか?)
「僕が聞いているのはそんなことじゃないですよ……先生、一昨日僕が遙と夏樹を殺ったところ……見てましたよね?」
そう問いかけると担任は苦虫を噛み潰したような顔で黙り込むが、静寂に耐えられなくなったのかゆっくりと口を開く。
「なんのことだ?先生はそんなこと知らないぞ?それにな、青先、冗談だったとしても言って良いことと悪いことがあるんだ、お前ももう子供じゃないんだからそこは自覚しといたほうがいいぞ」
あくまでしらを切り通すつもりなのだろう、それなら、こちらにも考えがある。
「……先生がそうしたいなら、まぁいいですよ。……それはそうと先生、僕、次は山下を殺ろうと思っているんですが」
「……‼︎」
担任は虚を突かれたような顔で動きを止める。
「もちろん、先生は協力してくれますよね?」
「お前、本気で言ってるのか?それ」
「えぇ、僕はいつだって本気ですよ」
「そんなこと許されるはずが──」
「先生、確かお子さんがおられましたよね。3ヶ月ほど前に産まれたと聞きましたよ。名前は確か……沙良君でしたっけ?」
「…………」
「先生お子さんは大事ですか?」
「………………わかった、協力しよう」
案外すんなりと協力してくれるらしい、子供に人間を教える教師でもやはり人間の優先順位があるのだろうか?
「それで、俺は具体的に何をすればいい?」
「そうですね、簡単な仕事ですよ」
やはりすんなり協力してくれるあたり一昨日のことを見ていたのではないかと思うがもうそんなことはどうだっていい。
これで舞台は整えられた……明日は人生で一番楽しい日になる気がする。
予想ではない、直感だ。
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