第1話

 昔から血が怖かった。


 野原や公園で転び足を擦りむいては、いつも痛みでは無く、流れ出る己が血液を見て泣いていた。特別痛みが得意なわけでは無いのだけれど、あのドロッとした赤い液体が傷口から垂れる様子や怪我に至までの経緯を想像すると、どうしようもなく涙と震えが止まらなくなってしまうのだ。

 

 そんな特性は高校生になった今も変わらず引きずっていて、寧ろ最近では赤い液体なら絵の具でもケチャップでも怖くなってしまう始末。

 震えていただけの症状も年々着々と悪化し、とうとう嘔吐が止まらなくなるにまで至った。


 少しの赤い液体でも反応してしまうので日常生活はおろか、ネットを見るだけでも危険がつきまとう。


 だから嘔吐のしすぎで胃に穴が開いたのも、血を吐く度に嘔吐が止まらなくなる悪循環に陥るのも。

 修学旅行の途中にクラスメイトが飲んでいたアセロラジュースを見てしまい遙か二千メートルの大空で溺死したのも。


 或いは、収まるところに収まったという事に過ぎないのかもしれない。


  01


 町の大通りで大仰に構えていた木造の家。

 それこそ、本日夕食を頂く飯屋の酒場らしい。


 目隠し以上の意味を持たないウェスタンドアに手をかけた瞬間。僕は思わず鼻に皺を寄せてしまった。


「うわぁ、酒臭……」


 粗悪なアルコール臭を喰らったなら仕方もないことだ。

 とはいえ奢りとあればおいそれと帰る選択肢はない。というか、帰る場所も当ても無かった。

 僕に出来ることは黙ってついて行きタダ飯をかっ食らうだけである。


 先を行く二人を追いかけて意を決し踏み入ると、耳障りなキィという音が店の中に響いた。


 内部は大きめの教室くらいで、右手の一角は受付とバックヤードが占領し、左手の壁には一面に羊皮紙が張り出されている。そしてその奧には簡素な机と椅子が雑多に並ぶ食事処があった。


 しかもどうやら二階まであるらしく、吹き抜けた外壁をぐるりと取り囲むようなデッキには手すりと、やはり簡素な木製の机が設置されている。


 不思議にも内部は外よりもずっと明るかった。天井を見ても天球なんかが設置されている風には見えないのだから不思議である。


 既に少なくない数の客が疎らにグループを作り騒ぐ様子はまさに教室といった風なものの、その層は不潔とまではいわないが、柄と人相の悪い者が多く見られた。


 そしてその誰もが目の前の彼と同じように革や鉄の鎧を着込んでいるし、なんといっても、マントを羽織っている者の多さたるや……

 もしかしたら流行なのかもしれない。


 そして僕等はそんな奇怪で酒臭い奴らの間を縫って歩き、やがて小さなデスクへとたどり着いた。

 僕なんかは高校の制服のままだったので道中も当然現在も進行形で随分な奇異の目にさらされている。


 女二と一緒だが、さりとて絡まれないのは楽しい酒の席だからか。


 椅子に座るや否やウェイトレスらしき茶髪の若い女性がやってきて、兎娘と二、三言上手く躱し明らかな営業スマイルを浮かべながらバックヤードへと帰って行った。


 白い長袖のワンピースを革のコルセットを締めただけの単なる村娘だったが、しかしこのケフィアの人間はどいつもこいつもいちいちが高い。


 日本人とは骨格からして明らかに違う、コルセットでご無体にも強調されたウェイトレスの胸や腰を薄目で眺めていると、彼女は唐突に振り返って僕を見た。


 やだ、目が合っちゃった。そんな風に頬を染めたのはどうやら僕だけでは無いらしく、彼女も同様に目を伏せて足を早める。


 不審者がニチャついてます!! なんて通報されない事を願っておこう。


「あまり周囲に視線を配るな」


 眉目を潜めて咎めるような白狼に僕は声を潜めて理由を聞き返す。


「気にしない、気にしなーい。どうせ今夜は帰してあげないもんね」


 だが話を切って蠱惑的に口端を鋭く歪める少女は、ふと、何かを思い出した様に目を見開いた。


「そういや自己紹介がまだだったね。……私はスルト、格闘家だよ。好きな物は美味いご飯と美味しい男!! 今夜は君をテイクアウトしちゃうからね!!」


 蛮族みたいな自己紹介をした兎。改めスルトは因みにと前置きをして「種族は見ての通り兎獣人だよー」と、両の掌で空を揉んだ。


 見れば先ほどよりも耳の内側が赤く染まっていて、忙しなく上下左右と動いている。

 コスプレに造詣は深くないけれど、偽物にしては精巧な作りだ。


 しかし種類やケモ度はともかくとして、周囲にも似た様な付属品を付けた荒くれ者が居るため穏便に頷いて流す。


 コンプラと多様性が過度に保護される現代を生きている現代人として、彼等彼女の容姿に言及する勇気が無かったのだ。


 努めて暖かな目を作り眺めていると、スルトは厳しい表情で虚空を眺めていた狼を肘で突く。


「ジャックマン・ジャッカル。剣士だ」

「マンちゃんって呼んであげてね!!」


 本当にそれでいいのだろうか。……しかしマンさんの緩いシャツの上部から見えた深い谷間は紛う事なきホンモノに思えた。


「汚らわしい目を私に寄越すな」


 しかし先ほどから僕の視線を指摘するだけあり、ゲスな勘ぐりはしっかりと見破られてしまった。恥ずかしい。


「いーじゃん可愛いじゃーん」


 なんて戯れる二人が落ち着いた合間を見繕い、僕も自己紹介を始める。


「あー……、名前は麻峰アサミネ。職業は学生で……人間? ですかね? 美味い飯は好きですよ」


 自分の尖った耳を確かめながら、僕はしどろもどろに答える。

 

 いくら鈍くても、僕だってそろそろここがコミケ会場では無いことは察していた。

 とはいえ僕は中二的な病気は完治していたし、漫画やアニメの住人と同じような状況に陥ったとて、少なくともネットも鏡も見ずに彼女等だけの主張を信じて自分が吸血鬼だと名乗ることは憚られた。


「珍しい名前だね、アサ君」


 スルトの中では既に僕の名前は決定していたらしい。家族親族友人からは別の呼び名をされていたのでなんだか新鮮な気分である。


「嘘を言っている気配は無いが……お前は吸血鬼にしか見えんな」


 互いに首を傾げ訝しむ、そんな折。

 再びやってきたウェイトレスが明るい声で注文を復唱しつつ僕等の前に料理を置いた。


「細かい話はおいといてー、冷めない内に食べちゃおう!!」


 宣言してスルトは野菜スティックを前歯で刻み、マンさんは豪快な肉塊を更に豪快に食いちぎる。



 ……彼女等はどうして見ず知らずの僕に優しくしてくれるのだろう。何か企みでもあるのだろうか。


 なんて感じに漫然と巡らせいた思考は、艶やかな肉汁を垂らす肉と鼻腔をくすぐるスパイスにやられて吹き飛んだ。


 僕の腹はグルグルと鳴り、脳みそは今すぐに食らいつけと命令する。

 

 それなのに、どこか空虚に見えてしまい食指が働かなかった。

 食品サンプルを模した消しゴムですらもう少し美味そうに見えるだろう。


 ――何かがおかしい。

 恐らく本能的な部分で、僕はそう確信した。


 が、今までにもこういった事態には遭遇したことがある。腹が減りすぎて逆に腹が一杯になるというあの謎現象だ。

 そういった時は往々にして一口食べた途端に意外と食べられそうなことに気が付くのである。


 だから僕は今度もそうなのだろうと、不可解な状況に嫌な予感はしつつも、しかし何か悪いことが起こるとはすっかり疑わず。

 サイコロ状に切り出した小さな肉を口に運んだ。


 しかし次の瞬間、僕は口端から少量の胃液と共に肉が転げ落ちた。


「えぇっ不器用すぎない!?」


 スルトは笑いながら樽のジョッキの泡を飲むが、僕はうっかりや冗談で肉を吹いたのでは無い。


「……す、すみません」


 不味すぎて、つまりはどこからどう見ても美味そうな肉の味が気持ち悪くて、吐きそうだったので、慌て舌で出したのだ。


 獣臭いとか、食感が苦手とか、変な味がしたとか。そういう事では無い。多少筋張ったワイルドな肉だったけれど、原因はソコじゃない。

 寧ろ油っぽく無い赤身で好みだとすら思っていたのだから。


 だからこれは、例えるなら肉の味や匂い食感はイメージ通りのそのままに、その味や匂い食感がそっくりそのまま好みの欄から転落して糞の下に置き換わった。

 この状況を形容する言葉はもはやそれ以外に見当たらない。


 血液を見る度に吐いていたので最近はもっぱら吐き癖まで付いていた僕だ。

 美味い肉と間違って糞を口に入れたのに、それでも吐かなかった事を褒めて欲しいくらいである。


 高鳴る心臓を押さえ、尋常では無い僕の様子を見て怪訝な顔をする二人に、もう一度謝った。


「これ、無理かもしれません」

「あー……そっか、吸血鬼だもんね。家畜の血を頼んであげるからその肉は置いときなよ」


 咄嗟に口を押さえ、混み上がって来た吐瀉を口腔で留め、再度嚥下する。

 そして僕はジョッキを掴み水を口を洗い流すと、空になったそれを机にたたきつけた。


「わぁお、言い飲みっぷりだね……ただの水だけど」


 だが僕はウェイトレスを呼ぶスルトを呼び止める。何を勘違いしたのか、マンさんは対抗して酒を呷っていた。



「要らない」

「んー? だいじょぶ、だいじょぶ、肉はマンチが食べるから」

「違う!! 僕は血は苦手なんだ!!」


 まさかがそんな事を叫ぶとは思っていなかったらしく。

 ブラフマンとウェイトレスの女性は周囲の空間共々凍り付いた。


「……えっと、飲まないんですか? 血」と、ウェイトレス。

「や、やめて。血って言わないで……気持ち悪いから。吐くの我慢してるから今ちょっとヤバイから」

「……とりあえずコイツに水を一杯、エールも追加だ。キンキンに冷えた奴で頼む」


 すると徐々にざわざわとした酒場特有の喧噪が戻ってきて、僕の胃も段々と収縮をやめてくれるようになった。


「お前、そんな調子で今までどうやって生きて来たんだ?」


 それは僕のヒステリックでは無く、食事に関する事を聞いていたのだろう。


「分かりません、普通に飯を食っていたんですけど……

 今さっき人間から吸血鬼になったって言ったら、信じますか?」


 もはや僕は自分が人間ではなくなってしまったかもしれないという疑惑を、何の疑いも無く信じきっていた。


 そうでも無ければ尖った耳も、長すぎる犬歯も、血の気の失せた白すぎる肌も、短くなってしまった制服の丈も、いつもより高い視界も視力も身体能力も、血と聞く度に普段とは違う跳ね方をする心臓も、視界から離れない二人の首筋も。


 何もかもに説明が付かないのだ。自分に普段通りだと言い聞かせるには、異なる点が多すぎるのだ。

 

「逆に聞くが、そんな話を信じると思うか?」

「ですよね」


 へへへと、僕は笑う。


「だが実際問題として、恐らくお前は血液以外に何も食えないだろ」

「一応水は飲めましたよ。空気みたいに空虚でしたけどね」

「草じゃないんだから水だけじゃ生きてけないよね。栄養はどうしよっか?」


 マンさんは僕の前から肉塊を奪い取り、そんな事を聞いた。

 しかしその質問についての答えは、僕に聞くな。である。

 彼女もそのことを察したのか、フォークの先を宙に向けてクルクルと回して別の聞き方を模索していた。


「そもそも血の何がダメなんだ?」

「……色ですか?」

「いや知らないけど、色だけが駄目なら目を瞑って舐めてみたらどうかな。 意外と飲めるかもしれないよ?」


 恐らく血を舐めたという事実に吐くだろうが、試さずに文句ばかりを言うのも具合が悪いだろう。

 それこそ空腹時の逆転現象の様に。なるようになるのかもしれない。

「……分かりました」

「いや、否定しようよ。お前が生娘なわけあるかーい!! ってね」


 スルトは激しめのツッコミと共に机をばんばんと叩きながら笑い、ついでに僕の肩を理不尽にもぶっ叩く。

 さてはこのエロ兎、酔っ払っているな。


 しかし、そういえば吸血鬼は処女の血を好むとか聞いたことがあった気もする。だが僕は昔から血も吸血鬼も恐ろしくて堪らなかった為に記憶があやふやだし、そもそも吸血鬼の伝承はファンタジーである。


 現実として僕という吸血鬼が僕の知る吸血鬼と違うかもしれない以上、記憶を頼りにしても仕方が無いのかもしれない。


「もしかしてぇアサ君ってさぁ……コレなの?」


 スルトは右手の甲を伸ばして自分の左頬にくっつけて聞いた。

 酔っ払いは話が飛躍しすぎてよろしくない。

 


「違いますよ!! 妙な勘違いをしないで下さい!!」

「いちいち気にするな、酔っ払いの戯言だ。それよりも血は飲むのか、飲まないのか?」


 飲むか飲まないかで言えば不承不承でも飲むのだけれど。

 嫌か嫌じゃ無いかで言えば問答無用で嫌になる。だが、空腹で倒れるのはそれ以上に嫌だった。


「えっと、なんか、フォークとかの先に付いた奴がいい、かも、です……」

「女々しい奴だな。腕から直接ガバッと行けないのか」

「なんですか直接って、凄くインモラルな響きなんですけど」

「ああ、想像したらいくら顔が良くても気色が悪いな」


 自分で言っておいてなんだけど、酷い言われようである。


 公衆の面前で腕を舐めるというのも当然インモラルになる要因の一つだが。

 二人で隠れてやるのは更にイケナイ雰囲気になるのも事実である。

 

「じゃあおめめ閉じてねぇ」


 先ほどから顔は覆いつつも帰ろうとはしないウェイトレスに一瞥をくれてやり、僕も覚悟を決めて目を瞑った。想像するは凪、ゆらゆらと静かに揺れる湖面。

 そういった、血とか物騒な物とは限りなく遠い存在だ。


「おい、口を開けろ」


 僕は目の前で何が起こっているかなんて考えない。穏やかな昼下がりのコーヒーブレイクでも堪能するように心を落ち着けていると、固い手で頬を摘ままれ。無理矢理口を開かされた。


 数度歯がガチガチとぶつかったが、それ以上の大きさで隣から固唾を飲み込む音が聞こえて来る。


 その瞬間、僕の開けた口の隙間に、鉄のカトラリーが突っ込まれた。


「っオエ、ップ……そんな、無理矢理……!!」

「おい吐くなよ、飲み込め」

 

 ここにきてようやく僕は感染症や病気という観点に至ったが。しかし時既に遅く。

 先端には塩気が強く生臭い液体が付いていて、ジャックはソレを僕の下にこすりつけた。

 

「どうだい美味しいだろう? 美味いって言え!!」

「……おいしい、です」


 若干言わされた感じはあったが。

 ところがどうだ。鉄くさい匂いが、塩っぽい味が、たまらなく美味いではないか!!


 数滴に満たない筈の液体だったのにその芳醇な香りは僕の鼻に抜けて脳を貫いた。

 今までに食べたどの料理よりも美味い。いいや、今までの食事など料理では無かった!!


 さながら昔見た映画が思い出という感情によって補正を掛けられていたように。

 初恋というスパイスによって美化されていた同級生を明くる日に卒業写真で見返したときに然程だったあの時の様に。


 このを実感した後ではこの世の全ての料理がチャチで空虚な子供欺しであり、

 このこそが初めての食事だと分からされた。


 脳髄の深く深く奧のところにまで、遺伝子レベルで刻み込まれたのだ。


「……嗚呼、世界はかくも美しい。これは生まれて初めての体験、否、再誕である。ハッピーバースデイ僕」

 

 立ち上がって、思わず叫ぶ。だが僕は直後に吐いた。幸い空っぽの胃からは先ほど片した水しか出なかったし周囲の人間も嘔吐する人間には慣れていたらしい。

 特にスルトからはいっそ気持ちが良いくらい笑い飛ばして貰えたが。


 血を舐めた、そしてソレが美味かった。あまりの旨さに反射で飲み込もうとする体を押さえつけたが、だからこそ制御の効かなくなった体と心とが乖離を起こして僕は胃をひっくり返したのだ。

 先ほど片したジョッキにそっくりそのまま返す形になった。


「んふ……まずいね。ふふっ、味の話じゃないよ?」


 先ほどから笑いっぱなしのスルトが呟いた。

 だが満身創痍で精一杯笑いをこらえる反応する余力は残されていない。


 とにかく今は、がっかり顔のウェイトレスが渡してくれた水で息を整えることに専念していた。

 

「それで、これからどうするんだ?」

「……分かりません。とりあえず血液、以外で食べられる物を探します」


 後は路上生活にならないよう金も稼いで。元の体に戻る方法も、これはかなり優先的に考えなければならない。


「じゃあ私達とパーティ組もうよ。モンスターを倒したら良い金になるしさ。それに、モンスターなら血が赤くない奴もいるよ?」


 もはや僕は自分が吸血鬼ではないなんて考えもしない。

 この世界にモンスターが居るという言葉も疑えない。

 

 そうして僕は彼女が提した一石二丁の案件に乗っかるべく、特に考えも無く首を立てに動かした。


「って訳だけど、良かった?」

「私は構わない」


 一人で話を進めるのも事後商談も慣れているのだろう。マンさんは特に顔色を変えるわけでも無く吐き捨てた。


「でも、どうして僕に良くしてくれるんですか?」


 仮に僕が吸血鬼と成り二人の言う通り美少年になっていたとして、スルトが僕の貞操を狙っていたとして、仲間に引き込む必要なんてどこにも無い。


 だからこの答えを知らずして彼女等を信用することなんて到底出来はしないのだ。


「アサ君に対しても吸血鬼という戦力に対しても下心があるのは本当だけど……うーん、直感って言ったら信じてくれる?」


「信じますよ、僕が今さっき吸血鬼になったって信じてくれるなら」


 戦力として。それだけで僕は割と信じられたのだけれど。彼女自身が証拠に弱いと思っているなら、つけ込まない理由も無い。


「逆に聞くが、信じられると思うか?」


 やはり無理か。僕も信じられないのだから無理も無い。しかし悲しいかな、マンさんの意見は儚く無視された。


「ふっふっふ、やったね!! ……じゃあ今晩からしてくれるかな?」


 そうして彼女が蠱惑的な声で撓垂れ掛かって来た直後、僕の心臓はキュっと補足なり、視界は暗転する。


 何のことは無い。包帯が取られたスルトの腕から、真っ赤な血液が流れ落ちるところ見てしまったのが原因である。


「えぇっ!! ウソ、こんだけでダメなの!?」

「……もはや吸血鬼かどうかも怪しいな」


 僕は叶わなかったけれど、彼女ならきっと、素っ頓狂な顔で驚愕し固まった姿を提供してくれたことだろう。

 そんな光景を見られなかった事は少し残念だが、しかし、目が覚めた時には全てが元通りでありますように。


 なんて風に願いながら、僕は意識を手放したのだった。

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嫌血の吸血鬼 ジフィ @kokokokokonatsu

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